第58話 その「笑み」には、ご用心
「そうでしたわ? シェラフィーヤ、あなたの希望が叶えられたと言う事は、わたくし達はいつわたくし達の世界へと戻してくれると言うのです??」
「あああぁぁぁ……うん、そうよね、そうよ……。 本来ならもうちょっと時間がかかるモノと思っちゃっていたんだけど、アルティシアさんのお蔭で何だか良く判んない内に氏族達も一つにまとまっちゃって……。
それに、そぉぉぉーーーよ、何で肝心な時に『メタトロン』は現れてくれないの?なんだったら彼女の妹さんである『サンダルフォン』でも構わないわ? だってそうでしょう?そもそもは『サンダルフォン』が私のアベルに依頼したのが始まりだったんだから。」
なんーーーでこいつは半ギレ状態になっちゃってるんだ?第一、そもそものお前の目的は叶えられたんだ。 だったんならもうちょっと嬉しそうな表情したって構わないと思うんだが。
それになあーーーそう言う表現もあんまり頂けないと思うんだわ。 だって“アレ”だぞ?「幼女魔王」が今言ったセリフなん……て?
そう―――「幼女魔王」がそぉんな事を言っちゃったりするもんだから、「フラグ」が立っちゃったのです。
* * * * * * * * * *
「ならば―――この私がその責任を取りましょう。」
… …… ………… ……………………
うえええ~~~っ??わ、私ったら怒りに
私は、クローディアさんからの当然とも思える追及・質問に窮したが余りに、責任の転嫁を『サンダルフォン』や『メタトロン』に擦り付けようとしていました。
そうしたら、そのお二方ではなく―――その場に突然凄まじい光と共に顕れてきた、『秩序』側の象徴であり、権威……
「うひひぃぃ~~っ?!ヤ、ヤ、ヤ『ヤハウェ』様ぁ~~?」
「はぁい。」(にっこり)
この時ばかりオレは、「
それというのも、先日の“闇”の顕現も然ることながら……の同等の存在の顕現に、さすがに「詰んだ」と思ったからである。
しかもその“お顔”、「にこやかな」相好を崩さない―――って処が、こうした存在の恐ろしい所なんだよなあぁ~~。
し・か・も・ダ・ヨ!なぁんで「
「あのぉ~ええ~と、どちら様なんでしょう?」
「なんてことを言うの?アベル!! このお方こそはね、『秩序』側を代表するエンジェルの魔王『ヤハウェ』たるマグダラエル様なのよ!!?」
「お前が何にキレてんだか判んないんだが……オレ達そもそもこの世界の者じゃないんだし? そんな『ヤハウェ』だのと言われても……なあ?」
こーーー言う時は、「知らない」「知らなさそうな」フリをするのに限る! てかうん……オレやオレの仲間達は満更知らないってワケじゃない。
そもそもが『メタトロン』や『サンダルフォン』なる名を名乗っている時点で、とある宗教の天使様方ご一行だと思わなければならない。
しかも……『ヤハウェ』だ、と!? 「厨二病」や「ロールプレイ」でなければ『神に最も近しい者』と言う存在だ。
こう言う人を怒らしてしまっては後々の為にならない……後々の為にならない―――の、だが。
「あらあらうふふ、何とも愉快な人達なのでしょうね―――シェラフィーヤ……。」
「ふひっ?!うえへへへ……そ―――マグダラエル様が仰られるとほりで……」
なんーーーだか、こいつの怯え様がハンパないんだが? いやその前に……もしかしてオレ達(「幼女魔王」を含む)、地雷踏み抜いちゃってた??
* * * * * * * * * *
―――と、そうは言っても、『ヤハウェ』が直接オレ達を訪ねた理由はまだ明らかにはされていない。
そこでオレは、『ヤハウェ』の目的を知る為に、渉外には定評があるイザナミにおもてなしをさせたのだが―――
「さあーて、そろそろ落ち着いた処で本来の目的を聞かせて貰おうか。」
「ばばばばば……バカバカっ!何でそんな馴れ馴れしい態度を取れちゃうの? このお方はねぇ……」(おろおろ)
「シェラフィーヤ。」(にこぉ)
うん、今のやり取りで判った……
こいつ、ちょぉおーーーコエエエエーーー!
