第18話 ここにこねここねこねこのここここここねこ

今、私と吹耶は『ある秘密の行動』を取っている。 そして今は「中間試験」の最中さなか―――いくら規律には厳しい『怜悧の風紀委員長』と言えど、この部屋(風紀委員室)には来ないモノだろう…

「うふふふふっ、かわいぃ~~もふもふしてるぅ。」

「ああ、なんだか“ほっこり”するよなあ。」

「ごめんなさいね、巴惠さん。 いくら妹のあなたでもバレてしまえば、何もないでは済まされないのに。」

「その事は気にしなくていい。 私もこの子猫を見つけた時、どうやったら保護できるだろうと色々考えを巡らせていたのだが、終ぞいい考えは出てこなくてな。」

「靜香さん、厳しそうだもんね~~~」

「私も姉さまとよく話し合えればいいのだが、姉さまはアレで中々頑固者だからなあ。」

私がこの可愛くて可愛そうな子猫ちゃんを一時的に保護してた処を巴惠さんに見られてしまった時、『オワタ』―――そう思いました。

だって巴惠さんたら、靜香さんと姉妹なんですものぉぉ~~。 な、ものだから、すぐにでもチクられ発覚するものだと思ってしまっていたのだ。

しかし、彼女は密告するどころか私への協力をしてくれたのである。

それに…よくよく考えればーーー巴惠さん(イザナギ)って、私達の世界でもそうだったのよね。

ほら、小さい子とかに寛容な態度―――もしかするとこの人……?


けれど、そこではある特定の個人に対しての悪口は厳禁―――なぜならば…


「私が―――何だと?」

「ひいいっ?!(口から心臓)

ね、ね、ね……姉さ―――ま?」

「私が、何だって? ねえ……巴惠、言ってご覧なさいな。」

「あああああああのね?靜香さん……これにはちょっと―――」

「シェラフィーヤ様は黙って。」

「はぃ。」

私達の『秘密の行動』など、とっくに姉さまにバレていたのだああ~~~!! し、しかも悪態を吐いてしまった事も、余すことなく聞かれてしまっているうう~~~?

「あ……あの、っ―――姉さま、これにはわけがぁ~~~」


日頃は『それがしよりも強い敵をもっと寄越せぇぇ~』などと、少しばかり『イタイ』発言をする彼女も、根っこの処では乙女みたいねぇ。

あの雨が降りしきる日のこの子の様に、“ぷるぷる”と震えちゃって……。 しかし、実の姉妹とは言え、容赦ないわねえ。 と言った処でこの子の保護する場所どうしよう。


         * * * * * * * * * * *

私達2人が起こしていた『秘密の行動』は立ち処にバレちゃいました―――が、何分試験中と言う事もあり、その日残っていた試験を総て消化した上で、私と巴惠さんは風紀委員室に呼び出されていました。


「それ…で、2人してなにを“こそこそ”と―――まあその事はすぐに分かりましたが。」

「(あ゛~~)無断でこの部屋を使用してしまった事はお詫びします。 けど―――」

「姉さまや父上様は、私がいくら説いた処で納得や許可はしてくれませんでしたでしょう。」

「相談をしもしないで、どうしてそんな事が判るのだと?」

「だって、今までそうだったじゃないですか! あれはまだ私が幼少の頃、今の状況と同じ様に捨てられていた子犬を連れ帰った時、あなた方2人は激しく反対したではないですか!!」

「確かに、その事は事実―――ですが、私が反対したのは、そもそも理由が違います。」

「…は?『理由』―――ですと??」

「お父上様は『動物のアレルギーがあるから』とだけ申しておきましょう……が、私が反対した理由―――それは、あの頃の私やあなたでは、あの子犬の面倒を見切れていたかどうか。 そこです。」

「み、見れましたとも!」

「あら?私はそうは思いませんでしたが?」

「えっ……」

「ならば、一つ問いましょう。 あの頃の私達が小学校へ行っていた時に、あの子犬の世話は誰が? しかも遊びたい盛りの年頃の時機に、ならばあの子犬の世話は誰が?? 動物アレルギーのあるお父上様しかいないのでは。」


あっらあ~~~これは旗色が悪いわ。 悪いってもんじゃないわ。 だって靜香さんの言ってることは『正論』だもの。

とは言えそう言う事だったのね、巴惠さん以前そう言う事があったんだ。

それに彼女と長く(とは言え私達の世界限定ですけど)付き合ってきたと言う事もあり、巴惠さん(イザナギ)の事は判ってきたつもりだ。

この人は―――あれだ、「可愛い物好き」なんだ。 だから『幼女』となってしまった私や、『幼女』のアラクネであるラニーニャちゃん、そして『幼女』の――――

…あれ?なんだか肝心なお人の事を、忘れている様な??(ぐるりん☆)


「ふみぃ?」


な……なんっ、なの、かしら?この『既視感』―――と言うより、緊迫感マシマシのこの部屋で、態度が『よゆーぶってる』って思えるのは私だけ??

すると、靜香や巴惠が言い争っている中でも、その子猫は段ボールから飛び出し、勢いよく『ある場所』を目指したのだ。


「それは判りました―――がっっ?」

「ふみぃ~♪」

「あら、元気なようじゃない。 それにしても巴惠―――あなたに凄く懐いているように見えるのだけれど?」

「えっ?あっ、いや……おおおーーーよしよし。」


その『ある場所』とは、『巴惠の膝上』……すると暫くもしないうちに、その子猫は“すやすや”と―――眠ってしまったあ??

な……なんだかこれと似たような光景を、見た事があるわねえ……。

しかし、気持ちよさげに眠っている愛くるしい小動物を起こすわけにも行かず、彼女達姉妹は寝た子を起こさないよう自分達の家に連れて帰るのだった。


         ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ふぅぅぅ~~~む、久々に堪能してしまった―――やはり寝心地は最高だのう、『高反発』とやらは。

それにしてもしかし、あやつめが姿を見せなくなったから、さぞやこちらの世界で迷惑かけていないものかと思い見に来てみたら…上手くやっているようでなによりだな。


        * * * * * * * * * * *

そして試験は滞りなく終わり―――それからの事を話し合う為オレ達は、靜香の管轄である『風紀委員室』へと来たのだが……

え?なんんんんーーーーで「この人」がいるのお?


「おう、試験とやらは済んだようだな。」

「(ん゛~~~)それよりですねえ?なんぜしてミリアムちゃまがこんな処にぃ?」

「いやなに、些細な事だ。 ヤラカシのシェラフィーヤが、またなんぞか迷惑をかけておらなんだか……とな。」

「え゛、ちょと待って下さいよ、ミリアム様ぁ。 い、いま私の事を「ヤラカシのシェラフィーヤ」とお??」

「うん?なんぞか間違った事でも言ったかな?」

「(い゛っ…)いいえーーーどこも…と言うより、私を『監視』ぃ? なぜなんですか、どおぉおーーーしてなんですか、いつからなんですかっっ!」

「『なぜどうして』と言うのは判り切った事であろう。 お前は先般の『デスペラード』の1体サバティーニを討伐してから後、我等の前に姿を見せなくなった。」


うむむむむん、やはりこのおこばあちゃまの目は欺けられなかったか。 すでにあの時に起こった事を怪しんで対策を講じていたとは…だが、そこは先読み済みだ。

こぉおーーー言うこともあるぉーーーかと! 実にタイミングよく(?)『中間試験』があった事に、オレはひたすら感謝の念を惜しまなかったのだああ!


しかしね―――? 『もう一つ』のがちょっと……


「そして『いつから』と言うのは―――ほれ、あそこにあるだ。」

「あれ……つて、段ボールぅ?! て、事は!!」

「あ、あの子猫が『リッチー』たるミリアム様となあ??」


そ……そう言えば! あの子猫も『みぃ』だとか『ふみぃ』って言ってたわよねえ?? て事はあの『既視感』って、こう言う事だったのぉおお~~~?!

な、なんてこと……!わ、私ったら迂闊さんだったわ、そんな事も判らなかったなんて!!


