3、

 

 どうやら私は数多の嫌がらせをローディアにしてきたらしい。


「嫌がらせ……例えば?」

「言わせるのか!どこまでも嫌らしい女だな、お前は」

「はあ?」

「はあ?じゃない!お前は一体何を言ってるのだ!?」

「は?だから私がローディアさんに何をしたのか教えて下さいと言ってるんですけど」


 何を言ってるのかはこちらの台詞だ。噛み合わない会話にいい加減イラついてきた。誰かこの場を収めてくれないかしら。


 けれど相手が王太子ともなれば、誰も邪魔に入れないものだ。事態は好転しそうになくてウンザリする。


「そんなに皆の前で公表してほしいか!いいだろう、後悔するなよ!」


 いいから早く話せよ。口にしたら大変な言葉づかいで私は心の中で言った。人目がなければ口に出したんだけど、残念ながら今はパーティの真っ最中。


 異常なまでに静まりかえってるけど、大勢人が居るのである。


「よし、ローディア言ってやれ!」

「はい、モンディウス様!」


 息が合ってますね貴方がた。心底どうでもいいですけど。


 目が死にかけてる私の前に立ちはだかったローディアは腰に手を当てて話し始めるのだった。


「まず、男爵令嬢はこの学園に相応しくないと水をぶっかけられました!」

「おお、なんと酷い!この学園は平等を謳っているというのに!」

「寒くて震えてる私に、風邪でもひいて学園には二度と来るなと言って……笑いながら立ち去って行かれました!」

「なんてことだ!この学園に在籍する者は、皆平等に学ぶ権利を持っている!だというにのに!二度と来るなとは……なんてやつだ!」


 ……何これ、何の茶番ですか。


「それでも私は屈する事無く学園に来てましたが!学食で昼食をとってましたら、トレーに乗ったお料理を全てぶちまけられ!熱いシチューがかかって火傷しそうになりました!」

「なんと恐ろしい!キミの美しい肌に火傷跡が残らなくて良かったよ!」


 両手を頬に当てて、首をフリフリするローディアの肩を気の毒そうに抱くモンディウス。


 まだ続くのか。


「他のご令嬢を使って私の教科書や私物を隠したり破いたり壊したりされました!」

「なんだと!教科書が無くてどうやって授業を受けろと言うのか!この悪魔め!」


 ついにはサメザメと泣き出すローディアを胸に抱きしめるモンディウス。


 ……もう、帰っていいでしょうか。


「──って、おいこら!何帰ろうとしてる!逃げるのか、この卑怯者め!!」


 本気で帰ろうとしたら、止められてしまった。ち、めんどくさい。




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