第29話 “お祭り”の下準備

真夏の太陽光が燦々と―――また容赦なく照り付け、絹漉し豆腐よりも白い私の柔肌をこんがりとさせた季節からまた一つ進み、今現在では緑だった木の葉が黄色や紅い色に色付き舞い散る“秋”……早朝や夜中は冷え込む季節となったはいいモノの、日中では未だうだる様な暑さ。 なによぅこれ!ふっざけてんじゃないの?!魅惑の夏休みというモノが終わってからと言うものは、日中は日中でだるおもな暑さの中、学校へ行かないといけないし、かと言って?夜中になれば日中の暑さはどこへやら、油断して薄着して寝ていたら風邪を引いてしまいそうになったわ。 こう言った季節の変わり目と言うものは、私が住んでいた世界では考えられなかった為、私も油断しそうになってしまったのだ。

{*シェラフィーヤ様が元住んでいた世界でも“暑さ”“寒さ”と言うものがありますが、それは得てしてアベル達の世界(現実世界)の様に、季節が変わっていく毎に変化していくものではなく、『寒い場所(土地)』は“寒い”し、『暑い場所(土地)』は“暑い”まま―――と、まあそう言う事。(いわゆる「常夏」や「常春」「常寒」と言うヤツですね)}


それはまあそれとして、現在私が通っている学校の『恒例行事』?とか言うので、近々『学園祭』と言うのをやるらしい。 『○○祭』と言うくらいなのだからお祭りってことなのよね!いいわねえ~~~お祭り!以前あった夏祭りでは私の竜児と一緒に色々出店を回れたのは良かったわ。(ただまあ~~~『お邪魔蟲』達は例外なくくっついて来たけれどね。) なので、この際またも竜児との相性を上げる為に愉しみにはしていたんだけれども……

「あ゛?何を言っている……そんな暇なんかないだろう。」

「へっ?あのーーー竜児の言っている事が判んない。」

「お前なあ……オレとお前とがクラスの実行委員に指名されたの、もう忘れたのか!」

「えっ?私と……竜児と?一緒の……なんとか委員! フ・フッ―――これは最早運命と言うものね!私と竜児との絆は相当固いものになったと言わざるを得ないわ!!」

「あのなあーーーお前……オレ達が任命されたのなんだか判って言っているのか判っているのか。」

「(ん~~?)これから私と竜児何をするにおいても一緒なんだよねえ?」


「えっ?」 「えっ?」


「「えっ?」」


一体コイツの、脳内桃色回路はどうなっているんだと聞きたい。 学園祭の実行委員と言うのは、一聞すると花形職業(?)か、なんかだと勘違いする奴も多いが、そういうのはやりたい奴がやればいいだけの事であって、何もオレが率先して―――立候補してまでやりたかったわけではない。 では、なぜこう言う役目をやらされてしまったのかと言うと、このクラスにはオレの悪ふざけの付き合いとしての“腐れ縁”的な友人もいるわけで…つまりはそうしたヤロウの悪ふざけで推薦されてしまったわけなのだったが―――こう言うのってやっぱり自分からやりたい奴っていないんだよなあ~~~まあ早い話しオレの対抗馬的な奴もいないので、選挙もなくやけにアッサリと決められてしまったわけだ。

ここまでならオレも『決まったんだしまあ仕方ないか』くらいで済ませられたものを、オレの名前が黒板に書かれたものだから、それを見てしまった吹耶のヤツが……


「あっ、竜児の名前が書かれてるって事は、何かするのね?だったら私もやってあげるわ!」


こんな突拍子もないことを言い出したりするもんだから、その後のクラスメイトの男子共の冷やかしの嵐ときたらないもんだった。 オレが決まったのは、まあよしとしよう。 だがなぜ吹耶もやりたがるんだぁあ!しかも悪いことにこのクラスには巴惠もいる。 これまでの経緯を見ていたあいつがこのまま大人しく引き下がるなんて、そんな甘い認識は空の彼方に置いて来た。


