仲直りしかけては、また破局
少し時間を置いても,気になったので,言ってみた。
「中国語の勉強を手伝うから,(これまでにもたくさん,たくさん手伝ったけどねって言いたいのを我慢して)また一から自然体でやり直してみない?」
歌子は,これに対して,
「どうせなら,納得して付き合いたいから,その前に,ちゃんと話そう。」
話そうとしたのに…人のメールを読まずに削除するくせに…と思いながら,
「はい,私も,メールではなく,ちゃんと面と向かって話した方がいいと思う。」
と返事した。
しかし,これはちょうどコロナが流行り始めた時期と重なってしまったので,将来の約束をしたまま,半年ほど過ぎてしまった。
私は,その半年の間に,処世術の本を参考にしながら,歌子との関係を諦めるべきか,じっくり考えた。育児の合間なので,ずっと考えていた訳ではないが…。
これまでの歌子との経緯を考えると,直接でも話し合うことで分かり合うのは,多分難しいと結論した。そして,歌子の私に対する気持ちは,暖かいものではなく,道具扱いのような冷たいものであるとほぼ確信できていた。
歌子とは,いい思い出もたくさんあるから悲しいが,いい思い出の半分ぐらいは嘘のようだし,ケジメをつけた方がいいと思った。宙ぶらりんのままにするより,はっきりと縁を切った方が気持ち的にも割り切れると思った。
しかし,歌子のことがどうしても嫌いになれなくて,憎めなくて,傷つけたくないから,ためらった。さらに時間が経過してしまった。
ある日,ようやく決意を固めて,歌子に,最後のつもりで,メールを送った。
「また話そう〜とか言っていたけど…
話して何とかなるとは,思えない。
日本人が中国語を覚え,それを武器にして活躍するのは,素晴らしいけど,中国人が日本語を学び,それを活かす仕事に就きたいと思うのは,我儘?
互いには,悪気はないと思うから,残念だけど,もう互いには身を削るような思いはしたくないから,諦めた方がいいと思う。
でも,お世話になったことに対しては,感謝しているし,息子に会ってもらえてよかった。
では,お元気で。」
これに対する返事は,なかった。これでいいと思った。ずっと指摘したかった歌子の考え方の矛盾したところを指摘できたし,感謝の気持ちも伝えられたから。
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