オレは魔王様の世話係り
泣きそうになりながら声のした方に顔を向けるとそこに立っていたのはサージさんだった。
(神様!いや、魔族だけど!)
「これはサージ様」
「お忙しいでしょうに何故ここへ?」
「、、、お前は何故ここに居る」
サージさんは二人の質問に答えないでオレに向かってそう言ってきた。
(だよなぁ~。サージさんにしたら魔王様の部屋に居るはずのオレがそこに居ないでここに居るんだもんな、、、サージさんにしたら意味分からないよな)
「あの、それが、」
「この者にご用があるのですか?」
「この者はサージ様の従者とか」
「俺の従者?」
「いえ、その、だから、」
「ええ、この者がサージ様の事を聞いてきたのでサージ様の従者かと」
「え、あ、だから違」
「サージ様が魔王様のオムツを取りに行くよう言われたのでは?」
オレが話そうとすると二人が被せてくるので喋れない。
(わざとじゃないのは分かってるんだが、、、もう少し黙ってて欲しい)
「はぁ、、、なるほどな。お前達、少し黙れ」
「え?あ、はい」
「分かりました」
「お前がここに居る理由は何となく分かったが早く部屋に戻れ。魔王様がお目覚めになった」
「魔王様起きちゃったんですか?」
「ああ、お目覚めになったとたん機嫌を損ね泣いて手がつけられない」
「え?やっば、早く戻らないと!」
「レーヤ、レーヤと言いながら泣いていたがお前の名前か?」
「はい、そうです!では、早く魔王様の所に戻ります!」
そう言ってオレは魔王様が居る部屋 (帰り方は覚えてた)へと向かった。
サージ視点
世話係り、、、レーヤが魔王様の元に向かったのを見送るとレーヤを引き止めていた二人が話し出した。
「あ、あの、あの者は貴方の従者じゃ?」
「なぜ魔王様の所に?」
「はぁ、、、お前らは人の話をちゃんと聞くことを覚えろ。あいつはこの世界でただ一人の魔王様の世話係りだ」
「魔王様の!」
「世話係り!?」
「分かったら今度からあいつを引き止めるな。魔王様が機嫌を損ねる」
「「、、、、。」」
そう言って先に行ったレーヤを追いかけた。
レーヤ視点
魔王様の部屋の前まで戻ると人(魔族)がたくさんいて部屋に入れない。
(あ~、、邪魔!魔王様の元に行けねぇ!しかも何か倒れてる人も何人かいるんだけど、、、何でだ?)
「魔王様!落ち着いて下さい!」
「大丈夫ですよ!」
「泣かないで下さい!」
「うっ、ふっく、、ふっ、ふぎゃあ!」
“ドンッドンッ、ドカンッ”
「ギャー!雷が落ちてきたぞ!」
「お止めください!魔王様!」
「うぁーん!レーヤぁ!ふっ、ふっ」
何故か部屋中に雷が落ちてきたがオレの名前を呼ぶ魔王様の声を聞いて、オレは扉の前で無意味な言葉を吐いている魔族達を押し退けて魔王様の元に向かった。
「魔王様!」
“ドカッ!ドンッ!ドシッ!”
「ギャア!」
「ぐわっ!」
「グホッ!」
「魔王様!オレですよ!」
「ふぇ、ふっ、、、レーヤ?」
「そう、レーヤですよ!」
オレが魔王様の目の前に立つと魔王様がオレに手を伸ばしてきたので抱き上げて優しく背中を撫でる。
(目が覚めたらオレが居なくてびっくりして不機嫌になったんだな。早く部屋に戻ればよかったな)
「う、ふっ、レっ、ヤ、レーヤ」
「はいはい、レーヤはここに居ますよ。目が覚めたらオレが居なくてびっくりしちゃったんですよね?すみません」
「うっ、う~、レーヤ、んあ~」
「お、もう泣き止みましたか?魔王様は偉いですね!良い子」
「ふ、きゃっきゃ」
泣き止んだ事を褒めるため頭を撫でると魔王様はさっきまでの不機嫌さが無かったように笑い出した。
(本当に赤ちゃんは可愛いよなぁ。ちょっとしたことでコロコロ表情が変わって本当に可愛い)
オレはオレが押し退けた人が壁にのめり込んだり一番奥の部屋まで吹き飛んだり天井を突き破ったりしているのも、
そして魔王様が魔法で雷を落としている部屋に普通に入ったにも関わらず無傷だったのも、
あの誰にも懐かない魔王様が笑顔でオレに懐いているのも、
普通ではないということに気づいていなかった。
そしてそれを見た魔族達がオレをあり得ないモノとして見ている事にも気づいていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます