青い荒野
第28話・青い荒野の疾風族
衛星国家【サンドリヨン】『青い荒野』──青い結晶が砂化した、青い大地エリア。
荒々しくも神々しい聖なる山には、流れ行く雲の影が映し出されている。
その青い荒野にやって来た。
鉄ウサギの月華、オプト・ドラコニス、亜・穂奈子クローネ三号、ゾアの四人は荒野に続く二本の平行線道の間に立って荒野を眺めていた。
挟まれた道の真ん中には、一点鎖線のようなモノが続いている。
平行道の先は、聖なる山へ向かっていた、ゾアが月華に質問する。
「あの山も、オレの村の山みたいに片側半分だけで、裏側は壁にくっついているのか?」
「そうよ、あの聖なる山も片面だけの山のはずなんだけれど……変ね、あんな山を登っていく蛇行の山道あったかしら?」
平行線で続いく道は山の麓から左右に別れた、蛇行する山道に変わっていた。
「なんで、あんな変な道に?」
平行線の二本道には、遮るように菌糸の根の一部が地面から出ていた。
人間の背丈を越える、丘のような太い根に近づくゾア。
ゾアと穂奈子の脳内に例の声が聞こえた。
《ゾア……ゾア……どこ?》
菌糸の根に手を当てて、無意識に囁くゾア。
「大丈夫……オレはここにいるよ」
次の瞬間、ゾアが触れていた右側の道を遮っていた箇所が、塵のように消えてトンネルができる。
意識を失い倒れるゾアを支えきれずに、一緒に倒れる穂奈子。
この時、穂奈子とゾアは一点鎖線の右側、月華とオプト・ドラコニスは左側に立っていた。
線の左側に、数本のレーザー光矢が飛んできて刺さったのと間を開けずに、男性の声が荒野に響き渡った。
「やっぱり、右疾風族の回し者だったか!」
四脚の乗用アヒル鳥類にまたがった、数名の鳥頭種族が右側に立つ月華とオプト・ドラコニスを取り囲む。
サブ・リーダーらしい、頭に飾り羽根があるタカ頭をした。人身鳥頭種族が、レーザー槍の切っ先を月華とオプト・ドラコニスに向ける。
タカ頭の他にも、ワシ頭、フクロウ頭、ペンギン頭、カケス頭、スズメ頭、ドードー頭、クジャク頭がいた。
若いタカ頭が月華に言った。
「答えろ、なぜ右疾風族の道だけにトンネルを作って通れるようにした! もう少しで頂上までの道が完成したのに……妨害工作か! 返答次第では許さんぞ!」
年配のワシ頭が、タカ頭をなだめる。
「少し落ち着け、右の妨害と決まったワケでもないだろう」
「しかし、リーダー現に左疾風族の道だけが不通です、これはどう考えても右疾風族の妨害では? 見てください、右疾風族のやつらもやって来ました」
幌馬車と、四脚乗用アヒル鳥類に乗った、別の人身鳥頭種族が現れた。
停まった幌馬車から降りてきた、トキ頭の女性リーダーらしい人物が言った。
「おやまぁ、右側の道だけトンネルになって開通している……これは、うちらの勝ちだな」
トキ頭の他にも、ニワトリ頭、ハト頭、ツバメ頭、ペリカン頭、ダチョウ頭、ハシビロコウ頭、フラミンゴ頭がいた。
左疾風族のタカ頭が怒鳴る。
「ふざけるな! 妨害工作をしたくせに、卑怯だぞ!」
左疾風族がレーザー槍や、レーザー弓矢を構える。
右疾風族のトキ頭が、不愉快そうな口調で言った。
「とんだ言いがかりだ、左疾風族は礼儀がなっていない、この場で決着つけてもいいんだぞ」
レーザー槍やレーザー弓矢を構える、一触即発の緊張感が広がる中。
左疾風族のフクロウ頭が言った。
「ここは、左疾風族の領地にいる、あの二人を連れ帰って客人の意見を聞いた方が良いかと」
「なるほど、妙案だ」
右疾風族のハシビロコウ頭も、同じようなコトをトキ頭に助言する。
「ここで一戦交えるよりも、こちら側の領地にいる二人を連れ帰って、あの方に委ねた方が……」
「そうだな」
月華とオプト・ドラコニスは左疾風族に、穂奈子とゾアは右疾風族に連れていかれた。
二種部族が去ったのを、崖の上の岩陰に隠れて見届けたカラス頭が呟く。
「やれやれ、フクロウ頭家とハシビロコウ頭家が、なんとか部族衝突を防いだか……見ていて冷や汗もんだぜ」
中立のカラス頭に後ろには、ムクドリ頭の集団がいて騒ぎはじめ、イラついたカラス頭が言った。
「おまえら、うるさいぞ……まったく、集まると騒ぎはじめる連中だ」
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