ダイブ 3 ※知人にメールで送ろうとして、長くてやめた話し
上手くいった結果を知ってから、程なく、そうですね、一週間くらい経ち。稀名くんとボクは、今回は偶然、電車で会う事になります。心なしか稀名くんは元気がありません。
どうしたの? と聞くと、彼女と別れた……そう答えが帰ってきました。そして、その時にプレゼントも返されたと……
やはり高価過ぎるプレゼントが重かったのではなかろうか。 ボクはそんな事を思い、稀名くんに問いかけましたが、どうやらそうでは無い様子です。
結局、彼は別れた理由を教えてくれませんでした。彼自身も分かっていなかったのだと思います。
少ししてから電車の中で稀名くんは、戻ってきたプレゼントをどうしようか悩んでいる。
ボクに相談しているのか、独り言なのか分からない調子で呟きます。
学生でまだ若く 無責任なボクは、次の彼女にあげれば良いじゃない。 稀名くんの心情など普段降りない駅名くらいに興味無げに答えたと思います。
一瞬寂しそうな笑顔を見せましたが、優しい稀名くんは、ボクの言葉をポジティブに受け止めてくれました。
他人からしたら、その程度のことなんだ。クヨクヨしていても仕方ない。
稀名くんは、その宝飾品を捨てる決心をします。
捨てるのは川。小瓶に入れて投げ入れるから、当日付き合ってくれないか。
稀名くんに誘われたので、特別 用の無かったボクはその決別の儀式に顔を出しました。
ボク以外にも同級生の見知った顔が幾つかあり、稀名くんは以外と人脈があるのだな。と的外れなことに感心したような気がします。
皆が軽く近況を報告しあってから、稀名くんが川に向かって小瓶を放り投げます。
その川は水面と岸の高さが同じレベルにあるのではなく、きちんと灌漑が施された川でした。
水面から垂直にコンクリートの壁がそそり立ち、その高さは2〜3メートル位はあったのではないでしょうか。
稀名くんは全てを断ち切るように小瓶を投げましたが、投げ込む瞬間、誰かがその宝飾品の値段をボソリと口にしました。
そのせいかどうかは分かりませんが、稀名くんは伸ばし切った手を、更に手から放たれた宝飾品を追いかけるようにして、伸ばしました。そして、体のバランスを取るために一歩踏み込みます。
コンクリートの壁は無慈悲にも垂直にそそり立っていました。稀名くんが踏み出したその先は虚空です。
彼は宝飾品を追い駆けるようにして、川にダイブして行きましたとさ。
お終い。
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