第50話ー④ おかえり
お茶会の後、織姫は2人っきりで話がしたいと奏多を自室へと連れて行った。
そして弦太も織姫についていくと言っていたが、暁が女子の生活スペースは男子禁制だと伝えると渋々諦めて食堂に残ることになった。
それから暁は食堂で弦太と2人きりになる。
暁は弦太と何を話していいかわからず、話題を探していた。
奏多の話をすればいいのか? それとも織姫のこと? どっちの話をしたって、俺と話が合うのか――。
そんなことを思いながら、頭をひねる暁。
それからしばらくして弦太がこの沈黙を破る。
「そういえば三谷さん。姉さんのことを本気でどう考えているんですか?」
「え? ど、どうって……」
神宮寺家の次期当主とはいえ、まさか中学生からそんな質問が来るなんて暁は考えもつかなかったため、驚きで言葉が詰まる。
「神宮寺家のものとして、姉の行く末は気になるのですよ」
「そ、そうか……」
まあそれもそうだよな。……もしかして、両親から俺がどんな人間かを見るように言われているのだろうか。もしそうなら、粗相のないようにしなくては――。
「奏多のことは本気だよ。これからもずっと一緒にいたいと思っている」
「それは姉をもらっていくという解釈で相違ないですか?」
「ああ。そうだ」
相手が中学生だという事を忘れて、まっすぐにその顔を見ながら答える暁。
(大の大人が中学生の自分相手にって思われるだろうか……)
そう思いながら、暁は弦太からの答えを待った。
「ふふ。それを聞いて安心しました! 姉もそのつもりで両親に話していたので、三谷さんとの思いにずれがなくてよかったです!」
弦太はそう言って微笑んだ。
その答えにホッとする暁。そして弦太の言った一言にはっとして、
「は!? 奏多がそんな話をしていたのか!?」
目を丸くしながらそう言った。
「ええ。大学を卒業したら、家を出るとかなんとか息巻いていましたね」
「俺にはそんな話、一言も……」
「まあおいおいすると思うので、僕から聞いたってことは内緒にしてくださいね、お兄さん?」
笑顔で暁にそう告げる弦太。
そうか、もし奏多と結婚なんてことになったら――
「お、お兄さんって……なんだか照れるな」
「あはは。でも慣れていってくださいね!」
「あ、はい……。でも、そういう弦太君はどうなんだ?」
「あ、僕のことは弦太でいいですよ? それで、どうというのは??」
弦太は首をかしげてそう答えた。
「ああ。えっと、織姫のことが好きなんだろうなってことはわかったんだが、どうする気なのかなって。あんなに嫌われていたんじゃ、付き合うどころが友達にだって……」
「僕と織姫はそれでいいんですよ。今はね」
そう言って微笑む弦太。
「今は?」
「はい。あの織姫を一番近くで理解して、ちゃんと受け止められる器の大きい男は僕だけですからね!」
ドヤ顔でそう告げる弦太。
「あはは! 自信満々なんだな!」
「当たり前ですよ! そうじゃなきゃ、トップ企業の跡取りじゃいられませんからね!!」
「さすがだな」
「お褒め頂き、ありがとうございます!」
そう言って弦太は笑った。
「織姫のこと、よろしくな……って俺が言う事でもないのかもしれないが」
「いえいえ。担任教師の三谷さんからそう言われたんじゃ、頼まれましたと答えるほかないですね! 三谷さんも姉さんのことを頼みましたよ?」
「おう! もちろんだ」
それから暁と弦太は時間になるまでいろんな話をして過ごしたのだった。
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