第6話 幼馴染み登場!!
翌日、私が朝ご飯を作っていると、携帯にメッセージが届いた。
「何だろう?」
『from:お母さん
件名:ごめん!!
今日も帰れそうにありません。なので、夜ご飯はいりません。明日には帰れると思います。いつも傍にいれなくてごめんね』
お母さんからの連絡だった。今日も帰れなくなったらしい。まぁ、いつものことだからいいけど。それに、お母さん達が、私を愛してくれているのも知っているし。『了解』と送って、朝ご飯の続きを作り、リビングで食べる。ついでに、色々とユートピア・ワールドについて調べておく。
「あ、夜烏について載ってる。夜中に現れる謎のカラス。視認が難しく犠牲者が多数。やっぱり、結構被害に遭った人がいたんだ。デスペナルティについても書いてある。一時間のステータス低下だけか。少し、緩い感じもするけど、一時間って意外と長いからなぁ」
デスペナが分かったのは良いことだ。デスペナのリスクを戦闘の考慮に入れられるし。一時間というのは、ただ過ごすだけなら長く感じるけど、ヘルメスの館にいれば、あっという間だ。ステータスが低下していたら、外に出るのは危ないだろうしね。他の情報は、めぼしいものが無かったので無視する。
「そうだ。リボルバーのリロードが速くなる方法を検索してみよ」
夜烏戦でも狼との戦いでも、リロードの手間があった。一発一発の装填は大きな隙にも繋がってしまう。大分速くはなったけど、もっと速くリロードが出来る方法を知りたい。
「スピードローダー……六発全部をいっぺんに装填出来るんだ。スキルで出せれば良いけど、多分無理だよね。それに、かさばりそうだから、ポケットじゃダメだし、ポーチみたいなのが必要かな。ここら辺も、アーニャさんに相談してみよう。銃を取り扱ってるなら付属品も扱ってるよね」
食べ終わった食器を洗って、乾燥機に置いておく。洗濯は、自分のものだけなので簡単に終わり、掃除も昨日したので、すぐに自室に駆け込みログインする。
現実の感覚から離れ、ユートピア・ワールドの感覚がしてくる。目を開けると、昨日の夜にログアウトしたヘルメスの館の前にいた。このまま、入ってしまおうかとも思ったが、先に夜烏達を解体しないといけないので誘惑を振り切り表通りに向かう。休日といっても朝なので、プレイヤーはそれほどいなかった。
一直線に解体屋に向かい中に入ると、この前と同じ女性の店主さんが迎えてくれた。
「おお、嬢ちゃんか。どうした?」
どうやら覚えていてくれたようだ。少し嬉しい。
「解体場を借りる事って出来ますか?」
「ああ、今は使ってないからいいぞ」
「ありがとうございます。後、鳥の解体の仕方を教えてもらう事は出来ますか?」
「鳥か。確かに、あれはウサギとは違うからな。いいぞ」
解体屋の奥にある解体場に来て、アイテム欄から夜烏と狼を取り出す。
「おお、結構な数を仕留めたな。てか、こいつは夜烏じゃねぇか!? 良く仕留められたな!」
「結構苦戦しましたけどね」
「はははは! いいじゃねぇか! 早速解体の仕方教えてやるよ!」
何故か、また気に入られてしまった。何が原因なのか全く分からない。これが、ユニークモンスターを倒した特典の一つなのかもしれない。取りあえずは、そう思っておくことにした。
それから、狼を十匹以上と夜烏の解体をした。鳥の解体は、少し面倒くさかった。まず、身体の羽を丁寧に毟る。その後に、頭を落として、内臓を取り出し、分解していく。そうして、肉を部位毎に分けたら終わりだった。
「ふぅ、疲れた……」
「やっぱ、嬢ちゃんは才能があるな。このまま、ここで働かないか?」
「いや、それは、遠慮します」
「そうか? まぁ、無理強いはしねぇけどな」
「じゃあ、お世話になりました」
「おお、また来な!」
解体屋を出て、冒険者ギルドに向かう。そのギルドでは、モンスターの核を売る事が出来るらしい。冒険者ギルドは、街の北通りにある。昨日、色々回っている時に見つけたのだ。扉を開いて中に入ると、大勢の人で賑わっていた。
「えっと、受付は……、あそこかな」
中は意外と広く、モンスターの核を引き取る場所が分かりにくかった。でも、私には言語学があるので、カウンターの上にある文字で、見つけることが出来た。核売り場と書かれているカウンターまで向かう。受付にいたのは、とても綺麗なお姉さんだった。というか、カウンターにいる人は皆、綺麗なお姉さんばかりだった。服は全員統一の制服のようだ。無駄なスリットなどは一切入っておらず、きっちりとした服装だった。
「あの、モンスターの核を売りたいんですけど……」
「はい、ギルドカードはお持ちですか?」
「持っていないです」
「では、登録もこちらで済ませてしまいましょう」
どうやら、ギルドのメンバーとして登録を済ませないといけないらしい。
「こちらの紙にご記入ください。文字は書けますか?」
「簡単なのなら……」
