第152話

 リカルドが先頭を走り、その後ろをシオンたちが追った。積もった雪に足を取られ、騎士の俊足をうまく発揮できないでいる。そんなもどかしさに若干の苛立ちを覚えながら、シオンは目を凝らして吹雪の隙間の先にある光景を見た。


「コボルトに誰か追われているな」


 小柄な人影がひとつ、その周辺にはコボルトの影が六体ある。コボルトたちはキツネを追う猟犬の如く、小柄な人影を林の方へと追い立てまわしていた。すぐに襲い掛からないのは、狩りを楽しんでいるからだろうか。

 だとすれば、コボルトたちはすぐに獲物を仕留めなかったことを後悔するに違いない。


 突如として、無数のハルバードがコボルトたちに降り注いだ。ハンスの魔術によって地中の鉱物から作り出されたハルバードは、小銃から放たれた銃弾並の速度を以て、次々とコボルトたちの体を穿っていく。


「さっすがハンス」


 コボルトたちは悲鳴を上げることすらできずに肉の塊と化した。

 相棒の迅速かつ無駄のない一瞬の制圧劇に、リカルドが軽い賛辞を贈る。それからリカルドは、コボルトの亡骸を器用に避けながら、その中心にいる小柄な人影へと向かった。


 小柄な人影は、少し前に聞いた悲鳴から予想した通り、若い女だった。頭からつま先までを防寒具に包み込み、唯一露出している顔はしもやけで赤くなっていた。女は何が起きたのか理解できていないような表情で、尻もちをついたまま固まっている。

 そこへ、リカルドが右手を差し出した。


「お嬢さん、怪我はないかい?」


 女は一瞬肩を上下に跳ねさせると、そこでようやく自分が危機的状況から逃れたことを察したようだった。恐る恐るリカルドの手を取り、彼に引き寄せられるように立ち上がる。


「あ、貴方たちは?」


 女は声を弱々しく震わせながら問いかけた。

 リカルドが少しだけ身なりを整え、軽く会釈をして見せる。


「俺たちは騎――」

「私とこの男は聖王騎士団の騎士だ。後ろの二人は、ついさっき偶然出会った旅人だ」


 少し気取った風に自己紹介をしようとしたリカルドだが、ハンスが遮って説明してしまった。すかして落胆するリカルドの傍ら――シオンとユリウスは、自分たちのことを偶然出会った旅人と紹介されことに、一瞬怪訝に眉を顰める。すると、ハンスが無言で二人を一瞥した。

 どうやら、余計なことは喋らず、話の進行はこちらに任せろと言いたいらしい。シオンとユリウスは、ハンスからの無言のメッセージをそう読み取り、軽く肩を竦めて応じた。


 三人がそんなやり取りをしていた一方で、立ち直ったリカルドが女と話を進めていた。


「もしよければ、君のことを聞いてもいいかな? 俺はリカルド、君は?」


 女は少しだけ視線を左右に泳がせたあと、困ったように眉根を寄せる。だが、すぐに観念したかのように息を吐き、防寒具の帽子を取った。栗色のショートヘア―が風に煽られて大きく靡き、顔立ちがよりはっきりとわかるようになる。歳は十代後半といったところで若干の幼さを表情に残しており、まだ成人はしていないように見えた。


「……クラウディア」


 女はクラウディアと名乗り、どこか空虚に視線を落とした。

 シオン、ユリウス、ハンスの三人は、そんな彼女の仕草を訝しげに見ていたが――リカルドだけは変わらず、クラウディアに鼻の下を伸ばしていた。


「よろしく、クラウディアちゃん。近くにお洒落な喫茶店のひとつでもあれば、ゆっくりと時間をかけて君のことを知れたんだけど、そうもいかないらしい。単刀直入に訊いちゃうけど、君はこんなところで一人で何をしていたんだい? とてもじゃないけど、君みたいな若い娘さんが一人で出歩くような場所じゃないだろう?」


 リカルドはへらへらと軟派な様子だったが、質問の内容は存外にシビアなものだった。こんな悪天候、しかも魔物が出るような場所に、若い女が一人でいることに、当然の如くリカルドも疑問を抱いているようだ。

 その質問を受けて、クラウディアはますます挙動不審に視線を泳がせた。

 風の音で満たされた妙な沈黙が五秒ほど続き、不意にハンスが踵を返す。


「リカルド、もういいだろう。行くぞ」

「ええ? こんなか弱い女の子を一人置いていくのかい? そりゃあいくら何でも薄情が過ぎるでしょう」


 リカルドが大袈裟に驚いた顔になってハンスを呼び止める。だが、ハンスに続き、シオンとユリウスも踵を返した。


「こんな場所でいつまでもちんたらしてられっかよ。吹雪もまだ止みそうにない。さっさと行くぜ」


 ユリウスから手厳しい言葉を受け、リカルドはやれやれと肩を竦める。

 と、そんな時だった。


「ま、待って!」


 クラウディアが突然声を張り上げ、立ち去ろうとするシオンたちを呼び止めた。


「貴方たち、これからどこに向かうの?」


 シオンたちは足を止めて振り返る。


「軍の要塞基地だ」


 ハンスが答えると、クラウディアが一瞬だけ怯んだ表情になる。何に怯んだのか――それに疑問を持つ間もなく、クラウディアが一歩前進して四人に迫ってきた。


「ね、ねえ、もしよかったら、もう少し先にあるブラウドルフって町まで私を連れていってくれない?」


 意を決したように言ったクラウディアに、リカルドが真っ先に反応した。


「おお、それはもう喜んで。さあ、クラウディアちゃん、足元に気を付け――」

「リカルド」


 勝手に承諾したリカルドを、ハンスが短く制する。


「駄目?」

「勝手に話を進めるな。任務を何だと思っている。聖都の外に出られるようになってから、お前は少々羽目を外し過ぎだ」


 相棒からの叱責を受けたリカルドが、子犬のようにくーんと鳴く。それを見たユリウスが、気持ち悪いんだよ、おっさん、と小声で吐き捨てていた。

 騎士たちがそんなふざけたやり取りをする一方で、クラウディアは失望した顔になってさらに彼らに迫った。


「た、助けてくれないの?」

「我々にも都合がある。付いてくるのなら守ってやる。だが、町に向かうというのならここまでだ」

「貴方たち騎士なんでしょ!? 善良な市民が困っているのに、助けてくれないの!?」


 急に感情的になったクラウディアだが、ハンスは変わらず淡々とした面持ちだった。

 そこへ、リカルドが仲裁するように割って入る。


「ハンス、ここはクラウディアちゃんを助けてあげようよ。下手すると、また俺ら騎士団のイメージが悪くなる。今はただでさえプロパガンダで良からぬことを世間に吹き込まれている立場だ。ちょっとくらい人助けして、好感度上げに貢献してもいいんじゃない?」


 ハンスは無表情のままだったが、重たい息を小さく吐いた。それも一理あると、考えているようだ。教皇の計略によって、昨今の騎士団の立場は著しく弱くなっている。それに加えて民衆の好感度まで下げてしまっては、いよいよ大陸での騎士の立場はなくなってしまう。こうした小さな積み重ねが後になって響くことは、容易に想像できた。


 再度、妙な沈黙が生まれる――そんな時だった。


「シオン、どうした?」


 不意にユリウスがシオンに声をかけた。

 シオンは、自分たちの周辺を取り囲む何かの気配を感じ取り、刀に手をかけた。


「何かいる」

「またコボルトか?」


 ユリウスも臨戦態勢を取る。だが、


「いや……これは――」

「全員、両手を挙げろ!」


 シオンが答えようとした矢先、突如として怒号にも似た声が起きた。

 吹雪の中から、続々と白い人影が現れる。二十人はいるだろう。全身を雪の保護色となる白い防寒具で包み、顔にはゴーグルとマスクを着用している。漏れなく全員が小銃で武装しており、その銃口はシオンたちへと向けられていた。


