「ヒーラーの方が安上がりだ！」と追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ？ ～治せないから戻ってこいと言われても『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです。あ、患者さんはこちらでお待ちください～

元上司が戻ってきてくれと土下座してくる

「シオン先生。この人誰なんですか？」

「私の元上司です」

「ええ！？　シオン先生のですか！？」

「ええ。そうです。さてどうしましょうか？」

　相手は私にとってはあまり好ましくない相手だ。私の元上司であるが、嫌いな相手である。自分を無能扱いしてクビにした男だ。さらには獣人の国を植民地化しようと様々な悪事を働いてきた悪党である。

「あなたは運がいい。野たれ死んでも相応としか思えませんが、偶然にも私の前に現れました。医者(ドクター)である私は悪党であろうと、嫌いな相手であろうと死にそうな命を見捨てるわけにもいきません。ユエルさん、この方を仰向けに寝かせてください」

「はいっ」

　ユエル達、善良な獣人達を苦しめたその張本人を介抱させるのも心苦しいが致し方ない。この男はこの男で、知っている事や利用価値はあるだろう。

　生かして帰って自白剤を打ち込んでやればいい。

「う、ううっ……」

　アルバートは服を脱がされた。ボン。ものすごい胸毛の胸板が出てくる。

「見たくないものを見せられているようですね。仕方がありません。手術(オペ)を始めましょうか」

　私は施術をする。メスとゴッドハンドを用い。わかりやすい外傷であるので施術は簡単に終わった。

「ふう。手術(オペ)は終了です」

　私は手術(オペ)を完了させた。元通りになったアルバートの姿があった。

「俺は、俺は生きているのか」

「はい」

「シオン。いや、シオンさん。いえ、シオン様。あなた様が俺を治してくれたのですか？」

「元上司であるアルバートさんにそのようにへりくだられると違和感がありますねぇ。まあ、そうです」

「頼む！　シオン殿！」

「はい？」

　アルバートは突然頭を地面にこすりつけた。

「頼む！　この通りだ！　シオン殿！　あなた様の言っている事は本当だった！　ヒーラーは役立たずで使えない奴らばかりだった！　シオン殿の言った通り、ギルドは怪我人が続出して回らなくなったのだ！　どうにか戻ってきてくれ！　報酬は倍出す！　いや三倍だ！　労働時間や様々な条件も調整しよう！　頼む！」

「アルバートさん、ひとつ聞きたい事があります。私に隠れて裏で何をやっていたんですか？」

「ギクッ！　そ、それはそれはだな！　いやだの！　シオン殿！　俺は裏表のない人間だ！　何の罪もない獣人を疫病に陥れ、貴族と結託して支配しようなどと！　そんなあくどい考えは一切持ち合わせていない！」

「全く、自白剤いらずとは。言葉は悪いですが馬鹿ですね、あなたは」

「な、なぜだ！　なぜわかったのだ！？　我々の計画が！？」

　アルバートは心底驚いている様子だった。

「スキルドクターはシオン殿しか持ち合わせていないユニークスキルだと聞いた。まさかそのスキルを使用したのか！」

「い、いえ。使っていません。普通に誰でもわかる事です。ご自分でおっしゃっていましたから」

「それじゃあ、このおじさん。レイドールさんと手を組んでわたしたちを……」

　温厚で柔和なユエルの目に珍しく憤りと軽蔑の色が見えた。

「ち、違う！　と、いうよりレイドール？　そ、そこで寝ているのはレイドール殿ではないか！　なぜ！？」

「ほら。やっぱり。なぜ人間のあなたが獣人の貴族を知っているのですか？」

「し、しまったっ！　ち、違う！　知り合いに顔が似ていただけだ」

「なぜ名前まで知っているのです？　しらばっくれてももう無駄ですよ」

「頼む！　シオン殿！　俺は無実だ！　そして『ブラック・リベリオン』は真っ当なギルドだ！　裏で悪い事など一切していない！　信じてくれ！　そして戻ってきてくれ！」

「こうまで白を切るとは。見苦しいですね。とりあえず、あなたも眠ってください」

　私は注射針(ニードル)を取り出す。中身は麻酔だ。

「や、やめろ！　毒で俺を殺す気か！」

「殺すつもりなら先ほど治療せずに放置しておきました。眠ってもらうだけです」

「やめろっ！」

　ぷすっ！

「うっ、ううっ！」

　即効性の麻酔でアルバートは意識を失った。

「まったく、荷物が増えましたね」

　私は溜息をついた。レイドールと同じように縛り上げた。

「仕方ない。手伝ってくださいユエルさん」

「はい！」

　二人で一体ずつ引きずって帰る事にした。

※感想爛で何の動物の獣人か書いて欲しいとありました。あまり深い意味はありませんが。○○型の獣人故の特性を活かす、みたいな展開でもない限り。一応決めておきます。

ユエル。ミシェル。狸型。そのような耳と尻尾が生えている。

レイドール。狼型。そのような耳と尻尾が生えている。

そういう設定で進めたいと思います。人気作品に出てくる獣人のパロディです。