第20話-① 場外乱闘 上等!!
その事を知った当時、オレ(達)は相当慌てたものだ。
今回一連の騒動は、『吹耶(シェラフィーヤ)、中間試験全教科一段違い(ズレ)の解答のため追試』から始まって、『妙に大人しい靜香(イザナミ)に玲奈(クローディア)』、そしてオレの妹である乃亜(ノエル)によって暴かれた、オレ達の一党『悪党』最大の秘事、『まさかの靜香(イザナミ)がその昔『デストロイヤー・レイナ』のフアンだった』ぁあ??!
これはもう、何もない方が奇蹟だ、いや逆に何もない方がおかしい!そして着々と『Xデイ』は近づいていたのだ。
* * * * * * * * * * *
その日オレ達は珍しくログインすらもせず、ある画面を食い入るようにして見ていた。 そう、その日にあると言う『異種総合格闘技INDORA』に出場すると言う、ある格闘技界に於いては最年少で世界王者まで登り詰めた女流格闘家『デストロイヤー・レイナ』―――実はこのデストロイヤー・レイナと言うのが、オレ達の高校に通う同級生にして同じクラスの女子高校生『猪狩玲奈』だと言う事はまだ誰も知らない。 そしてまた、この猪狩玲奈と言う奴が、オレがプレイをしているゲームの世界では割としつこく付き纏ってくる“ネット嫁”『クローディア』である事は、まだ更に輪をかけて誰も知る由すらない。
だが、今は最早そんな事は問題ではない―――いや違うな…今は最早そんな事が問題ではない。 だろうか?
それと言うのもだな、このわずか数時間前発覚してしまった驚愕の真実。 『源野靜香はデストロイヤー・レイナの熱烈なフアンである』―――ええええ~~~?どう言う事ぉ?それってどこか何かおかしくない?いやだってある特定の有名人のフアンだったら、なぜにしてあんなにまで激しい闘気や殺気をぶつけ合ったり、
オレ、ワケ分かんない―――と言いつつ、オレの隣りで今や遅しと試合開始を待ち侘びるこいつ(吹耶)を見た時……
「しかし意外だったわよねえ~~~まさか靜香さんが玲奈のフアンだったなんて。」
「とは言え、いつもは顔を付き合せただけでも憎しみ合っていますものね~。 そこはまあ、判らなくはないですが。」
「へえ~どう言う事なの?乃亜。」
「まあ、一時期憧れてた人物が、まさか今まで自分が惚れてる相手にちょっかいかけまくって来た相手と知れればねえ~?」
「ふう~ん、それは大変ねえーーーあらどしたのぉ?竜児ぃ、そんな熱い目で私を見つめなくってもお~~」(デヘデヘ♡)
オレ―――なんだか少しだけ、お前(靜香)の気持ち判るぞぉぉぉ~~~痛い、痛いくらいに判るぞおぉぉ~~~…
オレは、知る人ぞ知る。(とは言っても知らない人から見たら「ナニソレ」的な事なのだが…) 『魔王シェラフィーヤ様』大好き人間で、栄えあるファンクラブ会員番号1番である男だ! そのはず……なのだが、その
ああああ~~~~こんなことなら、実態なんて知りたくもなかったよなあ~~~知ってしまったお蔭で、以前までの信奉心は無くなった―――とまでは言わないが、当初の様な熱狂的なモノは薄まっているのだ。
* * * * * * * * * * *
ともあれ―――それはそれとして関係なく試合は開始されて行く。 ところがしばらくして皆異変に気付き出したのである。
「おや?何か変ですね……今回の玲奈、調子でも悪いのでしょうか。」
「ホントだなあ……解説・実況のおっさんたちも言っているように、面白いように相手からパンチの連打浴びてやがる……」
「そこよ~~そこそこ!ああんなにやってんの~! こうよ!こう!!相手の拳を直前で
うるっせえなあ……このっ―――そんなんお前に言われなくたって判ってるよ、あいつなら。
しかしそう、オレ達の仲間であるクローディア(玲奈)は、ゲーム内でも接近戦には定評があり、滅多な事ではダメージは貰わない。
まあバフがかかっているとかそう言うのはまた別として、
これは何かあるな―――そう思った時、オレ達が住んでるアパートのオレの部屋のドアを、激しく叩く音がした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
これは―――この一大事は、早くみんなに知らせないと!
そう私は気ばかりが焦り、私は一路竜児達が一緒に住んでいるというアパートの竜児の部屋に向かい、ただタクシーを飛ばしていた。
そして着くなり、やにわに竜児に―――
「おい、竜児―――おおそれに皆も一緒だったか! 丁度よかった……」
「お、おいどうしたんだよ巴惠。 そんなに血相変えて、何かあったのか?」
「ああ、その事についてだが、早速これを見てくれ!」
激しくオレが借りてる一室の扉を叩くなり、乱暴に入室してきた巴惠―――靜香の実の妹は、息堰切った荒い呼気を整えもしないままに、自分のスマフォを提示してきた。 こいつ一体何をオレ達に見せるつもりなんだ? ―――と、そう思っていた時…
『全く……何をやっていると言うの、そんな中堅どころの相手如きに―――』
それは―――紛れもなく靜香の声だった。 しかも静かにして落ち着きのある……そう、オレ達の戦闘を管理している「副団長」の時のイザナミの様な。
いや?? というよりぃい???