「軍の兵士か?」


 軍の要塞基地が近くにあることを鑑みれば、そう考えるのが妥当だろう。

 シオンは警戒しつつもゆっくりと武器から手を離した。


「もう一度言う! 全員、両手を挙げ――」


 兵士の一人が声を張り上げたが、ふと途中で黙ってしまう。ゴーグルの奥にある視線の先は、クラウディアだった。


「クラウディア嬢、こんなところまで逃げていましたか」


 兵士に言われて、クラウディアが悔しそうに顔を歪める。

 直後、小銃を握る兵士たちの手に力が込められた。


「貴様ら、クラウディア嬢に何を――」

「待って! この人たちは私を魔物から助けてくれたの! 本当だから!」


 シオンたちを庇うように前に出たクラウディアだった。それを見た兵士たちは、少し間を置いてから銃口を下げる。


「何者だ、お前たち?」


 兵士が不躾に訊いてきて、ハンスとリカルドは自身の懐からある物を取り出した。騎士である身分を証明する、剣のペンダントだ。


「聖王騎士団の騎士、ハンス・ノーディンだ」

「同じく、リカルド・カリオン」


 兵士たちが一瞬ざわつく。警戒はまだ解かれていないようだったが、幾分か張り詰めた空気が和らいだ。


「失礼しました。お二人が騎士であることは承知しましたが、他の二人は?」


 兵士が軽く敬礼をして、今度はシオンとユリウスの方を見た。


「旅人らしい。コボルトの群れに襲われているところを我々が偶然助けた」


 ハンスがそれらしい嘘を言った。確かに、シオンとユリウスの立場を説明しても、到底納得などしてもらえないだろう。まして、シオンの正体が黒騎士と知られれば、教会、ひいては十字軍へ通報されかねない。シオンとユリウスは、ハンスの意図を汲み取り、合わせることにした。


「旅人がこんなところで何をしている?」

「軍の基地で備蓄している抗ウィルス剤を分けてほしい。そのために基地へ向かっていた」


 シオンが答えるも、兵士はどこか疑い深い所作で近づいてきた。


「ここから少し離れた場所にブラウドルフという町がある。そこで買えば済む話だ」

「在庫を切らしているとその町の医者に言われた。風邪をひいて苦しんでいる仲間を待たせている。急いでいるんだ」


 すると、兵士たちはシオンとユリウスの手首に手錠を付けた。突然の出来事に抵抗する間もなく、二人はただただ怪訝に首を傾げる。


「あ? なんで手錠はめんだよ?」


 ユリウスが訊くと、兵士の一人が彼の背中を小銃で小突いた。先に進めと、誘導しているようだ。


「ここは一般人の立ち入りを禁止している軍の管理区域だ。旅人であろうと例外ではない。国の法律に違反したとして連行する」

「何で俺たちだけなんだよ? 騎士の二人はともかく、そこの女は?」

「いいから黙って歩け! 基地まで連れていく!」


 シオンとユリウスは、そのまま有無を言わさず兵士に連行された。少し離れたところでハンス、リカルド、クラウディアも歩いており、どうやら案内される先は同じようである。

 それから十分ほど吹雪の中を歩かされたあと、突如として眩い光が周囲を照らした。


 目を眩まして薄目になるシオンたちの眼前にあったのは、三台の大型の雪上車だ。夜を照らす光は、雪上車の上部に備え付けられた照明によるものである。分厚い装甲版にキャタピラーを備え、一見すると砲のない戦車のようだった。

 シオンたちは兵士に促されるがまま雪上車に乗り込んだ。シオンとユリウス、ハンスとリカルド、クラウディアという形で三台に分けられる。


 間もなく雪上車が発車し、大きなエンジン音を鳴らしながら雪の中を豪快に進みだす。


「これは、ラッキーだったのか?」

「この後、面倒なことにならなければな」


 雪上車の後部座席にて、兵士に両脇を固められたシオンとユリウスがぼそぼそと会話する。兵士に睨まれ、それきり黙って早一時間――いつの間にか外は吹雪が止み、夜の寒空には月と星が見えるようになっていた。


