第二話

立禅りつぜん



座ってするのが座禅ざぜん

寝てするのが寝禅ねぜん

だから、立ってするのがこの立禅。


肩幅に足を開き踵を少し…地面に付くかつかないかぐらい浮かせて膝を爪先より前に出ないよう少し曲げる。


背筋を伸ばし…過ぎないように反らさず曲げず地面から垂直になるよう真っ直ぐのラインを維持。


そして両腕を大きな樹木を抱える様にして地面と水平に。

両手は掌をやや内側に指は開いて親指を体側に…丁度占い師が水晶玉に手を翳す感じで。


その体勢のまま身体を維持。


最初は5分ぐらいを目安に、慣れてきたら徐々に時間を伸ばしていく。



今日も目覚めてから軽くストレッチして身体を解した後、いつもの様に立禅を始めた浩二。

本当は自然豊かな場所で行いたいんだが、今は独房の中。

それでもこれだけは毎日続けていた。

これだけは絶対に自分を裏切らないから。



「よう、コージ。今日も精が出るな。」


「あ、おはようございますスミスさん。…もう、これは日課ですから。」



立禅を維持しつつ見回りに来たスミスさん…あの隻腕の兵士さんに挨拶をする。



「毎日毎日よくもまぁ続くもんだよ。んじゃ、俺はそろそろ見回り行くわ。っても、お前以外囚人なんて居ないんだがな!」



スミスはガハハハと、笑いながら詰所に戻って行った

毎日見回りと称して様子を見に来てくれる辺り本当に面倒見が良い。

きっと、あの時…牢に入れられたまま放置されていたら、身も心も壊れてしまっていただろうと思い、スミスに心の中で深くお礼をした。


スミスの足音が遠ざかり、やがてまた牢に静寂が訪れる。



「ふぅ…さて、続けるか…。」



軽く目を閉じ意識を集中する。

鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き出す。

身体を気が巡るのを想像しながらゆっくりと呼吸。


始めた当初は本当に辛かったが、今では殆ど苦痛を感じない。


静かな地下牢で目を閉じていると、心がすっと凪いでいき…ふとこの立禅を教えてくれた師匠との出会いを思い出す。



□■□■



元の世界にいた頃、休日の度に足を運んでいた森林公園。

そこには色んな人達がいた。


犬を散歩する者。

イヤホンをしながらジョギングする者。

仲良く散歩する老夫婦。

休日になるとシートを広げて昼食を楽しんでいる家族連れなんかもいた。


その中に師匠もいた。


最初に気づいたのは、ナオを拾ってから一月ぐらいしてからだろうか…初めてナオにせがまれて散歩に連れていった時だった。

いつも通り森の遊歩道を抜けて少し歩いた辺り…そこには両手をなにか大きなものを抱えるようにして広げて微動だにしない老人男性がいた。



(あのお爺さん…何してるんだろ…?)



