14
「僕のため?」と小唄は言った。「そう。君のためさ」と古代魚は言った。古代魚はこほん、と小さな咳払いをした。そして今までのような明るい表情ではなくて、とても真剣な表情になって小唄を見た。
「いいかい。よく聞いて。君はこれからこの暗い海の中で一人ぼっちになるのが嫌だって言ったね」
「うん」と小唄は古代魚に相槌を打った。
「確かに僕がいなくなれば君はこの海の底で一人ぼっちになる。一時的にね」「一時的?」「そう一時的」一時的、と小唄はその言葉を頭の中で繰り返した。
「迎えが来るんだ。君を迎えに一人の『女性』がこの場所にやってくる。その女性はとても知的で清潔で美しい姿をしたとても魅力的な女性のはずだ。でも、君はその女性の誘いに乗ってはいけない。その人について行ってはだめなんだ。その女性の提案を君は断る必要がある。これはある意味、君の運命なんだ。なぜなら君はきっと、僕に出会ってこの話を事前に聞いていなければ、その女性の誘いを断るということはしなかったはずなんだからね。だからこれは奇跡でもなんでもない。当たり前の話なんだ。君は自信を持ってその女性の提案を断るべきだ。それが君のやるべきこと。君の本当に進むべき道の先なんだよ。僕の言っていること、理解してくれるね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます