第3話ー④ 魔女が残していったもの
――その頃のキキたち。
「
「うん。僕たちの出番なんてなさそう」
「まったく……」
ため息交じりにそう呟くキキ。
広場にある木の陰でキキとほたるは出るタイミングを見計らっていた。
このままここで黙っているのも、私達らしくないですね――
「じゃあそろそろ真打登場って感じで行きますか!」
キキはほたるの方を見てそう言うと、
「まだ早くない?」
ほたるはおろおろしながらそう答えた。
「今行かないと、私達の出番もないですよ?」
「それも、そうだね」
ほたるはそう言って、小さく頷いた。
そしてキキたちは翔が暴れている広場へこっそりと近寄ったのだった――。
翔は仁王立ちで、尻もちをつく男を睨んでいた。
「おい! なんなんだよ、お前!!」
後ずさりをしながらそう言う男。
「え、僕? 言ってなかったっけ? ……僕は『エヴィル・クイーン』の関係者ってところかな?」
「は、はあ!?」
「じゃあ、選んで? 絞め殺されるのがいいか、飲み込まれるのが良いか」
満面の笑みでそう告げる翔。
「ひえええええ!!!」
「ちょっと、ちょっと翔さん? 話と違いますけどお?」
その声に振り返る翔。
「あ、キキ」
「キキ!? お、お前……施設襲撃の時にいたガキの一人じゃねえか!!」
男は震えた声でそう言って、キキに指を差した。
「え? ああ……うーん。おじさん誰ですか?」
そう言って舌をぺろりと出すキキ。
「覚えてねえのかよ!!! ってことは、もう一人のガキも――」
「うん、いる」
そう言ってひょこっとキキの後ろから姿を現すほたる。
「うわあああああ! すんませんした!! 気軽に『エヴィル・クイーン』を語って本当に本当にすんませんした!! もうこのようなことは致しません!! どうか、お許しください!!!」
男は地面に頭を擦り付けながらそう言った。
「って言っていますけど……ほたるはどうしますか?」
「嫌だ」
「ってことなんで、おじさんたちはここで消えてもらいまーす!!」
そう言ってキキは右手を空に向けた。すると、急に天気が怪しくなる。
「みんなは離れていてください」
「お許しを~」
そして雷鳴が轟き、一閃の光が男の目の前に落ちると、その男は失神したのだった。
「まあ、さすがに人を殺めるのは嫌ですからね。これに懲りたら、もう二度と『エヴィル・クイーン』は語らないことです!」
キキは男を見ながらそう言った。
そしてその光景を見ていた集会メンバーの大人たちは足がすくみ、その場から動けなくなっていた。
「ちょっとやりすぎでした?」
また舌ぺろりと出して、そう言うキキ。そして、
「すみません、何が――」
そう言いながら、立ちすくむ大人をかき分けて黒髪の青年がキキたちの方へ向かっていた。
「どうやら、『グリム』が到着したみたいですね」
その声を聞いたキキがそう言って翔たちの方を見ると、
「厄介なことになる前に、退散しよう」
翔は頷き、キキとほたるへそう告げた。
「はあい! ほたるも行きますよ」
「うん」
それからキキたちはその場を後にしたのだった。
* * *
――集会広場前。
『エヴィル・クイーン』の残党が集会をしていると『グリム』に連絡が入り、キリヤは急いでその集会が行われているという広場にやってきていた。
そしてキリヤが広場に到着すると、大勢の大人たちが同じ方向を見て、立ち止まっている不自然な光景が広がっていたのだった。
一体、何があったんだろう。もしかして新しい首謀者の登場、とかじゃないよね――
そう思いながら、キリヤは大人たちが見つめている場所へと向かった。
「すみません! 何があったんですか!! って、あれ――?」
キリヤが大人たちをかき分けて着いた場所には、失神して倒れている男性がいるだけだった。
「どうしてこんなことに……あ!」
そしてキリヤはその男に足元の一点が黒く焦げているのを見つける。
そう言えば、さっき来るときに天気が一瞬だけ悪くなっていたっけ――
「そういうことね。まったく……別に逃げなくたっていいじゃないか」
そう言いながら、やれやれといった顔をするキリヤ。
「えっと、じゃあここにいる皆さんは、これから警察の事情聴取を受けてもらいますよ。もちろん、加害者として!」
それからキリヤはその大人たちの身柄を警察に引き渡し、研究所へと戻って行ったのだった。
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