「お…おい、ちょっと待とうぜ? 何かオレ
「知らなかった―――正直……だってそうだろう?!あの姉さまの行動スケジュールを聞くなどと言う、そんな畏れ多い行為、私が出来るものと思っているのかあ?」
「でき……ない??かなあ~~ーーー」
「ええ、まあ、何より大切なのは自分の生命ですからね。」
「ん~? ん・ん・ん~~~?? あのさあ、だったらなぜお前が、『靜香が自撮りしているであろう動画』をみれているんだ?」
「姉さまが送ったからだよ、私宛に!それに拒否権など私にはない―――これがどう言う事を意味するか判っているよな?」
「まあ~~見なかったり取らなかったりした時、明日巴惠が学校に来れないような事情になるかもしれない―――までは推測できますが~~」
「そう言う事だ……それにこの動画、『お前達にも見せろ』―――と言っているように思えて外ならなくてな。」
えええ~~~それってオレ達まで“巻き込み”カ・ヨ! せめて当事者同士で収めてくれなかったものかなああ~~。
オレはその時、そう思ったものでした。 しかし……です、この事態このままでは終わらなかったのだああ~!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『…のれ―――ぅぉおおおのれええ~! やはり気の所為ではありませんでしたかああ! なぜ……なぁぁあぜお前がそこにいるう!!』
『ああ~~っとぉ?ここでレイナ立ち上がったものの、なにやら観客席に向かって喚いている様であります。』
『なにかあったんでしょうか? どこか対戦相手以上に憤っているようでありますが??』
あっるぇえ~? なんであいつ(玲奈)、
「……と言うより、気付いちまったのか?靜香があの会場にいるって事に。」
「えええ~~~っ…そ、それってえ~~~」
「だから―――なのでしょうか、相手からの連打面白いように浴びていたのは。」
「うう~~む、考えられない事だがそう考えるしか外はあるまいな。 それにしても姉さま……恐ろしい方だ、一つの職業で稼ぎを出している者を、それを通常の動きが儘ならないまでにプレッシャーを与えていたとは。」
なるほどな―――そう言う事になるのか。 さっぱり判らん。 いやだってなあ、一般ピーポーのオレ達(オレ、吹耶、乃亜)が武道武術の心得を説かれた処で判るわけがないじゃないか。 だとしても、少なくとも靜香と玲奈と巴惠は判っていらっさるようで……だからこの後の―――
『……待っているわ、“いつも”の処で。』
え?なに?? 「“いつも”の処」ってどこ? て言うかオレ―――気付いちまった。 気付かなくてもいいのに気付いちまったあぁぁ~~~…
え、ウソでしょ?まさかチミたちやるの?やるんだるぉうなあぁ~~~この流れ。
いや、それ以上に気付いちゃならないのが、気付いてしまいましたようで―――
* * * * * * * * * * *
憎いあんちくしょうがあ! そうか?そうか!そう言う事でいいんだなぁあ!
『おいどこ向いてる―――対戦相手はこの…』
『うるさい、お前はそこで寝ていろ! 「椰子の実を割る
『あ。 あ? ああ~~~っとお!? なんとデストロイヤー・レイナ、今までの苦戦・防戦一方がまるで嘘の様に、鮮やかなクリーン・ヒット一発で相手をリングの上に沈めてしまったあ~!』
『なんと言うか…演出??なのでしょうか。 それにしても相手のガードごとブチ抜く威力。 これで当分はレイナ王朝も安泰と言った処のようですね。』
なんて好き勝手な事を―――あなた達の総評に関わらず、彼女は己の道を邁進するでしょうね。 それに―――…
『う・ふ・ふ・ふ・ふ、新たな愉しみも増えてきたというもの。 確かにあなたは強い、ええこれまでの人類の歴史上を見ても類稀なる強さを誇れる者。
でぇすがしかし―――今回判ったように「少々」……本当に、大海に浮かぶ1cm四方の発泡スチロール如きですが、精神の弱さが垣間見れる。
だから普段では見せないあんな表情を特等席で見れた…それに、これを機に最後と思いましたが、あなたのああ言った……苦悶に充ちた表情を見れると言うなら、また足繁く通って差し上げるわ?』
「(え、え、えええ~~~っとお?)あ―――あ、あのおぉ~~ねえ?」
「なんだか靜香の心の声、駄々洩れねえ。」
「(あ゛~~~)ひょっとしてあれですか?本来なら自分の内に秘めておかなくてはならないのに、感情が昂った余りについ口から吐いて出ちゃった……って言う。」
「そうだな……それにしても姉さま、今日を限りにデストロイヤー・レイナのフアンを辞めるつもりだったとは……」
「(ん?)てことは、今の声に出ちゃった心の声―――って……」
「辞める気なくなっちゃった?またなんで」
「なんだか……判りたくもないような事ですが、あの人達の今回の一連の動向を見て行くと、より混沌になった可能性が大ですね。」
「それ……ってどう言う事?乃亜……」(恐る恐る)
「まあ……短期的に考えられる事と言えば。 「“いつも”の処で待っている」―――これはあちらの世界での「場外乱闘」が予測される……が、なんだろう、実の妹である私でも今の姉さまの感情は読み切れん。」
まあ……そう言う事だろう。 こういう関係(主にオタク関連)に疎い連中は『こう言う事』なのかもしれない。 けれどオレはこいつらよりは多くの『そう言うモノ』を目にしてきた。
つまりこれ、あれだ―――『ツンデレ同士の百合百合関係』??
ま……まあ~~一党内に於いて、この二人のラインに関係性が構築されれば、オレ達は今まで以上に強力になれる。 それが今までは2人が独立しての指示を出していた事もあり、前線で混乱を招いてしまった事すらあったのだ。(まあ……それからと言うものはイザナミが控えていたみたいなのだが)
それはそれとして、『場外乱闘』の方はどうやら事なきを得たみたいなのだが。
この先オレ、この2人にどう声かけていいか、わあぁぁ~~からあぁぁ~~~んぞおぉぉほほほほ~~~い!!
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