第95話そしてわたしは思う。
上の階である現在地は水槽の上部分である海岸をイメージした生物、ナマコやウニやヒトデが触れるスペースなどあったり、巨大な伊勢海老があったりと割と楽しめた。
海岸のコーナーが終わるとウミウシとクラゲのコーナーが現像的な世界を作り出し気持ち悪いのか綺麗なのかイマイチ分からない空間が出来上がっていた。
無機質だと思えば綺麗なのだが、それらが生きていると思った瞬間気持ち悪さが勝って来るのは何故だろうか?
しかしながら子供達は始めこそ喜んでいたがあまり動かないウミウシや水流にただ流されているだけのクラゲというのは刺激が薄い様で直ぐに飽きてしまい次のコーナーへ移ろうとせかしてくる。
そして階段を使い下へ降りると先程の巨大水槽の底部分を見る事が出来、ここで一度皆で記念写真を撮る。
近くにスタッフがいた事からも皆ここで写メを撮るのであろう。
スタッフはスマホのカメラを慣れた手つきで操作して写メを撮り、その写メを送り合う。
人から見ればただの、友達同士でとったなんてことのない、家族写真の一つなのかも知れない。
しかし、私にとってこの写真は言葉ではとても言い表すことの出来ない程の、様々な想いが籠った大事な大事な宝物となった。
離婚する前の私がもしこの写真を見ても恐らく、大事な宝物とまではまず思わなかったであろう。
だって以前の私にとってはある種『当たり前の光景』で『撮ろうと思えばいつでも撮れる』物だから。
しかし、今の私にとっては『当たり前ではない』事だし『撮ろうと思っても撮れない』物なのだ。
それが今の私が失った物でもありそして手に入れる事の出来た物なのだろう。
そして私は思う。
いかに私は恵まれていたのかという事に。
「何泣いてんだよ?」
「ごめんなさい」
「とりあえず落ち着くまでトイレ行ってこい。皆んなには俺が説明しておくから」
「う、うん………」
そして私はトイレで深呼吸を繰り返して急に込み上げて来た感情を落ち着かせた後、皆と合流してお土産コーナーで真奈美と一緒に物色して行くのであった。
◆
あれから私達は他の家族と分かれた後、時間もかなり余っているし観光もしつつ何処かで晩ご飯を食べようかと話していたのだが真奈美お嬢様のとてもとても強いご要望により帰りにスーパーで夕食の食材を買って帰り、元夫、そして真奈美と一緒に夕食を作っている。
真奈美は子供用の包丁を使い見様見真似でニンジンとジャガイモを切り刻んでおり、大小様々な大きさに切られたニンジンとジャガイモがボールへと入れられて行く。
真奈美曰くどうしてもカレーを作りたかったらしい。
急にどうした?と思わないでも無いが子供とはそんな物である。
恐らく今日一緒に遊んだ友達が自分で作った事があるとか自慢されたのであろう。
元夫も真奈美と一緒に料理を作れてとても楽しそうだ。
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