第33話ー③ 仲間
泥棒の暁たちは集まって作戦会議をしていた。
「とりあえず俺たちは人数的に不利な状況だ。固まって動けば、芋づる方式で捕まっていく可能性が高い。だからなるべく固まらず、バラバラに逃げよう!」
暁がそう言うと、マリアとしおんは頷いた。
「じゃあ、勝つぞ!」
「「おー!!」」
それから暁たち3人はそれぞれ別方向へ走っていった。
警察陣地内。まゆおたちは動き出す時を待っていた。
「今回はどうする?」
まゆおは真一に問うが、真一からまゆおに提案することはなかった。
「いつも通り、だね。わかった」
そして二人はそれ以上何も話すことはなかった。
「なんだか空気重くないですかぁ? もっと楽しみましょうよ! だってレクリエーションですよ☆」
「そうですぞ! りんりんの言う通りです!! とりあえずは楽しむことが第一です!」
「そうだね。ありがとう、二人とも」
まゆおは笑顔で二人に返した。
「そろそろ時間だよ」
そんな3人の会話に割って入るように、真一はそう告げる。
「じゃあ、サクッと逮捕しちゃいますか☆」
「おー! なのです!!」
そして警察チームは動き出した。
「そろそろか。さて。警察はどう動く……?」
暁はそんなことを思いつつ、草陰に隠れていた。
「まゆおと真一はうまくやっているだろうか」
そして暁はふと前にやったレクリエーションのことを思い出す。
チームワークはバラバラで完全に個人プレーになっていた鬼ごっこ。
今回もまゆおたちは同じチームになったわけだけど、また問題を起こさなきゃいいな――。
「まあ二人の問題だし、俺が気にしても仕方がないのだろうけど……」
そして暁は大きなため息をついた。
「先生、見つけましたよ!」
後方から声が聞こえた暁はその声の聞こえたが方を向くと、そこにはまゆおの姿があった。
「まゆお……。でも俺もそう簡単に捕まるわけにはいかないぞ!」
暁はそう言って立ち上がり、その場から走り去る。
「逃がしませんよ」
すると、まゆおは目にもとまらぬ速さで、暁の目の前に移動する。
「う、嘘だろう!?」
「直接攻撃は当たらなくても、物理的な攻撃なら先生でも!」
まゆおは竹刀に能力を込め、暁にその竹刀を振り下ろす。
速すぎるその攻撃を暁は躱すことができなかった。
「う……」
身体にあたる前にその竹刀は能力を失ったが、竹刀そのものに威力があるため、暁が受けたダメージは大きかった。
「さあ、先生。逮捕ですよ!」
まゆおに触れられる前に、暁はその手を躱す。
「俺にもプライドはあるからな。負けるわけにはいかないさ……」
そしてまゆおは再び目にもとまらぬ速さで剣技を繰り出した。
「おっと……」
暁はその攻撃を右手で防ぐ。
「!? 先生、その手……」
暁の右手は、茶色の毛に覆われていた。
「おう! 俺もたまには本気になるときだってあるさ! プライドはあるが、俺は大人げないからな!」
そして暁は右手でまゆおの竹刀を掴み、まゆおから竹刀を奪うと、その竹刀を遠くへ投げた。
「しまった!」
驚きのあまり、その場で動けなくなるまゆお。
「……無抵抗の生徒を殴るほど、俺は最低な教師じゃないからな!」
そして暁はまゆおの前から去ろうとした時、急に突風が襲う。
「なんだ!?」
吹き荒れる風に視界を奪われた暁は、その場から動けなかった。
「まゆお、捕まえて!」
どこからか聞こえる真一の声。
そしてそれに応えるように、まゆおは暁に飛びついた。
「捕まえたよ、先生」
「ははは。やられたよ。みごとな連携プレーだったな」
「まゆおは一人じゃ、先生を捕まえられないだろうと思ってね。そして先生はきっとまゆおが戦闘不能になった時に油断するだろうって考えたのさ。だからその時までずっとチャンスを狙っていたんだよ」
そう言って姿を現す真一。
「俺のこと、よくわかっているじゃないか!」
「何年ここで一緒に過ごしていると思っているわけ? もうさっさと連行するよ。あと2人、捕まえなくちゃいけなんだからさ」
真一はまゆおにそう言って、歩いて行ってしまった。
「うん。ありがとう、真一君!」
そう言って楽しそうに笑うまゆお。
この2人は俺の知らないところで、信頼関係を築いていたんだな――
そんなことを思いつつ、暁はまゆおたちを見て、嬉しそうに微笑んだ。
それから暁はまゆおに手を捕まれて、警察陣地に連行された。
暁が警察陣地に着くと、そこにはマリアの姿。
「先生も捕まったの?」
マリアは捕まった暁を見て、驚きながらそう言った。
「いやあ。まゆおと真一にまんまとやられたよ」
暁は頭の後ろを搔きながらそう言った。
「そうなんだ。でも確かにあの二人が組んだら、最強かもしれないね」
そして暁たちは、陳地内でしおんが助けに来るのを待つことにしたのだった。
教室。織姫は、一人で窓の外を眺めていた。
クラスメイト達の楽しそうに遊ぶ姿を見ながらため息をつく織姫。
「なんなの。なんであんなに楽しそうなのよ……私はなんでこんなところに一人でいるんだろう」
そんなことを言いながら、織姫は窓の外を見つめるのだった。
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