7
「あの、……えっと、魚さん」と小唄は言った。「古代魚でいいよ」と古代魚は(まるで小唄の考えていたことが最初から、わかっていたように)言った。小唄は少し迷ってから「あの、古代魚くん」と小唄は言った。「古代魚」と古代魚は言った。
小唄は仕方なく「……古代魚」といい直した。「なんだい?」と古代魚は言った。
「ここはどこなの?」と小唄は言った。すると古代魚は声を立てて笑った。古代魚に笑われて、小唄は少しだけ顔を赤くした。
「きみはここがどこだか知らないまま、この場所にやってきたのかい?」と古代魚は言った。小唄はそうだと古代魚に答えた。「ふーん。きみはとても変わっているね」と古代魚は言った。そんなことを古代魚に言われて、小唄はむっとして、古代魚のことが少しだけ嫌いになった。
小唄は顔を上げると、くるりとその場で体の向きを変えて、古代魚のいる場所から反対の方向に歩き出した。「あ、もしかして怒ったのかい?」と古代魚は言った。小唄は古代魚のことを無視したまま歩き続けた。
しかし、歩いても歩いてもなにもなかった。小唄はだんだんと不安になった。そこでふと立ち止まって、ちらっと後ろを振り向くと、もう先ほどの場所に古代魚の姿はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます