第7章 Get kicked out

第126話 まさかの依頼内容⁉️

 俺は今、指名依頼をした王族と待ち合わせをするため、冒険者学校の応接室にいる。


 正直な話、ルーナを奴隷にした件があるため、目立つような行動はしたくなかったのだが、からの依頼を断るわけにはいかない。


 コンコン


 ドアがノックされると俺は立って出迎える。


「入りますよ」


 声が聞こえてきたと同時にドアが開き、三人の人物が部屋に入ってくる。


「こんにちは、ヒイロさん⋯⋯その節はお世話になりました」

「いえいえ、ティアリーズ王女のお役に立てたなら光栄です」


 ティアが猫かぶりモードで現れた。

 後方には護衛のトーマスさんとネネ先生が控えている。


 俺は跪こうと、身体を屈めようとするが、ティアが制止した。


「そのままでけっこうです」


 俺はティアの言葉に従って、椅子に座ったままの体勢を維持するとティアとネネ先生も席に着く。


「この度は依頼を受けて頂きありがとうございます」


 平民の俺に向かって頭を下げる様を見て、ネネ先生は驚きの表情を浮かべる。


 まあ普通はそうだよな。貴族が⋯⋯ましてや王族が平民に頭を下げるなんて前代未聞だ。


「あの~ティアリーズ王女。今さらですがヒイロくんでよろしのでしょうか?」


 先生の言いたいこともわかる。冒険者学校の一年生、しかもFクラス⋯⋯そんな奴が王族の依頼を受けるなんて⋯⋯。


「私の見立てが間違っていると?」


 ティアが少しムッとして顔で先生に反論をする。


「い、いえ⋯⋯王女の慧眼に驚いているのです」

「どういうことでしょうか」

「ヒイロくんはFクラスですけど、頭脳明晰、戦闘に関してもAクラスの生徒と比べても抜きん出た実力の持ち主です」


 ティアへのお世辞も入っているかもしれないが、先生から褒められて、なんだか背中がくすぐったい。


「そのようですね」


 ティアは冷静に答えているようだが、顔がニンマリと笑顔になっている。

 どうやら俺の評価が高くて嬉しいらしい。


「王女⋯⋯ど、どうされましたか」


 先程とは表情があまりに違うため、ティアはネネ先生に指摘されてしまう。

 お姫様モードを維持するのが大変なら止めればいいのに。


「コ、コホン⋯⋯ネネとやら、何かおかしなことがありましたか」

「い、いえ⋯⋯何でもありません」


 ティアは自分がニンマリしていたことは、王女オーラを使ってなかったことにしたようだ。


「ではこれから依頼に関して、ヒイロさんと綿密な打ち合わせをするので、ネネは外へ」

「承知しました」


 ネネ先生が応接室の外へと出ていくと、ティアは「ふう」とため息をついた。


「猫かぶるのは終わりか?」

「だってせっかくお兄ちゃんと話せるのに、他人みたいなしゃべり方したくないもん」


 どうやら王女モードは終了で、ここからは妹モードのようだ。

 まあ俺としても堅苦しい話し方はノーサンキューなので大歓迎だが、隣にいるトーマスさんは頭を抱えている。


「それで依頼ってなんだ?」


 一応聞いてみたがだいたい予想はつく。おそらく護衛任務だろう。


「メルビアまでの来てほしいの」


 やっぱりな。

 ルーンフォレストまで来る途中で盗賊に襲われ、ティア達は危うく命を落とすところだった。メルビアまでの帰り道も、襲われると考えた方が自然だろう。


「護衛をする⋯⋯ということでいいか?」


 間違っていないとは思うが、念のためティアに確認をする。


「違うよ」

「えっ?」


 そんかバカな! 知性ステータスAの俺が読み違える⋯⋯だと⋯⋯。


「お母様に会ってほしいの」

「お母さんに?」


 うろ覚えだが、ティアのお母さんは確かとても綺麗で、子持ちとは思えないほど若かったような気がする。


「トーマスさん。申し訳ありませんが席を外して頂けませんか? これは王女としての命令です」

「かしこまりました」


 トーマスさんはティアに向かって頭を下げ、部屋から出ていってしまった。

 護衛隊長まで外に出す依頼内容とはどんなものだ? おそらくトップシークレットであることは間違いないだろう。


「それで? ティアのお母さんに会ってどうすればいいんだ?」


 呪いにかかっているのか、それとも大きな怪我を負っているのか、どうしてティアのお母さんに会わなければいけないのか見当がつかない。


「⋯⋯娘さんを下さいって言ってほしいの」

「えっ⁉️」


 今なんて言った? ムスメサンヲクダサイ?


「ど、ど、ど、どういうことだ! 何で俺がそんなことを言わなければならない!」

「だってお兄ちゃん私の⋯⋯王女様の裸を見たでしょ? 当然のことだよね」


 それを言われると弱い⋯⋯だけどあれは不可抗力だ。

 しかしあの時のティアの胸⋯⋯小ぶりだったけど綺麗な形をしていたな。

 もし俺が保存魔法というものが使えたら、即座に使用することだろう。


「お兄ちゃん? ま、まさか⋯⋯あの時のことを思い出してるの!」

乳乳ちちがう!」

「何ががうのよ! お兄ちゃんのエッチ! も、もう忘れて!」

 

 しかし忘れろって言う方が無理だ。

 あの時の出来事は、少なくとも生きてきた中でベストスリーに入るほど衝撃的なことだったのは間違いないから。

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