 そして、一つの巨大な建築物が姿を現した。


「すげぇな。基地というより城だ、こりゃあ」


 雪上車の窓から覗いたそれを見て、ユリウスが感嘆の声を漏らした。

 目的地であった軍の要塞基地は、想像以上に巨大かつ厳かであった。鋼とコンクリートで固められた巨塔はまさに天を貫くような大きさで、見た者を畏縮させるような物々しさがある。点在する幾つものサーチライトがカメレオンの視線の如く忙しなく基地の周囲を照らしており、ネズミ一匹の侵入すら逃さないのだろうと思わせるほどに厳戒態勢であった。


 シオンたちを乗せた雪上車はゲートを抜けるとそのまま基地の内部へと進み、駐車場と思しき場所で止まった。


「降りろ」


 兵士に言われて車外へ出ると、周囲には武装したグリンシュタット軍の兵士たちが険しい面持ちで立っていた。シオンたちのことを非常に警戒しているようで、皆が一様に小銃を両手に持っている有様だ。


 凍てついた空気を介して伝わる若干の殺意に、シオンとユリウスは揃って反射的に顔を顰めた。


「総員、整列!」


 突如、駐車場内に号令がかけられた。兵士たちが一斉に要塞内部へと続く駐車場の扉の前に向かい合わせで並んだ。


「捧げ銃!」


 次の号令で、小銃を各々の眼前に立てる。

 重々しく扉が開かれると、兵士の作った道のど真ん中を一人の軍人が闊歩した。軍用コートの下から覗く勲章を見る限り、将軍以上の地位を持っているのだろう。顔つきや皺の多さから歳は五十を過ぎていると思わるが、栗色の髪の毛がどこか若々しい印象を与えていた。


