第35話 旅の準備

「温泉に入りたい!!」

また、おやっさんのわがままが始まる。


「おやっさん、温泉といわれても背中に絵のある倉田さんは行けませんよ。」

「ならば、倉田を置いて行く。ユウヤ説得を頼む。」

「やだよ!殺されるじゃん!」

俺は抵抗するが・・・

「任せた!」

おやっさんは逃げ出した。


俺は無理難題を押し付けられた。

そして、温泉旅行の話は既に組員に知れ渡っている。

「おっ、ユウヤさん何処に行くんですか?」

「・・・シュン、なんで俺に聞く?」

「だって、幹事はユウヤさんなんでしょ?」

「なんでそう思う?」

「おやっさんが言ってましたよ?」

「あのおっさん!!」


「おう、ユウヤ、何処の温泉に行くんだ?」

倉田が楽しそうに声をかけてくる。

「えっ、倉田さん?」

「いやぁ、ワシは温泉が久々でなぁ、楽しみにしているぞ。」

こんなに嬉しそうにしている倉田に行けないと伝えるのか・・・

殺される!

俺は命の危険を感じた。

「ま、任せてください、ただ、まだ場所が決まって無いんですよね~」

「そうか!なら、ワシは蔵王温泉に行きたいな!」

「えっ!」

「いやぁ~楽しみだ。」

言うだけ言って倉田は去っていった。


そして、俺には難題が残されたのである・・・


「なぁ、チカちゃん、どうすれば言いと思う?」

「なんで、私に聞くかなぁ?」

「だってさ、倉田さんに参加を断るのはチカに頼みたいし。」

「イヤだよ、倉田さんすごく楽しみにしてたよね、私は言えないよ~」

「あうぅ・・・仕方ない、連絡するか・・・」


俺は友人のリョウに電話をかける。

「若様、元気にしてるか?」

「誰が若様だ!」

「ゴメン、ゴメン、リョウ、少し頼みがあってね。」

「お前が頼みとは珍しいな、言ってみろよ。」

「お前源家に婿入りしてるじゃん?」

「まだしてない!」

「それでさ、蔵王温泉に別荘か、用意出来る宿ないかな?」

「聞けよ!・・・まあ、ちょっと待てよ、

アズちゃん、蔵王温泉に宿泊施設ある?えっ、ある?少し友人に貸す事ってできるかな?うん、わかった。

ユウヤ、あるって貸せるぞ。」

「貸してくれよ。」

「いいぞ、いつも世話になってるしな。好きに使えよ。」

「ありがとう!恩にきる。」

「俺とお前の仲だろ?気にするな。」


そして、電話を終え・・・

「チカちゃん、何とかなったよ。」

「ねえ、さっきの人って誰?」

「高校の同級生だよ、ちょっと、変わった奴でね、大企業の婿養子になりそうな奴なんだ、まあ、世間を騒がせるのが好きな奴だけど。」

「へぇ~」

「それより、蔵王温泉に行けるよ。」

「やったぁ~倉田さんに伝えてくるね。」

チカは嬉しそうに倉田の所にいった。


俺は・・・

何とかなったことに安堵してチカのベッドに転がり、眠るのだった。

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