慕容超4 内紛続く

慕容超ぼようちょう慕容鎮ぼようちんらに青州せいしゅうを、慕容昱ぼよういくらに徐州じょしゅうを、慕容凝ぼようぎょう韓范かんはん梁父りょうほをそれぞれ攻撃させた。


慕容昱らのターゲットは莒城きょじょう。ここを守っていた段宏だんこうはたまらず北魏ほくぎに亡命した。しかし一方で封融ふうゆうが近辺に散らばる流寓者らを糾合、石塞城せきさいじょうを攻め落とし、鎮西大將軍、つまり超えらい余郁よいくを殺害。このニュースは国内の人々を大いに動揺させ、このまま南燕の下についていて大丈夫なのか、と不安をいだき始めた。

加えて、慕容凝と韓範も仲間割れを起こす。廣固こうこに滞在していた韓範を殺さんと、慕容凝が企んだのだ。その動きを感知した韓範は先手を打ち、攻撃。慕容凝を梁父に追いやった。韓範はそのまま梁父も攻撃。慕容凝は後秦こうしんに、慕容法ぼようほうは北魏に出奔した。

そして、慕容鎮。ターゲットとなった慕容鐘ぼようしょうは妻子を殺害の上逃げ落ち、ただ一人馬を駆って、やはり後秦に亡命した。


こんな事態を引き起こしておきながら、しかし慕容超は政をまともに執り行おうともしない。どころか「畋遊」を好んで行い、このために民は苦しめられたという。慕容超に対しては韓綽かんしゃくが言葉を切に諌めたのだが、結局聞き入れられることはなかった。


また慕容超、肉刑(死刑の代わりに意図的に身体欠損を発生させる刑罰)、九等の選(おそらく九品官人法)を復活させたいと提唱したが、反対多数により否決された。



超尋遣慕容鎮等攻青州,慕容昱等攻徐州,慕容凝、韓范攻梁父。昱等攻莒城,拔之,徐州刺史段宏奔于魏。封融又集群盜襲石塞城,殺鎮西大將軍余郁,青土振恐,人懷異議。慕容凝謀殺韓範,將襲廣固。範知而攻之,凝奔梁父。范並其眾,攻梁父克之,凝奔姚興,慕容法出奔于魏。慕容鎮克青州,鐘殺其妻子,為地道而出,單馬奔姚興。于時超不恤政事,畋遊是好,百姓苦之。其僕射韓訁卓切諫,不納。超議復肉刑、九等之選,群下議多不同,乃止。


超は尋いで慕容鎮らを遣りて青州を攻ましめ、慕容昱らをして徐州を攻ましめ、慕容凝、韓范をして梁父を攻ましむ。昱らは莒城を攻め、之を拔かば、徐州刺史の段宏は魏に奔ず。封融は又た群盜を集め石塞城を襲い、鎮西大將軍の余郁を殺さば、青土は振恐し、人は異議を懷く。慕容凝は韓範を殺さんと謀り、將に廣固を襲わんとす。範の知りて之を攻むるに、凝は梁父に奔ず。范の其の眾を並べ、梁父を攻め之を克せるに、凝は姚興に奔じ、慕容法は魏に出奔す。慕容鎮の青州を克せるに、鐘は其の妻子を殺し、地道と為りて出で、單馬にて姚興に奔ず。于の時、超は政事を恤ず、畋遊を是れ好み、百姓は之に苦しむ。其の僕射の韓訁卓は切に諫めど、納れず。超は肉刑、九等の選をを復さんと議すも、群下の議に不同なる多からば、乃ち止む。


(晋書128-4_仇隟)




すげえなぁ……慕容超にしてみれば、これ始めっから国を滅ぼすつもりしかなかったんではないか。考えてみりゃ慕容徳ぼようとくには何の恩顧もない、どころか、実質見捨てられてるようなもんだもんなぁ。


母や妻を置いて南燕に出たのも、「滅ぼすつもりで赴いた国」に彼女らを伴えば巻き添えを食って殺されてしまいかねない、とすら思ったのかもしれない。あ、そう考えるとこのひとの人生めっちゃおいしいな……いつかお話にしよ……。

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