 その偉そうな軍人は、シオンたちなどには目もくれず、クラウディアのもとへ早足で向かった。


 そして、乾いた音が一発――偉そうな軍人が、クラウディアの白い頬を平手打ちしたのだ。


「いったいどれだけ迷惑をかければ気が済むんだ! お前がここから逃げ出すたびに、ここの兵士たちが何人も駆り出されるのだぞ!」

「そっちが勝手に追いかけるのが悪いんでしょ! 私のことなんて放っておけばいいじゃない!」


 クラウディアは赤い頬を擦りながら、涙目で食って掛かる。


「もう少しで町に行けたのに……くそっ!」


 歯噛みして悪態をつくクラウディアを見て、偉そうな軍人はさらに表情を怒りで歪める。両拳を震えるほどに強く握り、有りっ丈の自制心を捻り出そうとしていた。


「反省の色なしか。こうなったら、軟禁もやむを――」

「まあまあ。いい大人がこんないたいけな女の子相手にムキになっちゃあ駄目ですよ」


 そんな緊迫した雰囲気の中に、何の前置きもなくリカルドがふざけた調子で割って入った。

 突然の出来事に、偉そうな軍人も面食らって後ろに仰け反る。


「だ、誰だ、貴様?」

「聖王騎士団所属、円卓の議席Ⅷ番、リカルド・カリオンです。どうかお見知りおきを」


 リカルドはそう言って一礼し、剣のペンダントを振って見せた。


「き、騎士団? それも、円卓と言えば騎士団の最高幹部では……」


 思いがけない来客に軍人が狼狽していると、ハンスも同じように剣のペンダントを見せながら近づいた。


「同じく聖王騎士団所属、議席Ⅸ番、ハンス・ノーディンです。貴方が、グリンシュタット軍中将、フリッツ・ヴァンデル閣下ですね?」

「い、いかにも……」


 リカルドとは対照的なハンスの冷たい無表情に、偉そうな軍人――フリッツ・ヴァンデルは気圧されながら頷いた。

 ハンスとリカルドはペンダントを懐にしまうと、改めてヴァンデルに向き直る。


「突然の訪問、どうかご容赦ください。本日は騎士団の任務でこちらに参りました」

「騎士団の任務? それはいったい?」


 怪訝に眉を顰めるヴァンデルに、ハンスは軽い目配せを送った。


「少し長くなります。人目もありますので、どこか落ち着いて話せる場所があれば――」

「ヴァンデル中将閣下! 例の実験の承認を早くください! ヴァンデル閣下!」


 ハンスの話を遮って、駐車場内にやかましいと思えるほどの不快な男の声が鳴り響いた。どこからともなく、白衣を着た男が駐車場内に慌ただしく入ってきたのだ。


「メンゲル! 研究室で待っていろと言っただろう!」

「だったら早く承認してくださいよ! 僕はね、一秒も無駄にしたくないんですよ! いいですか! 僕がやっている研究は――」

「人前で研究のことを話すな! 兵士! メンゲルを研究室へ引きずり戻せ!」


 ヴァンデルが制すると、数人の兵士がメンゲルと呼ばれた男を要塞の奥へ引きずっていった。その間にもメンゲルは何やら喚いていたが、兵士の一人が彼の口に布を押し込んで無理やり黙らせた。


 その後、まるで突風が過ぎ去ったかのような静寂が訪れるが、


「申し訳ない、邪魔が入ってしまった。話は後程伺います。おい、誰か、騎士のお二人を応接室まで案内しろ」


 ヴァンデルが短く謝罪し、今後についての音頭を取ってくれた。

 兵士たちが一斉に敬礼すると、ヴァンデルは入ってきた時と同じ扉へ歩みを進めて姿を消す。それに追随するように、クラウディアも兵士に連れられて扉の奥へ行ってしまった。


 そんな光景を尻目に、


「どうしたシオン? あの変な白衣の男見てからやばい目つきになってるぜ?」


 不意にユリウスが、シオンにそう話しかけた。

 シオンの赤い双眸は、戦いのさなかに相手へ向けるそれと同じように濁っていた。


「あの研究員、三ヶ月前に会ったことがある。ガリア公国のルベルトワという街で、教皇の指示を受けて領主と一緒にエルフの人体実験を進めていた教会魔術師だ」


 シオンが低い声で言うと、隣にハンスが立った。


「フリードリヒ・メンゲル――教会魔術師としての銘は“流転の造命師”だ。魔物の製造や人体実験といった倫理観に欠ける生体魔術を好んで使うため、界隈では狂気の科学者と言われている。シオンの言う通り、三ヶ月前までルベルトワの亜人収容所で人体実験をしていた研究員の一人だ。お前たちが収容所を解放したあと、副総長が奴を含めた研究者全員を回収、拘束したが、すぐに教皇の鶴の一声で釈放されてしまった。フリードリヒ・メンゲルについてはその後消息不明となっていたが――やはりこの基地にいたか」

「なんだ、その言い方? アンタら、あの男がここにいることを最初から知っていたのか?」


 シオンの瞳から、疑念と殺意が複雑に絡み合った視線が放たれる。睨まれたハンスは特に怯んだ様子を見せなかったが、それがもし一般人であれば、耐えきれずに腰を抜かして逃げ出していたことだろう。逆に言えば、今この瞬間のシオンは、ハンスとリカルドに対し、それほどまでの敵意を持っていた。


「ハンス。もう、シオンくんたちに言ってもいいんじゃない? 俺らの任務内容。下手に隠して、また勝手に暴れられたら、こっちもたまったもんじゃないでしょ」


 それを察したリカルドが、観念したかのように肩を竦める。提案されたハンスもまた、一度大きな息を吐いて、軽く目を瞑る。

 そして、徐に口を開いた。


「教皇主導のもと進められていた亜人への“騎士の聖痕”適合実験が、この基地で今なお継続している疑いがある。私とリカルドは、その真偽を確認しにきた」

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