第27話ホワイトデー 後編

ハジメの家を訪ねると母親らしき人が出てくる。

「な、なんですか、あなた達は!」

「夜分失礼します。あなたのお子さん、ハジメさんがうちのお嬢に送った物について話がありまして。」

「あら、じゃあ、この子が?あらあら、可愛い子じゃない、こんな所も何ですから中でお話しましょう。」

俺達は母親に案内され中に入る。

チカは恐怖からか俺の腕を掴んで離さない。


「ハジメは今塾に行ってますの、もう少ししたら帰ってきますので。少々お待ちいただけますか?」

俺は話を始める。

「いえ。本日来たのはあなたの息子さんが渡して来たものをお返しにまいりました。」

「えっ?」

「うちのお嬢が息子さんにバレンタインの義理チョコを渡したようですが、義理チョコぐらいでブランド物・・はーい。しかも、下着を送られる謂れはありませんので。」

「あなたは息子とお嬢さんの交際を認めないと言うの!」

「認めるも何もそのような事実はありません。」

チカはコクコクと頷く。

「そんなこと言って、2人の邪魔をする気ね!お嬢さん良いのよ、私は味方だからね。」

母親は優しい顔をしてチカに話しかけるが、チカにとっては話の通じない怖い存在だった。

そこに・・・

「ただいま~」

ハジメが帰ってくる。

「お母さん帰ったよ・・・ってチカさん、来てくれたの!来るなら教えておいてよ、さあ部屋に行こう!」

ハジメは手を伸ばしチカを連れていこうとするが・・・

「お前は何をしようとしてる!」

俺の制止する声と同時にシンはハジメを掴んでいた。

「な、なんだ君たちは!愛する2人を引き裂く気だな!」

「誰が愛する2人なんだ?」

「僕とチカちゃんに決まってるじゃないか!」

「どうなんですか?お嬢?」

シンの顔には少しイタズラ心が出ていた。

「私が好きなのはゆうちゃんだけなの!小川くんなんて話した記憶もないのに好きなわけないでしょ!」

「ふむ、お嬢はユウヤが好きだと。」

「もちろん・・・好きです。」

チカは発言に気付いたのか、顔を赤く染め、語尾の声は小さかった。

「だって、ユウヤ。さあ、返事は!」

「シン、遊んでるな!」

「さあ、返事をするんだ!」

「話を聞け!」

クイクイ!

チカが俺の袖を引っ張る。

「ねぇ、ゆうちゃん、返事もらえないかな?」

「ちょい、チカちゃん、今はその話は置いといて・・・」

「ゆうちゃん、私の気持ち、受け取ってもらえますか?」

チカは真剣な表情で見つめてくる。

「・・・チカちゃん、俺は」

「うがぁーーー!僕の家で僕のチカちゃんと何してるんだぁ!!!」

ハジメが騒ぎ出す。

「おっと、それどころじゃなかったな。」

「くっ!邪魔なやつめ!」

「私、小川くんの事、更に嫌いになったよ。」

「チカちゃん何を言ってるの・・・僕と付き合ってくれるんでしょ?」

「なんでよ!小川君なんてお断りです!!」

「そ、そんな・・・」

「ハジメくんだったかな?ここで退いてくれるとありがたいんだが。」

「なんで僕が退かないといけないんだ!僕とチカちゃんは結ばれて幸せになるんだよ!」

「はぁ、話が通じないか、チカちゃん、ちょっといい?」

「なに?」

俺はホッペタにキスをする。

「俺とチカちゃんはこういう関係なんだよ。」

「な、な、な、何をしてるんだよ!」

「別にこれぐらいはね、チカちゃん。」

「うん、私もするね♡」

チュッ。

チカもホッペタにキスをしてくる。

「チカちゃんなんでそんな男に!」

「私の大事な人をそんな人なんて言わないでもらえるかな?」

「そんな・・・」


そこにシンが追い込みをかける。

「そこのぼくちゃんよ、人前でキスするようなヤツがそれで止まってると思うか?」

「えっ?」

「しかも、ユウヤはもう大人だぞ?」

「そ、それって・・・」

「お前も男ならわかるだろ、しかも、ユウヤは親からも認められてるからな。2人で部屋に籠って何をしているのか・・・想像できるだろ?」

「そ、そんな、チカちゃんがそんな事・・・」

「ベッドの上じゃ、お嬢も女なんだよ。」

「・・・うわぁぁぁぁ!」

ハジメは泣きながら自室に走っていった。

「さあ、片付いたし帰るか。」

「・・・」

「えっ、えっ、ど、どうなっているの?」

混乱している母親に俺は名刺を渡す。

「もう関わる事はないと思いますが、何か文句があれば金子組、組長補佐、伊藤ユウヤの所に連絡ください。」

「えっ!」

「おい、シン帰るぞ。」

「あいよ。」

俺はチカとシンを連れて帰った。


帰り道、

「シン、あれは無いぞ、あの言い方だと俺とチカちゃんがシテルように聞こえるじゃないか!」

「いいんじゃね?どうせ時間の問題だろ?」

「良くねえよ、チカちゃんが学校で変な噂が立ったらどうするんだよ!」

「私はいいよ、それよりは噂が嘘の方がやだなぁ~」

「チカちゃん、はしたないよ!」

「ユウヤは堅すぎるんだよ、ちょっとやっちゃえばいいんだよ。」

「シン、軽く言うなよ。ねぇチカちゃん。」

「今夜は帰りたくないなぁ~♡」

「チカちゃん!どこでそんな言葉覚えてきたの!ちゃんと帰るからね。」

「ぶーぶー」

「ぶー垂れない。ほら、帰るよ。」

俺達3人バカ騒ぎしながら帰路についていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る