第223話 嘘はバレるもの
「いやだなあ、別に忘れてたわけじゃねえよ⋯⋯なあヒイロ」
ちくしょう! グレイの野郎こっちに爆弾をパスしてきやがった!
「もちろんだ。3人のことを忘れたことなんて一時もない」
「その割にはこの可愛い達と楽しそうにしてたよね」
「そ、そんなことはないぞ」
リアナから的確な指摘が入り、思わず否定してしまった。
「えっ? 私達とお話することは楽しくなかったの? それにこの人達は誰ですか?」
ジニーさんが疑わしい目をしており、そしてウェンディさんはいきなり登場した3人が怖いのかオドオドしている。
「わ、私はヒイロちゃんの幼なじみだよ⋯⋯今は」
リアナ⋯⋯今はってなんだよ?
「私はヒイロくんの奴隷です」
「「ど、奴隷⁉️」」
ルーナの奴、そんなこと言わなくても⋯⋯ジニーさんとウェンディさんが訝しむ目で俺の方を見てくる。
「いや違うんだ!」
「何も違わないよねヒイロちゃん」
「ルーナさんは事実を言ってるだけですよ」
俺の言葉を即時に否定するリアナとティア。
「それで貴女は?」
ジニーさんはティアに向けて話しかける。
ま、まさかメルビアの姫とか言うわけじゃないよな。
「私はお兄ちゃんの妻(予定)です」
「「「「えっ⁉️」」」」
ティアの言葉にジニーさん達はおろか、リアナ達も驚いている。もちろん俺もだ。
「ちょ、ちょっとティアちゃん⁉️ 何を言ってるのかな、かな」
「もしかしたら両国の姫と比べられて、精神が錯乱してしまったのでしょうか」
しかし問い詰められた当の本人は涼しげな顔をしている。それにしてもルーナの突っ込みが何気にひどい。
「リアナさん、ルーナさん少しよろしいでしょうか?」
しかしティアはそんなことは気にせず、2人を近くに呼び寄せ何かを話し始めたが、ここからではよく聞こえない。
ティアside
「御二人共私に話しを合わせて下さい」
「いやだよ⋯⋯そんなティアちゃんに都合が良いことは認められないよ」
「そうです。嘘はいけません」
リアナさんとルーナさんが断ってくることは予想通り。ですので私は御2人に都合が悪い話題を提供する。
「このままだとお兄ちゃんはまたフラグを立ててしまいますよ?」
「「えっ⁉️」」
「今までの旅を思い出して下さい。ヒイロさんと出会った女性達はどうなりましたか?」
2人は頭の中で、ヒイロとの旅を思い出す。
「そういうティアちゃんもヒイロちゃんとのフラグを立てた1人だけどね」
「と、とりあえずそれは置いといて」
リアナさんの突っ込みに私は苦笑いを浮かべる。
「ほとんどの方がヒイロくんを好きになっています」
「そうです。このままですとあの2人もそうなる可能性がありますよ」
「そ、そうだね⋯⋯ティアちゃんの言うとおりだよ」
「これ以上ライバルを増やして欲しくありません」
好きな人が他の人にも好かれるのは誇らしいけど、お兄ちゃんはその度を越しているから達が悪いです。しかも本人はその自覚がない。
「妻帯者だと分かればあの御2人とのフラグが立つ可能性は低くなります」
それに私は一応お母様の許可は得ていますから⋯⋯お父様はまだですけど。
「ここは協力してこの場を乗り切りましょう」
「その作戦はあまり好きじゃないけど、協力するよ」
「私も承知しました」
こうして私の提案を2人は受け入れてくれることとなった。
ヒイロside
「さあ早く宿に戻りますよ⋯⋯あなた」
いつ俺達は結婚した⁉️ シズリアの入口でロリコン言われて、ルーナが口にしたように、本当に頭がおかしくなったのか⁉️
「いやいや何を言ってるんだティアは」
「そうだぜティアちゃん! 2人は別に⋯⋯」
「グレイくん何か言ったかな、かな」
「少し黙って頂いてもよろしいでしょうか」
リアナとルーナから発せられるプレッシャーに、俺とグレイは思わず言葉が詰まる。
「それでは宿に帰りますけど異存はありませんね?」
ティアの言葉に俺達は頷くことしか出来ない。そして俺とグレイはリアナに首根っこを掴まれ、この場から立ち去る。
「な、何だったんだろうね」
「お、お礼⋯⋯できませんでした」
ジニーとウェンディは、三人の行動に呆然とすることしか出来なかった。
「さて⋯⋯お兄ちゃん達、どういうことか説明して下さいね」
ティアが怒気を含んだ声で、俺達を問いただしてくる。
「そうだよ⋯⋯理由によっては許さないかな、かな」
「それより何だよ妻って!」
ここは話題を変える作戦でいこう。
「あ、あれは別に⋯⋯お兄ちゃんが護衛の仕事を投げ出したからイタズラしただけです!」
「話を誤魔化さないで下さいねヒイロくん」
ちっ! 話題転換は無理か!
