第56話 チカとサチ

「ふふ〜ん♪」

部屋に帰ったチカは上機嫌に鼻歌混じりであった。

「チカどうしたの?ってどこ行ってたの?お土産屋にいないから心配したんだよ。」

「ごめんねサチ、ちょっと用事があって♪」

「あやしい・・・チカ何処に行ってたか教えなさい。」

「えっ、だめだよ、秘密だもん。」

「秘密じゃない!」

サチはチカのワキをこちょばし自白を強要する。


「なるほど、ユウヤさんが泊まっているんだ。」

「はぁはぁ、サチのバカ。」

息も絶え絶えにサチを責める。

「ねえ、私もジャグジーに入りたい。」

「だ、だめだよ!中学生が男の人の部屋に行くなんてしちゃだめ!」

「チカ、それブーメランになってる。

私も連れて行くか、チカも行けないか選びなさい。」

サチは先生に密告するという武器を持ちチカとの交渉に挑み見事に勝利するのであった。

「うぅ、サチのばかぁ・・・」

ユウヤとの二人きりの時間を奪われたチカは怨嗟の声を上げるのであった。


「あれ?サチちゃんも来たの?」

俺が扉を開けるとそこにはチカとサチが立っている。

「はい、ジャグジーに惹かれて来てしまいました。

ダメでしたでしょうか?」

「いや、構わないよ、チカと一緒に入る?」

「はい、チカが暴走しないようにちゃんと見張っておきます。」

「サチ、暴走ってなによ!」

「ユウヤさんに裸で迫ったりしそう。」

「・・・そんなことないよぉ〜」

チカは目を逸らす。


「その間と視線が答え、お風呂に入るだけに留めなさい。」

チカの見張り役に頼もしい仲間が出来たと感じる。

「サチちゃん、これからもチカをよろしく頼むよ。」

俺とサチは固く握手を交わすのであった。


「うー、サチのイジワル、私の気持ち知ってるでしょ・・・」

「知ってるけど、中学生で子作りは早い。」

「子作りって・・・そりゃまあ、そういう事もあるけど、まずはその前の段階というか・・・」

「言い方を変えても同じ、私はチカと一緒に卒業したい。」

サチは別にユウヤと付き合う邪魔をしたい訳では無い、暴走して肉体関係を求めそうな友人を止めているだけなのだ。

「はぅ、折角のチャンスなのに・・・」

「大丈夫、ユウヤさんはちゃんと待ってくれる。それよりもっと魅力をつけるべき、こことか・・・」

サチはチカの胸をつつく。


「ちょっとサチ!」

「まだまだ子供。」

「そういうサチだって・・・ってサチ大きくなってない?」

「私は成長期、大きくもなる。」

チカはついこの前まで同じぐらいだった親友の胸が膨らんでいる事にショックを受ける。

「うらぎりもの〜〜〜!!」

チカの悲しい声が風呂場に響くのであった。

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