Lastステージ『66番:高月あやかvsケンヤ=ペトロリアム』

控室

 異世界『控室』。

 大勢人がいればどうすれば良いか。そんな問いについて「鍋だ」と答えるのがハートだった。そしてそれを真に受けるのがメルロレロだった。


「下準備、ヨシ」


 割烹着がすっかり板についている。西洋かぶれのお姫様の見かけで、その実、生前は日本良家のお嬢様だった。炊事なんかお手の物だ。


「んんwww家庭的な女子はモテモテですなwww」

「⋯⋯⋯⋯やめて」

「んんwww照れている姿も愛くるしいですぞwww愛でる以外にありえないwww」


 真正面から褒めちぎられ、メルロレロが顔を真っ赤に拳を突き出す。ぽこぽこ殴る小さな手に、クサハエルはほくほく顔だった。


「⋯⋯⋯⋯男捕まえて、楽しそうね」


 ボソッと呟きながら横を通り抜けるハート。メルロレロは抗議の声をあげようとしたが、舌が絡まってうまく発声できなかった。ミネラルウォーターのペットボトルをラッパ飲みし、絶妙な煽り顔を浮かべるハート。メルロレロは地団駄を踏んだ。


「んんwww難儀な性格してますなwww」


 ハートが口つけたペットボトルをさりげなく口付けながら、クサハエルは台所から立ち去った。彼女らの視線から逃れたところで、ペットボトルの飲み口を舐め上げる。


『なにをしているんだい?』

「んんwww神出鬼没はありえないwww」


 ウサギに見られた。クサハエルは小さく舌打ちした。


『あやかは行ったみたいだね。君にとっては負けてくれた方がいいのかな?』

「まwwwさwwwかwww我にとっても、この勝利は重大な意味を持ちますなwwwだからこそ貴殿らの優秀さには本当に感謝しかありえないwww」

『へえ、それは殊勝だね』

「んんwww勘違いしているようですがwww我は主への挑戦権を拒んだりはしませんぞwww」


 クサハエルは厳かに両手を浮かべた。


「んんwwwあんな居るか居ないか分からない輩相手に忠誠心なんぞ皆無ですなwwwただ、我とて手柄と地位は惜しいのですぞwww」


 あっけらかんと言い放つおっさん。メフィストフェレスはそれ以上の追求を避けた。


『そうかい。あやかが負けるはずはないから、覚悟は決めておくべきなのかな』

「んんwwwwww」


 クサハエルは文字通り失笑した。

 最後のゲームの内容を思い返しながら。

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