第80話私みたいな人間にはありがたい

そしてクリスマスから数日後の二十九日から一月三日まで保育園はお休みである為、年末年始は休みでもある元夫にこの六日間だけ預かってもらえないかと恥を忍んで頼んでみると快く承諾してくれホット旨を撫でおろす。


それに私みたいに道徳を踏み外した人間と一緒にいるよりかは元夫の下にいる方が良いのではないか?と言うと「バカにするなっ!!」と怒鳴られてしまった。


それだけではなく「親の都合で両親から引き裂かれ、やっと慣れてきただろう環境、それこそ友達もできてきただろうにまた親の都合で別の場所へ移る真奈美の気持ちはどうなるんだよ?俺は多くは望まない。ただお前が真面に生きていればそれだけでいい。ただ、障子に目あり壁に耳ありと言うように絶対誰かが見ているし聞いているからまた同じ過ちをしそうになれば俺の下にもその話は届くものと思って気を引き締めて生きてほしい」と電話で説教もされた。


あの言葉は真奈美の為と言いつつ自分の為ではないのかと言われている様で、ハッとさせられた。


これからは真面目に生きる、真奈美の為に生きるとあの時あれ程覚悟と決意をしたにも関わらず、これでは叱られても仕方が無い。


地雷社員さんがとか、それによるストレスで参っているとか、そんな事等言い訳にしか過ぎない。


「真奈美をよろしくお願いいたします」

「任せろ」

「まかせろっ!」


そして元夫と真奈美で近所の公園で遊んだ帰りに元夫へ真奈美の事を宜しくお願い致しますと頭を下げる。


そして返ってくる元夫の短くも力強い返事と、真奈美のよく分かっていないけどパパとバアバやジイジとでいっぱい遊べるから既にワクワクしているというのが隠しきれていない返事を聞き、今の私は高城も含めていかに報われている環境であるのかと再確認する。


まぁ、裏で高城と元夫は繋がっている気がするのだが、その方が私みたいな人間にはありがたいと思うのであった。





そんなこんなで真奈美と別れて早三日。


日にちで言うと三十一日であり所謂月末にして年末である。


この三日間は一応真奈美とビデオ通話をしているのだが今ここに真奈美がいないという喪失感は消えてくれないと同時に元夫への申し訳なさが膨らんでいく。


「今年は色々あったな………」


今は勤務中で学生のアルバイトに私、そして先輩おばさんと小太りマダムは年末年始は夫の実家へ帰省しており休みである為社員さんが加わって一緒に総菜を作って行く。


そんな中で、誰も聞いていないやとそう呟いてしまったのが間違いであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る