隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
プル・メープル
第一期 唯斗と夕奈 編
第1話 奪われた幸せ
いや、正確には目を閉じて日向ぼっこしているだけで、意識は夢と現実をうつらうつら。周りの生徒が騒ぐせいで、寝落ちるところまではいけていない状態だ。
(あったかいなぁ……)
彼の席は教室窓際最後列、目が悪くない人なら誰でも羨むような席。しかし、彼にとっては席の近くに誰も寄ってこないことこそが至極であり、こうして眠気と陽の光のまどろみに浸れる時間こそ、最高のひと時と言えた。
しかし、そんな平穏も今日でついに終わる。6時間目のホームルームで席替えが行われることが決まっているからだ。
(ありがとう、机くん……温もりをありがとう……)
ほんのりと温かい机に頬ずりしながらお礼を告げ、聞こえてくるチャイムで覚悟を決める。
もしもこの席替えでパリピ(友達がいる人)の近くになったら、落ち着いて席にいることも出来ないだろう。
トイレから帰ってきたら席を取られていたりもするだろうし、向こう行けよというオーラを発されるかもしれない。
だから、これがこの幸せな時間との最後の別れ。そういう思いで、唯斗はチャイムが鳴り終えるまでの時間を満喫したのだった。
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「……ただいま、机くん」
この瞬間ばかりは、唯斗も神を信じた。心の中でキリストにありがとうと頭を下げたりもしたかもしれない。
なぜなら、席替えをしたにもかかわらず、自分の席が再度窓際最後列になったからだ。
クラスメイトは30人くらいいた……と思う。
その確率を引き当てたのだから、もはやこの世界の全てが自分の幸せを守ってくれたと言っても過言ではない。
彼は大袈裟にもそう信じて疑わなかった。
しかし、世の中はそう都合のいいことばかりではないことを、唯斗は身をもって体験することになる。
机の温もりは守られた。しかし、平穏とまどろみは奪われてしまったのだ。
―――――――――
隣の席から唯斗を憐れむような目で見てくる、スーパーパリピ(友達がたくさんいる人)によって。
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