「(……)で、何か判った事でもあるんすかあ?」

「ああ……まあ、我等が危惧していた事は幸いにして起こらなかったみたいだ。

いやはやそれにしても一時はどうなることかと思っていたぞ。 シェラフィーヤやそこの肉い……お嬢さんに接触するまで雨に打たれておったからなあ。 まあ、そこの処は感謝するとともに余り悪くは言わんでおくとしよう。」

そこでなんとか、こいつに対しての疑念は晴れたようだった―――が、あの子猫がおこばあちゃまだったってこと、判らなかったもんだかなあ。

けれどまあ、このお人の今の言質のおかげでひとまずは安心だな。 こいつが得た新たな権能の危険性は限られた中で共有するのが一番。

そのとっかかりがおこばあちゃまで本当に良かった……。



……

…………

……………………

…………………………………………



あれ?なんか今盛大なフラグが立ったような?

どこだ……?そして一体何なんだ?『立ったフラグ』―――って!!


        * * * * * * * * * * *

ある日―――私は―――誰もいない教室で、ひとり残されていた……

「世良―――お前全教科『追試』な」

な、な、なんでえええ~~~! 私、この日の為にいっぱい、いっぱいお勉強してきたのよお? それがどおぉぉおーーーしてえ?


        ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なに?シェラフィーヤはまだ来れんと?」

「は・あ……それが、全教科で「赤点」取りまくったみたいでして……。」

「なぬ。」

「ねえミリアムちゃま、ちょっと聞きたいんですけど? あいつバカだバカだ……とは言え、魔王まで務めたことですし? それに魔法(みたい)なの扱えるから、ちっとは知力ある(つまりは賢い)もんだと思ってたんですけどぉお?」

「う……うぅ~~~んむ、そうは言ってもだなあ……。」

「ねええちょっと、目ェ逸らさんでこっち見て下さいよぉお! なんであいつあんなにおバカなんです?もうオレ……面倒見切れねえ~~~。」

「(う゛)判る……判る、と言ってやりたい処なのだが―――」

「あいつが盛大にヤラカシたお蔭で、誰も相手にしてくれなくなったんでしょ? 現にあいつの幼馴染だっつうエレンも居留守使いまくりやがるし……それにウインスレットさんですっけ? あいつの代わりにエルフの魔王やってくれてるの。 あの人にも相談持ち掛けても、結局回答は梨の飛礫ですし……ねえちょっとあんたら、『厄ネタ(シェラフィーヤね)』オレに押し付けて『ヤレヤレ清々した』っておもってねえか?」

「ま……まあ~~あやつにかけられた嫌疑は我の方からもよろしく言っておくとしよう。 それで良いか。」


         * * * * * * * * * * *

これで、今回の一大事は「落着」―――になったものだと思っていたのだったが。 現実としてはそう甘くはなかったようだ。

確かにシェラフィーヤは、今回全教科で赤点を取りまくったお蔭で『(全教科)追試』と言う、ある意味で超難解なクエストに挑んだのだったが……


その後日―――


「ああ、安倍、いい処にいた。 ちょっとこっち来い。」

「は?なんすか、オレ何も……」

「まあ取り敢えずだな、これ(今回のシェラフィーヤの追試結果)見てくれ……」

「……は?なんすか―――これ。 全問正解???」

「で……これ(前回の中間試験の結果)なんだが―――」

「全問不正解……つぅーより、解答が一段ずつズレてる???」

「私も長年教師務めてきたが、きょうびの話しこんな漫画のオチのような事をするヤツ初めて見たぞ? なんなんだ世良は一体―――」


ここで一つよい子の皆に解説をせねばなるまい。 まあとどのつまり、オレ達が通う高校の『定期試験』は、『記述式』ではなく『マークシート式』なのだ。

そして『追試』もその方式にならい行われたものだったが、今回の前回の結果の乖離かいりの激しさに担任教師(女性)も頭を抱えるしかなかったようだ。

しかも、なんでまたオレ―――つうか、一応学校側にはオレと同じアパートに下宿している(何も同居とは言っていない)と説明しているので、あのおバカの『保護者』と見られてしまったみたいだな。


全くなんと言っていいのやら、何だか今にして『リッチー』や『サンダルフォン』、『ヤハウェ』や『オプスキュリテ』がオレに丸投げしたのか……判って来たぞ。


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