妙に気になった。

特別何かをしているわけじゃない。

ただ変なポーズで立っている、それだけなのに妙に気になる。


次の瞬間には声を掛けていた。



「すみません…貴方は何をしているんですか?」



と。

すると軽く目を閉じていたお爺さんはゆっくりと目を開き



「立禅じゃよ、若いの。この辺りは空気がいいからのぉ。」


「りつ…ぜんですか?」


「そうじゃ、座ってするのが座禅、寝てするのが寝禅、立ってするのが立禅じゃよ。」


「成程、立禅ですか。」



会話の最中ですら微動だにしないお爺さん。



「興味があるのかの?なら物は試しじゃ、一緒にやってみるか?」


「え…あ、いや…。」


「良いからホレ、まずはここに立つんじゃ…力を抜いて…。」



あれよあれよという間に立禅入門が始まってしまった。


しかも、このお爺さん力が強い。

年齢を聞いたら90歳だそうだ…浩二の手を引く力はとてもそんな高齢だとは思えない程力強かった。



「うわっ…きっつっ…」



開始三分後の感想である。

コレ…立ってるだけなのに足腰への負担が半端ない。



「若いのにだらしがないのぉ…まぁ、若い内に立禅に出会えたということで良しとするかの。」



隣で同じ姿勢で全く微動だにぜず宣うお爺さん。



「この立禅は心身共に鍛え、あらゆる拳法の下地になるものじゃ。

最初は辛かろうが、その内ちゃんと体が付いてくるようになる。

継続が大事じゃよ。」



長生きの秘訣でもあるがの。

そう言って元気に笑うお爺さんを見て、自分もこの人のように健やかに歳をとりたいなと思った。


それから浩二は毎朝、この立禅をするようになった。

そして、休日にはこの公園でお爺さんと二人並んで。

当然、ナオは首に絡まったままだが。


不思議とそれから病気になりにくくなった気がする。

風邪などは全くと言っていいほどに。


それから二年ほどたったある日、お爺さんは浩二にこう言った。



「下地も出来てきたし、そろそろ拳法の真似事でもしてみるかの。」



そう浩二の太股や腹筋、腕をポンポンと叩きながら。



「拳法ですか…?」


「そうじゃ…まぁ、型と言った方が良いじゃろうか。」


「…興味はあります。」


「うむ。それじゃまずは三体式さんたいしきからじゃな。」


「三体式…?」


「そうじゃ…ほら、こうして膝をたたんで…右手はこうで…」



あれよあれよという間に三体式とやらの形にされる浩二。



「うわっ!これもきっつっ!」


「カッカッカ。そうじゃろ?これを三年続けるのが手始めじゃ。三体式三年は基本じゃからな。」


「継続は力ですか?」


「そうじゃ、わかっておるのぅ。」


「はい、立禅で身に染みて感じてますから。」


「ならば、立禅と三体式、それが三年続いたら次を教えてやろうかの。」


「分かりました…頑張ります。」



それから浩二の日課に三体式が加わった。



□■□■



師匠の事を思い出しながらも、立禅を続ける浩二。

そして、ここ最近のことへと思考が移動する。



牢に入れられてから早二週間。

色々なことがあった。



まずはナオ。


牢に放り込まれ勇者の一人からナオは無事だと言付けを受けてから二日後、一人の女生徒が面会に来た。

元気になったナオを連れて。


ナオは俺を見た途端、彼女から飛び降り俺に飛び付いてきた。

俺に纏わりつき、何度も俺を見て鳴いた。


顎や耳の後を優しく撫でてやると、目を細めて気持ち良さそうにするも、やっぱりこちらを見て鳴く。

まるで「大丈夫?大丈夫?」って言ってるみたいに。


お前の方が大丈夫かよ…無茶をして…

滲みそうになる涙を堪えながら、ナオの体に巻いてある包帯にそっと触れる。



「もう傷は完全に塞がっていますが、一応念のためです。」



自分に声が掛けられてハッとする。

そうだっ!お礼を!と視線を女生徒へと向ける。


肩口まである綺麗な黒髪。

前髪は少し長めで、俯き加減の彼女の顔が良く見えない。

目を細めて良く見ようと牢ごしに少しだけ彼女に近づく。



「あ、あのっ!私、猫を飼ってて!それで、ナオちゃんが酷い目にあってるのを見てられなくて…!そのっ!丁度ステータス見たら回復系の魔法が使えるみたいだったから…あの…怒って…ます…?」


「へ?」



変な声が出た。


怒る?


