舐めさせてください!
第15話 水に流そう
だけど夢じゃない証拠はいくつかあって、
水着を買いに行く時の待ち合わせ場所や時間を決めたやり取りも残っていた。
「んふふふ。
「僕はずっと童貞だよ」
「いやいや、休み明けは女の匂いを感じましたし」
「女の匂いって……
「でゅふふふふ。最近はJKの匂いも通販で買えるのですぞ」
言動は気持ち悪いのに勘が鋭くて内心ドキドキしていた。週明けはちょうど
「今週に入ってから
「僕らは付き合ってもいないよ。ボランティア部に正式入部するにはプール掃除をちゃんとこなさないとダメだから半分保留みたいになってる」
「プール……掃除?」
「そ。ちなみに今日な。晴れてよかったよ」
水着を入れたバッグにチラリと視線を送るとこの前のことが鮮明に思い出される。
いくらすぐに濡れるとは言っても一週間近く濡れたまま放置した水着を着たくはなかった。この水着同様、
「プール掃除は水泳部もいるのですかな?」
「うん。なんか男子がいなくなって人手が足りないとかでボランティア部に救援要請が入ったんだってさ」
「おぬしまさか、ハーレム展開に突入する気ではあるまいな!?」
「まあ落ち着け。シチュエーションだけならそう思っても仕方ない。でもな、運動部の陽キャ女子が僕みたいな地味で冴えない陰キャを相手にすると思うか?」
「わかっとらん。わかっとらんよ
「誰が貧相じゃ」
比べたことはないからわからないけど平均くらいはある……はずだ。それにまだ成長の見込みだってあるし。
「
「わいらでも性欲の捌け口くらいにはなれるんですぞ! 嫁は二次元であるが、せっかくならこのぶら下がっているモノも使いたいではないか」
「お前は灰になって使い物にならないだろ」
「んふふふ。わいの貞操は守られましたな。将来は大賢者になること間違いなしですぞ」
ふん! と鼻息を鳴らしデカい顔をテカらせる
案外、
「とにかく僕も貞操は守ら……おい。どうした」
さっきまで下品なワードも何個も発していたイキり陰キャが灰になっていた。このクラスに、いや、この学年で
そうなると答えは一つ。
若干の気まずさを感じつつ、僕は思い切って振り返った。
「えへへ。お話するの久しぶりだね」
「プール掃除が終わるまで僕は部員じゃないし、そんなもんだよ」
毎日顔を見ていたはずなのに、こうして近くで見ると少し瘦せた気がした。全体的にほんわかと丸い雰囲気は残しつつ、女の子として洗練されたような。端的に言えばより可愛くなっていた。
「水着、忘れてないよね?」
「もちろん。ここにあるよ」
「よかった。裸でお掃除してもらうところだったよ」
「参加させないっていう選択肢はないんだ?」
女子だらけのプールでフルチンの陰キャが一人。もしそれが許させるのなら
「練習の成果、期待してるから」
「う、うん。練習……ね」
チラリと
「それでね。練習のことはみんなに内緒に……ね?」
「あんなこと誰にも言えないよ」
陽キャ達はもっとすごい行為に及んでいて、僕の体験なんて自慢にもならないかもしれない。だけど周りにいるオタク友達にしてみれば絶対に嫉妬の対象になる。そう断言できるほどの衝撃を僕は受けたんだ。
「あのことは水に流そう。僕が言うのも変な話だけど」
「そ、そうだね。プール掃除だけに。なんて。ふふふ」
「あははははは」
「ふふふふふ」
「水に流すとは、一体何のことですかな」
灰が少しずつ人間の形を取り戻す。
「プールの汚れをしっかり水に流そうっていう話だ。ね、
「そうそう。ほら、うちの高校ってプールが屋上でしょ? だから冬の間に汚れがたまって大変なんだって」
ド天然の
「では、練習とは何のことですかな?」
「練習は練習だよ。プール掃除の」
「ほ……ほほぅ。それは一体いつ、どこで」
「
「わいは諦めませんぞ。土下座……土下座すればチャンスがある」
高一の時からの付き合いだけどこんなに必死な
ゲスな下心がなければ感動のシーンになってもおかしくないところだ。
「もしかして
若干引き気味だった
「え……あの、わいは……」
「さすがに今日のプール掃除は無理だけど、今度部長に話してみるね。ふふ。嬉しいな。部員が増えればボランティア部は安泰だよ」
「おーい。
生命力を使い果たしたのか
「えっと、また灰になっちゃった?」
「この方がいい。
「そっかあ。残念。せっかくボランティア部の部員が増えると思ったのに」
「部長さんに
「
「プール掃除にごみ拾い。あとは他の部の助っ人もできればいいね!」
僕はできる限りボランティア部の活動であることをアピールするために声を張って叫んだ。教室でこんな大声を出すタイプじゃないのでみんな驚いている。
童貞を捨てたからキャラ変したんじゃありません。童貞のままだからこうして必死に抗ってるんです。
「ふふ。ヤル気になってくれて嬉しい」
僕の心の叫びは目の前にいる
こうなればあの思い出は絶対に水に流さない。オタク特有の執着心を見せてやる。この先、一生あのおっぱいの感触を心の支えに生きてやるからな!
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