副課長への手渡し

 嫌なこともじわりじわりと時間は過ぎていき、理子と小野さんは職場についた。


 これから話すことを考えて固くなる理子に小野さんは「まぁ、頑張って」と一言呟く。


 理子は小さく頷いて、平常心を装いながらもいつものように、女子ロッカー兼休憩室に向かう。


 そしていつものように、返事のない人間たちに挨拶をする。


また、さりげなくタイムカードを押しに行くに辺り、総務課のアルバイトさんたちがもう帰宅して静まっているかどうかの気配を感じとろうとしていた。


どうやら静かなので、「失礼します」と声をかけ、パソコンの入力作業をしているえなりかずきに似ている伏木ふしき副課長の背中にむかい話しかける。


「お忙しい所すみません。相談したいことがあるのですが、今よろしいでしょうか?」


 声も手足も震えており、怪訝な顔をしてふりかえる伏木副課長は理子からカードの入った白いファイルを受け取り、理子の言葉を待つ。


「昨日帰宅しましたら、家のポストに不思議なカードが届いていて気持ち悪いので、相談させて頂きたく思います」と小野さんと相談した文面を不安な心持ちでたどたどしく言葉にしていく。


 カードを開いて見た伏木副課長もただならない顔になるが、「課長に相談しないといけない案件だから、暫く《しばらく》待ってほしい」と理子に懇願こんがんをする。


とりあえずそれしかないだろうと理子もお願いしますと頭を下げて小野が待つ食堂を目指す。

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