そんな訳は無い。

それどころか、感謝してもし切れないぐらいだ。

なぜ彼女はそんな…事をと思ったところで自分が彼女の顔を見るために眉を顰めていることに気付いた。


そこからは早かった。

電光石火の勢いで土下座。

それはもう綺麗な土下座。



「済まない!本当に済まない!そしてありがとう!ナオを助けてくれて、本当にありがとう!」



土下座をした瞬間にビクッとした彼女だったが、浩二の口から出た言葉にホッとしたようで、「いいえ。」と一言だけ、でも優しさの篭った声色でそう言った。



「さっきの…その…顰めっ面は…君の顔を良く見ようと…済まない!怒っていた訳じゃないんだ…実際…感謝しかない…」



浩二は顔を上げて彼女を見ながらそう言い放った。

途端、ボッと音がするかと思うぐらい彼女の顔が見る見るうちに赤くなっていく。



「!?あんまり見ないでください!…その…恥ずかしい…ですから…」



先程よりも更に俯きながら彼女は口にした。

どうやら、あまり人付き合いが得意な方では無いらしい。

浩二は土下座をやめ、佇まいを直し正座したまま、改めて彼女を真っ直ぐ見て口を開く。



「済まない。不躾だった。改めてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう。あのままだったら、きっとナオは…本当にありがとう!」



真剣な浩二の表情に前髪の隙間からチラチラこちらを見ながらも小さく頷いてくれた。



「俺の名前は岩谷浩二、君の名前を教えてくれないかな?

ナオの命の恩人の名前を知りたいんだ。」


「……新堂舞しんどうまい…です。」


「新堂さんか…本当にありがとう。ほら、ナオもお礼を言って。」



浩二が自分の横に並んで座るナオにそう声をかけると



「ナァーーォ」



本当に鳴いた。

まるでお礼を言っているかのように。

驚いた様に目を見開いた後、舞はゆっくりと牢へと近付き鉄格子の間から手を差し入れナオの頭をそっと優しく撫でる。



「ナオちゃんは…本当に賢いですね…治療した後も、鳴き声をあげたら追い出されちゃうかもしれない…って言ったら、全然鳴かなくなって。」


「そうなのか?」


「はい。兵士さん達は「魔獣に治療など必要ない!」なんて言い出して…私の部屋に連れて行こうとした時も猛反対されたんですよ?こんなに…可愛いのに…ね?ナオちゃん。」



顎を撫でられて気持ち良さそうに目を細めるナオ。



「苦労かけて済まない。」


「そんな…良いんですよ。あの場で回復出来るのは私だけのようでしたし…珍しいんですって回復魔法。だから、尚更人間以外に使うことに抵抗があったんじゃないかって王女様が言ってました。」


「そうなのか…って王女様?」


「あぁ、はい。王女様が口添えをしてくれて…部屋にナオちゃんを連れていけたのも、ここに来る許可を出してくれたのも王女様なんですよ。」


「そうか…王女様ってあの王様の隣にいた?」


「はい、彼女がそうです。第三王女のリリィ様です。」


「いつかお礼しなきゃな…」


「ふふっ、そうですね。リリィ様も…その…岩谷さんの事心配してましたし。」


「そっか。」


「あ、そろそろ私戻りますね。そうだ…えーと…岩谷さん。」


「ん?何?」


「その…ナオちゃんなんですが…まだ暫く預かっていても良いでしょうか?」



彼女は何やら申し訳なさそうに浩二に告げる。



「王女様が言っていたのですが…その…岩谷さんと一緒にしてしまうと、ナオちゃんまで何をされるか分からないから…と。」



すみません。と何故か謝りながら提案してくれる。

確かに彼女や王女様、スミスさん辺りなら心配ないが他の兵士達が相手なら確かに心配だ。

奴等はナオを魔獣と言って警戒していたし。



「お願いしてもいいの?」



素直にそう思った。

きっと今の状態なら自分といるよりきっと安全だと。



「はい!任せてください!…あ…ちゃんと治療も続けますし…それに…」



元気に了承してくれた彼女だったが、すぐに表情を曇らせ少し俯いてしまう。

どうしたのかと思い聞いてみる。



「それに?」


「その…ナオちゃんといると…不思議と安心するんです。



成程、確かに彼女は人付き合いが苦手そうだしな。

きっとこっちに来てから不安だったんだろう。

なら、



「ナオ…怪我がちゃんと治るまで新堂さんと一緒にいてくれるか?」



そうナオに話し掛けた。

ナオならきっと分かってくれると。



「ナァーォ」



彼女は浩二の肩に飛び乗り頬を軽く舐めた後、新堂さんに向かい少し歩いた後こちらを一度振り返って一鳴きした。



「俺は大丈夫だ。心配いらないよ。」



その俺の言葉を聞いたナオはそのまま新堂さんに歩み寄りトンッと軽々跳躍して彼女の肩に飛び乗る。



「それじゃ、ナオの事頼むね。」


「はい!またナオちゃん連れて此処に来ます!」



浩二とナオのやり取りを目を見開き見ていた舞も、浩二の言葉を聞いて顔を綻ばせて元気に返事をすると、そのまま足早に地下牢を後にした。




回復魔法。


本来は特定の家系に代々伝わる能力の様なものらしく、全く違う家系から回復魔法を使える者が出るのは極めて稀なようだ。

少なくともここ千年は現れた事が無いらしい。


当然勇者の中でも特別視され、少しではあるが発言権らしきものもあるお陰で、王女様等と話す機会も貰えたとか。

舞本人曰く



「別にそんなに大袈裟な事を出来るわけじゃないのに…目立ち過ぎて…居心地悪いです…」



だそうな。


彼女が、たまたま・・・・回復魔法が使えて、たまたま・・・・猫好きで、たまたま・・・・回復魔法が稀少だったからこそ今のナオがあるのだから、軽く神様に感謝してもいい確率だ。

なんて話したら



「お陰で私もナオちゃんに出会えました!」



なんて眩しい笑顔で言われてしまった。

全く…この子には頭が上がらない。



後に語るが、勇者達との訓練中にポッキリと逝った浩二の腕の骨を舞が回復魔法で治療しようと言った時もえらく揉めたそうだ。

こちらの世界の人達は回復魔法の希少価値も相まって揃って反対。

勇者達はと言うと…どちらでも良い…ってか、あんまり興味も無さそうだったそうな。


結局、王女様の



「勇者様方の訓練に支障も出ますし、最低限の治療ならば良いのではないですか?新堂様の回復魔法の修練にもなりますし。」



という鶴の一声で異世界側も渋々納得したそうだ。

そして、当の舞はと言うと



「人を癒すのに人種も身分も関係ありません。

私は私の治したい人を癒します。」



とまぁ、なんともイケメンな発言を。

王女様はその意見を尊重した感じだ。

舞が言うには、



「あの時、絶対王女様みんなに内緒で私にウインクしてました。」



だそうな。

この王女様…本当に一度お目通りしたいものである。



□■□■



そんなこんなで立禅を始めて約1時間。

約なのは時計がないから。

一緒に転移したスマホはとうにバッテリー切れです。



「ふぅ…さて、次は三体式かな。」



三体式。


浩二が師匠と心の中でそう呼ぶお爺さんに教わった、彼曰く「拳法の真似事」である。

その実は、太極拳、八卦掌と並ぶ中国拳法の中でも有名な「形意拳」その型の一つである。


両足を軽く開き爪先を少しだけ広げて立ち、軽く身体を前へ倒す。

この時、腰・・を曲げるのでは無く股関節・・・から曲げるのだ。

中国拳法では腰とは股関節の事を言うらしい。


そして、身体を倒したまま膝を曲げると自然と体が起き上がる。

身体を地面と垂直になるまで起こした後は右足を半歩前に出す。

左手を腰に、右腕を軽く前に出し掌を前に向ける。


重心は前足3後ろ足7。

この形を維持。


左右を入れ替えて更に維持。


はっきり言ってキツい。

慣れるまでは数分でもキツい。

特に後ろ足の負担が半端ない。

今にも伸び上がり飛び出してしまいそうな…そんな感覚が常に後ろ足に宿る。



「大分慣れたとはいえ…最初はキツかったなぁ。」



そう呟きながらスッと腰を下ろすようにスムーズに三体式へと姿勢を変える。

大分慣れた等と言いながら、今では左右共に一時間は行っている。


師匠に言われた通りに立禅と共に毎日欠かさず。


彼は浩二に三年間、三体式のみをひたすら続けさせた。

それは、この三体式という型が、形意拳において絶対に外せないものだから。

全ての型の基本となるものだからと。


やがて浩二が転移する一年前、三体式を三年続けた彼に老人が教えた新たな型それは、「崩拳」


一般的に形意拳と言えば有名なのが動物の動きを模した「十二形拳」

虎拳や蛇拳なんかが知られている。


しかし、老人が選んだのは更に基本の「五行拳」

全ての形意拳の基本と言われるもの。

その五つの型のうちの一つ「崩拳」


本来は型の一つ「劈拳」を最初に学ぶらしいのだが、何故か理由は分からないが彼は最初に「崩拳」を教え始めた。


見た目は半歩踏み込んでの中段突き。

しかし、それは大きな間違い。

達人の放つ崩拳は、放てば必殺。


「半歩崩拳、あまねく天下を打つ」と言われる程。


拳を通して身体の内側に衝撃を透す又は留まらせ、相手はその場に崩れ落ちる様に倒れるという。

派手に吹き飛ばすのは未熟との事。


その見た目は地味だが、カウンターを利用したその単純な動作で放たれる一撃は至極強力。


なぜ彼が崩拳を選んだのかは今ではもう知る術はない。

しかし、浩二は続けた。

勤勉に教わった通りにその型を反復し続けた。

いつか来るべき時に備えて。

それは当然この世界に来てからも変わらずに。




そして、浩二がこの地下牢に閉じ込められて一週間程だったある日、事態は動き出した。



いつもの様に日課を終えた浩二の所へ二名の兵士がやって来ると



「出ろ!」



とだけ言い放ち、牢の扉を開いた途端浩二を引きずり出した。

相も変わらずの杜撰な扱い。

何を言っても聞き入れて貰えないのは分かっているが、やはり腹が立つ。

足に嵌められた鎖がジャラジャラと音を立てながら普通の歩行を邪魔する。

そんな事はお構い無しに引き摺るように連行されながら詰所前を通りかかった時、ふと声が掛かる。



「オイ…」



たった一言。

底冷えするような低い声。

振り返ればそこには、見たこともないような冷たい視線を向けるスミスが佇んでいた。


声は二人の兵士にも聞こえたようで、ビクッと身体を跳ねさせると慌てて敬礼する。



「おっ…お疲れ様です!スミス兵隊長っ!」


「お疲れ様ですっ!」



兵隊長?

確かにスミスは二人の兵士にそう呼ばれていた。



「看守長だ。」


「し、しかしっ!自分達を逃がす為に兵隊長はっ!」



何やら必死に食い下がる兵士A。



「良いんだよ…もう、ずっと昔に俺は看守長になったんだ。」



自分に言い聞かせる様に、それでも前を向いて二人の兵士に言い放つ。



「それよりも…だ。」



スミスは区切るように言葉にして先程の冷たい瞳に戻り、こちらに歩み寄ると



「もし、その兵隊長とやらの下に付いて頑張っていた奴らなら…こんな下らないことしてんじゃねーよ…」



冷めた瞳を何処か悲しげに色付かせながら、諭すように、叱るように。

そのまま詰所に戻ってしまった。




「魔族とはいえ…済まなかった…」


「いや、良いんだ。」



何処に向かうか分からない中、無言で連行されたのは変わらなかったが、やがてポツリと呟くように言葉を零した兵士に、そんな言葉しか返せなかった。


でも、心做しか並んで歩く速度が遅くなった気がした。


そして、二人の兵士と歩くこと十数分、浩二は実に一週間ぶりに陽の光を浴びる事となった。


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