「いや、外に出たらあの娘達が男に襲われていたんだ! それで俺達が助けて流れでお茶を飲むことになった。そ、そうだよな? ヒイロ」
「そ、そうそう。もし疑うなら調べてもいいぞ。目撃者はたくさんいたからな」
嘘は言ってない⋯⋯嘘は言ってないぞ。
「そうだったんだ⋯⋯てっきりヒイロちゃんとグレイくんは、ナンパしに外へ行ったのかと思ったよ」
す、するどい⋯⋯さすが幼なじみだ。
「お兄ちゃん達ごめんなさい。私もそう思ってました」
「ご主人様を信じられないなんて奴隷失格ですね⋯⋯申し訳ありません」
3人共頭を下げてきて申し訳ない気持ちになるが、今更本当のことを言う訳にはいかない。このまま嘘を真実として貫いていこう。
「いやいや頭を上げてくれ。誰にも間違いはあるから俺達は気にしてないぜ」
どうやらグレイも俺と同じ考えで、ナンパしていたことは秘密にする方向で行くみたいだ。
これで一件落着かと安堵したが、思わぬところから俺達の嘘がバレることとなった。
「あら? あなた達ナンパが成功して良かったわね」
「私達も結婚してなければ、お茶くらいしたかもね」
そう言って、さっきグレイがナンパした人妻2人と旦那さんと思わしき人達がこの場を去っていた。
「さて護衛の任務を確実に遂行するために、周囲に何があるか把握しないとな」
「時間は有限だぜ。早く行くぞ」
俺とグレイはリアナ達に背を向けて逃げ出そうとする。
しかし、回り込まれてしまった。
「ヒイロちゃん⋯⋯どういうことか詳しく話してくれないかな、かな」
「まさか先程口にしたことは嘘ですか?」
「お兄ちゃん達は護衛をせず、ナンパしてたんだね」
「「ヒ、ヒイッ!」」
俺とグレイは、3人が放つ殺気に恐怖し、おもわず悲鳴を上げてしまう。
「ち、違うんだ! ヒイロがどうしてもルーンフォレストとアルスバーンの姫が見たいと言って⋯⋯俺は無理矢理付き合わされたんだ!」
「グレイてめえ! うそつくんじゃねえ! 0.01%しかなくても、姫達に会える可能性があるならそれにかけてみたいとかお前が言ったんだろ!」
こいつは自分が助かるために、また俺を売りやがった!
「ごめんなさいね。私は両国の姫と違ってチンチクリンで」
「いや、それはそれでマニア受けするから安心していいぜ」
「ば、ばかグレイ! お前は何を!」
「げっ! おもわず本当のことを!」
そんなことを言ったらティアの怒りの炎に油を注ぐだけじゃないか!
「ふふ⋯⋯ふふふ⋯⋯」
何故だかティアが笑い始めた。もしかしたら怒ってないのか?
「クロ! 殺ってしまいなさい!」
「キューッ!」
一縷の望みに託して、ティアの怒りが収まったことを期待したかったがそうはいかなかった。そしてクロが、ホワイトラビットさえ一撃で倒す炎を俺とグレイに放ってくる。
「「ギャーッ!」」
俺とグレイはクロの炎をかわすことができず、黒焦げになりその場に倒れるのであった。
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