まあつまりだな、やはりと言いますか……


        * * * * * * * * * * *


「なんですって?今一度―――ええ今一度言ってご覧なさいイザナギ!!」

「事の次第は斯くの如し―――今年に於いての学園祭、それがしのクラスの実行委員2人は、アベルとシェラフィーヤに決まってしまたのでござる。」

「あああああっ!なんてこと!!こんな事ならわたくしも、わたくしのクラスに於いての実行委員に収まるのでしたわッ!!」

「鎮まりなさい狼狽うろたえ者。 しかし、ものの考え様によっては僥倖―――何を隠そう生徒会内に於いて今年の学園祭実行委員の取りまとめ役は私なので・す・か・ら!!」

「実はそれがしも実行委員に立候補するつもりであったのだが、アベルの友人とシェラフィーヤに先を越されてしまってなぁぁ……」

「そおぉぉーーーですわっ!いい事を思いつきました。 シェラフィーヤ、あなたのその役目、あなたのママンであるこのわたくしめにお譲りなさい!さもないとぉぉ~~」

「おいお前クラス違うだろうに―――無茶言うなよ。」

「そうよ、そうよぉーーーいくら仲間だからってそんな横暴にして暴挙許されるわけないじゃないのよ。」

「あ゛ーーーあなたのママンて事には最早ツッコまなくなってしまったのですね。」

「当っったり前じゃないのよ、クローディアさんの言っている事に一々反応しちゃったら、これ以上進展しない……この作品の作者の『行き当たりばったり』な点が浮き彫りとされちゃうじゃないのよ!!」

{*余計な事は言わんでよろしい}


今まで散々『天の声』から痛い処を衝かれてきたからなあ~~~これを機会に反撃開始するわけかあ?

それはそれでいいとして、“今”はゲームの中……その中での今日一日の(現実世界の)やり取りを話し合っていたところ、どうしても話題はになり、立ち待ちの内に紛糾―――もはや本題はズレてしまっているわけで…

しかし―――あのクローディアも実行委員に推されていたとは。 けれどクローディアは他薦を蹴ったようだ。 ナイスな判断だクローディア……と、取り敢えず言っておこう。

それにしても危うく難を逃れたと言って良かったものか―――これって下手すりゃ今年の実行委員はオレ達『悪党』で占められやしなかったかと危惧する反面、今年の学園祭実行委員の“長”に収まってしまっていたのが、『怜悧の風紀委員長』―――こと、源野靜香だったとは……うぬう、これは一時ひとときも気が抜けやしないぜ。

とは言っても、実行委員の仕事は多寡が知れている。 そのクラス毎で催す『出し物』と、その『出し物』で使用する物資・材料を報告する……それ以外では何のトラブルも起こすことなく安全かつに運営・管理していく―――まあそう言った処になるのだろう。

だがしかし、オレは今年こそは学園祭をエンジョイしたいものだと思っていたのだ。 だが……そう思っていた処だったのだが、オレの悪友のお蔭で自由が利かなくなってしまった―――おまけに(吹耶)である。

明らかに貧乏くじを引かされたのに―――こいつは無邪気でイイよなあ~~~その無邪気さの半分でもいいからオレに分けてくれ。 ……いえ、今のはほんの冗談です。

{*“今年こそ”と言っている背景の着目としては、実は竜児君高校1年の頃は不登校にして“引き篭”っていた経緯があり、こうした学校行事に参加していなかった前科が。 しかし“今年”は何の因果か竜児君の“お知り合い”が多くなったため、高校2年の初めから真面目に登校しているのである。}


などとまあ―――『天の声』から早速痛い処を衝かれてしまったのだが、HRの時間を利用しての『出し物』の候補……似たようなモンばっかだよなあ~~~。 だってよ、『喫茶店』に『お化け屋敷』変わった所では『演劇』―――と……まあーーーバリエーションの少なさと言ったらない。 だったらお前の考えているいいアイデアはあるのかと言ったら……オイオイ、何を言っているんだよ、冗談だろう? オレはね、参加するとは言っても“観客”の方での参加なの!隣りにはバリクソ可愛い彼女とお手て繋いで、運動部や文化部が催してる出店―――『たこ焼き』やら『焼きそば』やら『アメリカンドッグ』やら『ソフトクリーム』やら買い食いして歩き回る………………

うんーーーなんだろう、この双眸からあふるる熱いものは……ヌミマセン―――完全に盛っちゃいました。 そんな都合の好い彼女なんて夢のまた夢―――オレの妄想内ではちゃんといるんだけどなあぁぁ~~~!(公式で発表されている方の)『魔王シェラフィーヤ様』がああっ!! それが一体何の間違いで『ポンコツ』魔王がオレに付き纏っているんだか……

「ねえどうしたの?竜児―――あんた元気ないわよ?」

一体誰の所為だと!

「お前にゃ関係ねえよ。 それよりクラスの出し物決めるぞ。」

「あのねえ……私が『関係ない』はそりゃないでしょう?! あんたが寂しいと思ったから、私がバディに立候補してあげたのに。」

こいつのその言葉―――本当に、何の欲目もなくそう言うんだったら何の問題もない。 それどころか諸手を挙げて歓迎してやりたい処だ。 ただ……“今”のこいつは―――

「ふぅぅーーーーん、ならこのオレの目をまっつぐに視てみろ……」

「えっ? …………――――」(チラ)

「ヲイ、なぜ目を逸らした。」

「……~~~ごめんなしゃい―――2人きりになれちゃうと思って、その…つい……魔が差しちゃいました。」

ほらな?こんなもんだ―――まあこいつ、すっかり“悪”に染まり切っちまってるから、100%こいつが悪いかと言うとそうでもない。 こうなってしまうまでオレ達の一党に“お世話”になっちまったから、オレ達の責任でもあるからなんだろうけれどもなあ……。


そんな中、クラスでの『出し物』が決められた。 圧倒的支持が多かったのが『喫茶店』ではあるが、これだけではどうにも他とは変化(差別化)が付けられない……だと言う事で、少数派(実に少数派)意見として『仮装』……そう俗に言う『コスプレ』にしてはどうか―――と、オレなりに意見を出してみたのだが……

「イやあぁぁ~~~っ、何考えてんの安倍のヤツぅぅ~~~」 「サイテーね、やはり“元”引き篭もりでオタなヤツはロクな事を考えやしないわ!!」

「へへっよくやったぜ竜児!」 「決まりだな、コスプレして客寄せすんのはお前ら女子だ!!」

おおっと―――(実に)少数派な意見だとしても男子の中に“むっつり”様がかなーーりおられたようだ。 しかも女子どもは自分がなにやら恥ずかしい恰好をさせられると思って非難GoGoみたいだな。 ただ―――…

「お前達、この決定事項は我がクラスを代表する実行委員の2人が決めた事なのだ。 意見として沢山出たのは良い事なのだが、そこから1つを選出しなければならない……そこの処をよく判ってくれ。 それにたとえ下らないものであっても一所懸命にやった時、その達成感も一入ではないだろうか?」

えっ、巴惠さま、あんた自分が何を言ってるか判ってんの?コスプレするのクラスの女子なんだよ?『メイド服』や『バニーなガール』の恰好するのに(させられるのに)何の抵抗もないの??

あるえぇえ~?コイツはとんだ計算外だ、てっきりオレは巴惠から猛反発喰らう―――か、『怜悧の風紀委員長』に告げ口するくらいは覚悟をしていたのだが……まさかまさかの“推し”だとおぉう??!

ううむ……ある意味でいいとこの出の発言力のこわさと言うのをまざまざと見せつけられられると言うかたちにはなったが、あれだけ非難GoGoだった女子共が鳴りをひそめさせてしまったところをみるとあながちそう言わざるを得ないようだな……。


しかしーーー巴惠のヤツ、なぜ賛成したんだ??


「なあーーー巴惠、ちょっと聞いていいか。」

「うん?なんだ竜児ではないか―――うむ何が聞きたいのだ。」

「『学園祭』でのクラスの『出し物』でお前が賛成してくれた事、感謝しておくよ。 ただなあ……ひょっとしたらお前も恥ずかしい恰好するかもしれないんだぞ?」

「恥ずかしい? 果て何のことやら……」

「いやいやおいおいちょっと待て? お前も考え様によっちゃあ『メイド」とか『バニーガール』するかもしれないんだぞ!?」

「竜児はそんな事を心配していたのか、だが―――それは心配無用だ!!」


「えっ―――はい?なんで??」


「この私がするコスプレは、なんのヒネりもない…ではない!!」

てかえええええ~?!お前ヤル気マンマンか・よ! それよりもだな、こいつや姉の靜香はこの地域でも割と名の通った家柄だ、そんな一族の一人とは言え可愛い娘をあられもない姿にさせられると知った親御さんの気持ちはいかばかりのものだろうか??


だがオレは、続く巴惠のセリフに開いた口が塞がらなかったのだ……



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