二章 魔王様はハイハイをする

オレ、避けられてるよな?

魔王様の世話係りになってもう一週間が過ぎたぜ!

、、、えっと、その、なんていうか、、、その、、、何も変わってません!

普通の赤ちゃんのお世話だよ!

まぁ、魔王様は普通の赤ちゃんみたいに夜泣きとかしないから手間が全然かからないし暇なんだけどさ。

そうそう、サージさんに色々聞いて分かった事があるよ。


魔王様っていうか上級の魔族は身体の成長は人間より遅いけど頭は良いんだってさ。

賢いんだって。

それは魔王様の世話をしてたから何となく分かってたけどさ。

例えば、まだ生まれて数が月くらいの赤ちゃんが人の名前を呼べる筈がないのに魔王様はちゃんとは言えなかったがオレの名前だと理解してオレの名前をよんだりな。


けど、精神的には赤ちゃんだから自分の名前を言うっていうのはちゃんと喋れるようになってからなんだってさ。

ちゃんと喋れるようになる頃には自分の本当の名前を知っているのは自分だけだと気づいて伝えようとするくらいには精神的には成長してるんだってよ。

まぁ、今はまだ座ったり、寝返りを打ったり、するくらいしか出来ないくらい幼いからまだまだだろうけどな。



それより、オレは今どうしたら良いか分からない事がある。

なので、そのどうしたら良いか分からない事を相談する事にした。


「あの、その、オレ、、、避けられてます」

「お前が?」

「はい、こんな事を相談出来るのはサージさんしか居ないと思って」

「避けられているとは?具体的にどう避けられているんだ?」


オレは頼れるサージさんに今のオレの状態を相談する事にした。

まぁ、この世界での知り合いっていうか知っている人はサージさんしか居ないので必然的に相談もサージさんにしか出来ないってだけなんだけどな?

でも、サージさんが頼れるのも優秀なのも分かっているので今の状況に耐えられなさそうだったので思いきって相談したんだけどな。

(それにサージさんも聞いてくれるみたいだし、やっぱりサージさんは頼りになるよな!)


「その、最初は部屋に入って掃除や要るものを用意してくれる人達なんですが、何も話さずそそくさと部屋を出ていって、オレも最初は魔王様の前だから静かに素早くを心掛けてるのかと思っていたんですが、、、オレがお礼を言おうと声をかけても聞こえなかったかのように直ぐに部屋を出ていって」

「レーヤが声をかけているのに直ぐ出ていくとは、、、魔王様の前だから無駄口を叩かずに出ていったわけでは無さそうだな?」

「はい、何回もそれが続くのでオレも可笑しいと思って、悪いとは思ったんですがそういう人達が部屋を出ていったら直ぐに扉に耳をつけて外の様子を聞いてみたんです」


外の様子を知りたいと思ったら何故か声以外にも外の様子もオレの脳内で見られたんだけど、それもサージさんに言いながら外の様子を話した。


大抵の人はものすごいため息を吐いて安堵した様子だったのでその人達は魔王様の前で緊張していただけだろう。

その次に多かったのが外に仲間か友達がいて部屋を出た瞬間に 『今日の当番私 (俺)だったんだけどめっちゃ緊張した』と言ってその仲間は 『うわっ!俺 (私)じゃなくてラッキー』という感じの様子だった。

そして一番少なかったのが部屋を出た瞬間、オレの悪口を言う人だった。


その事をサージさんは静かに聞いていたが最後の人達の事を聞いた時だけ少し眉間にシワがよったような気がした。

(気のせいか?まぁ、最後は仕方ねぇよなって思うけどな。魔王様の世話係りになるために喚ばれたっていっても新参者が我が物顔で魔族達の大事な魔王様の世話をしてるんだもんな。気にくわないだろうしな)


「ふん、なるほどな。レーヤ、最後のお前の悪口を言っていた者達がどんな奴らか説明してくれるか?」

「へ?何でですか?最後の人達は仕方ないじゃないですか?新参者が我が物顔をしていたらムカつきますしね?」

「、、、いや、魔王様の為だ。魔王様は人の感情に敏感だからな。レーヤに悪意や不快な感情をもっているなら注意しないといけないからな」


サージさんにそう言われて確かにとオレは思った。

(赤ちゃんは人の感情に敏感だもんな。自分に向けられてなくても近くでそんな感情を感じたら良くねぇよな!)


「そうですね、確かに魔王様の精神的にあまり良くないですもんね。分かりました、名前は知りませんが特徴だけは覚えているので教えますね?」

「ああ、それで大丈夫だ」


サージさんが本当は何を考えてそう言ったのか知らずにオレはオレの悪口を言っていた人達の特徴をサージさんに説明した。


「、、、分かった。それ以外は居ないな?」

「ええ、オレが分かっている範囲ではその人達以外には今のところいないです。それでその人達はどうするんですか?」

「そうだな、、、そいつらには注意 (忠告)をしておこう。今後、魔王様に近づける事は (絶対)ないと思うが人手不足だからな、、、 (低底から這い上がる)チャンスをやろう」

「そうですか、、、なら、チャンスを掴んで頑張って欲しいですね」

「あぅ、ぶぅ」

「ん?魔王様?どうしました?」

「魔王様、お目覚めですか?さっきレーヤに話した通り、 (レーヤに)無礼を働いた者達には注意 (忠告と階級剥奪)をしておきます。ですので魔王様はどうぞ、おくつろぎになってお待ち下さい」

「あう、う!」


注意するだけなのに何で待つのかよく分からなかったが、それより魔王様がちゃんと返事をした事の方に驚いた。

あと、ここは魔王様の部屋なので最初から魔王様は居たんだ。

何処に居たかっていうとオレが抱っこしてた。

(魔王様は天才かな?本当に賢いな!)


「あ、分かったってことですか?魔王様はお小さいのにちゃんと働いて偉いですね~」

「う!きゃぅ」

「褒められるのは恥ずかしかったですか?可愛いですね~」

「きゃっきゃ!」

「本当に可愛いですね!大好きですよ、魔王様!」

「あぅ、レーヤぁ!まーちゃ、まーちゃもぉ」

「魔王様もオレが好きですか?」

「ちゃうちゃいよぉ!まーちゃもぉ!」

「ん~?あ、大好きって事ですか?」

「きゃっきゃ!あい!」

「正解ですか?嬉しいです!」

「レーヤ、俺は注意をしに行くので少しここを離れる。その間も魔王様を頼むぞ?、、魔王様、しばし席を外します」

「あう!」

「あ、はい、、、いってらっしゃい」

「、、、ああ、行ってくる」


そう言ってサージさんは部屋を出て行った。

その日からオレの悪口を言った人は誰一人この部屋に入って来ることはなくなっていた。





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