慕容鳳2 前秦の瘤
何かと諫言をなしたお方、
そんな彼が
權翼さんは言う。
「
今まさに世に羽ばたかんとされておる。
ならば、御坊よ。
君の父、
倣ってはなりませぬぞ」
すると慕容鳳、きっとなって言う。
「父上は忠義を尽くさんと試みるも
叶わなかったのだ!
これこそが人に仕える者の取るべき
節度というものではないか!
あなた様ほどのお方が、
そのような振る舞いを義と
称されるべきではあるまい!」
権翼さん、ハッとなって謝罪した。
が、苻堅のもとに戻ってから、言う。
「慕容鳳は道義心と忠節心を抱き、
かつ、その才気も確か。
ただし、結局は狼の子です。
ひとに飼われることを
良しとはいたしますまい。
やつを早々に排除なさりませ。
後々に禍根を残してはなりませぬ」
もちろん苻堅だから、
この的確な権翼の建言をスルーである。
そして、
決起した慕容垂が
慕容垂を盟主として立てるべきだ、と。
この提案に乗り、翟斌が慕容垂に合流。
慕容垂、慕容鳳を建策將軍とした。
權翼見而謂之曰:兒方以才望自顯,勿效爾父不識天命。鳳厲色曰:先王欲建忠而不遂,此乃人臣之節。君侯之言,豈奬勸將來之義乎!翼改容謝之,言于苻堅曰:慕容鳳慷慨有才氣,但狼子野心,恐終不為人用耳。不如早除之,無使貽後患。堅不從。及堅淮南之敗,垂起兵濟河,將趣洛陽,鳳勸丁零翟斌奉垂為盟主,斌遂率眾歸垂,垂拜鳳為建策將軍。
權翼は見ゆるに之に謂いて曰く:「兒、方に才望を以て自ら顯らかたらんとす。爾が父の天命を識らざるに效う勿れ」と。鳳は色を厲しくして曰く:「先王は忠を建てんと欲せど遂ぐらず、此れ乃ち人臣の節なり。君侯の言、豈に將來の義を奬勸せんか!」と。翼は容を改め之に謝し、苻堅に言いて曰く:「慕容鳳は慷慨にして才氣を有す、但だ狼が子にして心は野、恐るらくは終に人に用いらるを為さざるのみ。早きに之を除くに如かず、後に患を貽らしむ無し」と。堅は從わず。堅の淮南の敗に及び、垂の兵を起て河を濟るに、將に洛陽に趣かんとせば、鳳は丁零の翟斌に勸め垂を奉じ盟主為らしめんとす。斌は遂に眾を率い垂に歸す。垂は鳳に拜し建策將軍為らしむ。
(十六国50-13_夙恵)
おぉ、おぉお……かっけえなこのガキ……。
ただ、相手が権翼なのはちょっと出来すぎなのではないかしら。いや、この人、割とどこでも諫言をなしては無視されて、それで結局諫言通りの事態が起こるんですよ。すっげえ都合のいい舞台装置なんです。これ権翼以外の別の誰かと交わしたやり取りを権翼に仮託してない? 史実として考えると、面白すぎるんですが。
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