オレはその当初から『ヤハウェ』に対しては、自分でも判るくらいに無礼と言うものを働いていた。 それもまた、オレが働いた無礼の
まあこの事は事前に「幼女魔王」には伝えてはいない(と言うよりそんな時間なんざあるわけがない。)―――だから、今の「幼女魔王」の
な・の・だ・としても―――またもやの「相好を崩さない笑み」……俗説的には、優しい人ほど怒らせると怖いと言うのはあるが……
『ヤハウェ』さんよ……あんた、笑顔のその裏側では、相当に怒ってんなぁ??
だってなぁ……蛇のひと睨み―――とでも言うべきか、『ヤハウェ』からの
「今回私があなた方を訪れた理由……こそは、私があなたをこの世界に召喚した事情を須らく達成してくれた―――その事の感謝の言葉を述べるのと同時に、エリアエルとの契約の際に交わされた褒賞を与える為に……です。」
おおおーーーそれって、『サンダルフォン』との約束で、『言われた事を達成してくれたら元の世界に戻してもらえる』だったよなあ?
なんだなんだ、驚かせやがって、そう言う事ならオレ達は大歓迎だぜ―――
そう思っていたのだが、ふと隣を向いてみるとあいつが……「幼女魔王」が、“ぼろぼろ”と涙を零していた。
「え?『褒賞を与える為』―――? そ……その『褒賞』って、何なのですか?『ヤハウェ』……」
「この方達は、勿論この世界の住人ではありません。 なのにこの世界に「いる」と言うのは、私の「ある悩み」から召喚したからに外なりません。
この私の「ある悩み」とは、
そうなれば それ が時流となり―――シェラフィーヤ……あなたが望んでいた『争う事のない平和な世の中』が実現できる……そうは思いませんか。」
嗚呼……その通りだ―――
それによって、恐らくは短い期間だろうがこの世界は平和になるだろう。
だけど……だけど……私はこんなことは望んでいない―――まだ私の気持ちが整っていないうちでの、こうした別れ方は……
「シェラフィーヤ?」
「全く……その通りです―――ですが、私は認めたくはありません!」
「シェラフィーヤ、またあなたは何の気の迷いを。」(にこにこ)
「『気の迷い』……ええそうですよね、そう見えてしまいますよね。 だから、こんなにも不安定なのだから、これまで私が心の拠り所としているのがいなくなったら、まだ不安定になる自信はありますよ、私……。」
「シェラフィーヤ―――」(
「
ふわぁああ!私ったらなんて事を!! いやけど判ってる……判ってるのよ?今の私ったら、
「やはり―――ですが、 こう なってしまいましたか。 こう ならないよう細心の注意は払っていたものでしたがね。」(ほう…)
「「は?」」
「ええーーーっと、あのーーーなぁに言っちゃってるんです?」
「今回の「あなた」でも判る様に、私達は私達のやり方に行き詰りを感じた時に、異界から「召喚」を行う事があります。 そして私の言う「異界」とは、この私達の世界とは「異なる」……つまりはアベル殿、あなた方の世界だけではないと言う事でもあるのです。 まあそれは良しとしましょう……実はこの「召喚」にはある一つの懸念があるのです。」
「……それ―――って、まさかぁ……?」(ヒクッ)
「はい―――ある一定以上の“絆”を深めさせてしまえば、そこで“情”に
実はオレ、その事に少しばかり気付いちゃっていましたあ~~~。
いや、だってなあーーーこいつ、少しばかり前からオレの事を『私のアベル』なんちゅー呼び方してるだろぉ? その事にさ、イザナミやクローディアが大人しくしているワケなんかないだろうが!
だからオレとしては、これ以上
それにーーーなんて言うか……懐かれている気はしていなくもなかったが……最近はより一層オレへの依存が強くなった感は否めなくありませんでした。
すると、どうしたことでしょおーーーこの「
可愛いじゃねえかチクショーーーー!て、何だノエル……その眼は!お前のお兄ちゃんは『
「とは言えまあ……いくら情に
ロリ・コンに
え?ナニイマノコノヒトノなんとも形容のし難い「笑み」……
その「笑み」を見せられたオレは、また別の“
こんのやろぉ~~~と言う憎しみにも似た感情が湧き上がりつつある中、もしかするとこの『ヤハウェ』ってこうなることが織り込み済みでオレを「召喚」したってぇのか??
ヤヴァい―――こいつこそはヤヴァいのだと気付かされた時には、もう何もかもが手遅れだったのだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます