第10話 広島から退却
ホテルから出ると黒塗りのベンツが後をつけて来ていた。
「チカちゃん、振り切るからシートベルトしておいてね。」
「うん!」
俺は高速に入ると全速力で愛媛に向かった。
極道に似合わないが俺の車はR34GT-Rだ、それを改造によりチューンアップしてある。それを使いこなす腕もつけてあるから、ベンツぐらいに追い付かれる事はない。
わざとしまなみに回らず、瀬戸大橋から愛媛に戻る。地元まで高速に乗り続けられるこちらの方が速度を生かした逃走ができる。
その間に・・・
「チカちゃん、倉田さんに連絡をしてもらえる?」
「前田さんじゃなくていいの?」
「あの人は本家から来ているから、揉み消すか、敵になりそう。倉田さんなら絶対チカの味方だから。」
「わかった。」
チカは倉田に電話をする。
「もしもし倉田さん。」
「なんだい、チカ、ユウヤにいじめられたのかい?帰ったら折檻してやるからな。」
「ちがうよ、ゆうちゃんは私に優しいよ。それよりちょっと本家で揉めちゃって。追手から逃げてるの。」
「・・・なんだと、本家のボンクラがチカを狙うだと。」
「うん、今ゆうちゃんと逃げているんだけど、お父さん達とも連絡つかなくて。」
「あいつらなら心配ない、シンも銀次もいる、しかし、チカは大丈夫かい?ユウヤは素手で喧嘩は弱いからなぁ。」
「大丈夫だよ、でも、お家に帰って大丈夫かな?ゆうちゃんが言うには前田さんとか本家から来た人が敵になるかもとか。」
「大丈夫、ワシが纏めておく。気にせず帰っておいで。あとユウヤに伝えてくれ。チカにキズ1つつけたら死を覚悟しろと。」
「もう!ゆうちゃんはそんなことしません!」
「なんでも、いいが早く帰ってこい。」
「はーい。」
俺達は組に帰りついた。
その頃、おやっさんは。
「たいへんです。」
「なんだ?」
「ユウヤから連絡が・・・」
シンはユウヤからのメールを見た。
「なるほど、親父に会いに行くぞ、シン、銀次ついてこい。カズマは車を用意しとけ!」
「はい!」
「親父、これはどういうことですか!」
「平八郎どうした。」
「うちの婿に親父の娘が難癖つけて始末するとか、いくら何でも酷すぎませんか!家族会に組の事情は持ち込まない約束はどうなってるのですか!」
「なに?ワシは何も知らんぞ!」
「それなら、追手も間違いだと?」
「追手?何の事だ?」
「シラを切る気ですかい?うちの婿ユウヤとチカに追手をかけたそうじゃないですか。まあ、ユウヤは無事に逃げれたみたいですが、これまで組に尽くしてきた俺達にあまりにヒドイ仕打ちじゃないですか!」
「ま、まて、ホントにワシは命令しておらん。すぐに確認するから少しまて!」
ナリモトは慌てて部下に確認をとる。
「・・・たしかに、娘が命令をして、チカちゃんとその婿に追手を出したらしい。じゃが!」
「じゃが、なんですか?」
「その婿が娘に無礼を働いたと言うことだ。」
「無礼?一体アイツは何をしたんですか?」
「娘を子供扱いしたようだ。」
「はい?」
「娘はな、見た目にコンプレックスを持っておってだな、子供扱いされると怒ってしまうのだ。」
「それでユウヤとチカに追手を出したのですか?」
「ああ・・・仕方ないと思わないか?」
「馬鹿馬鹿しい!なるほど、これが本家のやり方か!俺達がどれだけ上納しても、娘を子供扱いしただけで命を狙うのか!」
「な、なにを怒っておる。こうなったからにはユウヤとか言う奴を差し出せ。チカちゃんには害が及ばんようにする。」
「親父、俺が家族を売るような人間に見えるか!もし、俺達に手を出すなら、その時は覚悟しておけ!金子組の意地を見せてやる!おい、撤収だこんなところさっさと出ていくぞ!」
「平八郎!この世界で親に逆らっていいと思っているのか!」
「盃無視って娘を優先したんだろ?お互いさまじゃねえか?まあ、勝てると思うならかかってこい!うちの覚悟をなめんじゃねえぞ!」
平八郎は激怒し、本家を後にする。
取り押さえようとした若衆はシンに瞬殺で倒され、まるで無人の野を行くように退出していった。
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