「はい、それで大丈夫です。こちらとこちらが必須事項。その他は、任意事項になります。任意は、記入するもしないも、貴方様のご自由となります。記入しなかったからといって、何か損をするなどということはありませんので、ご安心ください」
私は、羽ペンにインクを付けて、記入していく。必須事項は、氏名と年齢だった。任意事項には、スキルや職業、使用武器といったものがあった。私は、必須事項にだけ記入することにした。スキルや武器を書くと、注目を浴びそうだったからだ。初めて、羽ペンを使って文字を書いたから、少し字が汚くなっちゃった。
「必須事項のみですね。承りました。こちらの水晶に手をお当てください」
受付のお姉さんは、カウンターの下から、人の顔ほどある水晶を取り出した。そこに、手を当てると水晶が光り輝いた。その水晶に、お姉さんがカードを当てる。すると、カードにさっき、私が書いたことが浮かび上がってくる。
「うわぁ、すごい……」
「はい、出来ました。これが、ギルドカードになります。紛失された場合は、五〇〇ゴールドで再発行となりますので、お気を付けください」
「はい、ありがとうございます」
「では、核の買い取りですね。こちらのトレイに置いてください」
私は、アイテム欄から、キラーラビットと狼の核を取り出して、トレイの上に置いた。夜烏の核は、周りの目も考えて出すのはやめておいた。
「では、査定しますので、少しの間お待ちください」
「はい」
お姉さんは、後ろにあるテーブルで、核をレンズなどを用いて細かく見ていく。初心者でも狩ることが出来るモンスターだったので、多分合計で一〇〇〇ゴールドくらいだと思う。五分ほどで、査定が終わり、トレイにあった核の代わりにお金が載って返ってくる。
「こちらが、査定の結果です。全部で、六〇〇〇ゴールドとなります」
なんと、私の予想の倍以上の金額になった。
「こんなにもらえるんですか?」
「はい、とても丁寧に取り出されていましたので。東通りのアキラさんの解体屋さんですか?」
「どなたですか?」
受付のお姉さんから、解体屋さんの詳しい場所を聞いて、ようやく、いつもお世話になっている解体屋さんのことだと分かった。あの人、アキラさんって言うんだ。
「はい、そこで教えてもらいました」
「えっ? アキラさんから教えてもらったのですか!?」
受付のお姉さんが、驚いた。ここで、自分が失念していたことに気付いた。
(そういえば、解体術って教えてもらえる人が少ないんだっけ。お姉さんもびっくりしてるし)
どうにかして誤魔化すか迷っていると、
「すごいですね。アキラさんから教わったって言う人は一人も聞いたこと無いのに。ルナさんの丁寧な仕事にも納得がいきました」
受付のお姉さんがニコニコとしながらそう言った。すごく綺麗な人だと思っていたけど、この姿を見ると、とても可愛い人なんだなって思った。
「そうだ、ルナさん。私を、専属の受付嬢にしませんか?」
受付のお姉さんから、急にそんな事を言われた。
「どういうことですか?」
「ギルドにいらっしゃったら、私がすぐに受付をするということです。つまり、行列に並ばずに、すぐに色々な手続きが出来るようになります。今、私はフリーですので、すぐに手続きも出来ますよ」
専属になれるのは同時に一人だけなのだそうだ。
「じゃあ、お願いします」
私がそう言うと、受付のお姉さんは、ぱぁっと輝いた笑顔になった。専属になると向こうにも得があるのかな。
「かしこまりました! すぐに書類を取ってきますね」
そう言うや否や、すぐに裏に行くと一分で帰ってきた。
「こちらに署名をお願いします」
「はい」
差し出された紙に自分の名前を書いていく。
「はい、これで、専属契約は完了です。改めまして、私は、シズクと申します。これから、よろしくお願いしますね、ルナさん」
「はい、よろしくお願いします、シズクさん」
受付のお姉さん改め、シズクさんと専属契約を結んだ。
「ふふ、こんなに可愛い子の専属になれて、私は幸せです」
シズクさんは、すごく嬉しそうに笑っている。
「私も、シズクさんみたいな綺麗な人と契約出来て嬉しいです」
「まぁ、お世辞でも、とても嬉しいです!!」
シズクさんは今までで一番輝いた笑顔を見せた。
「そろそろ、私、行きますね。多分、後で、友人を連れてまた来ます」
「かしこまりました。その時は、あちらのカウンターにいますので、お声をおかけください。すぐに、向かいますので」
「わかりました。では、また後で」
私は、シズクさんに手を振ってから、ギルドを出た。メニュー画面を見て、現在時刻を確認すると、そろそろ日向がログインする時間だった。
「多分、広場に来るよね」
私は、街の中央にある広場に向かった。広場にあるベンチに座りながら待っていると、中央に人一人分の光が生じた。誰かがログインしたときの光だ。光が収まったときに出てきたのは、私とほぼ同じくらいの背の高さをした女の子だった。髪の色は金色で、眼の色は綺麗な碧色をしている。そして、その顔は、私がよく知っている人に似ていた。
「来た!」
私は、ベンチから立ち上がって、その娘の元に向かう。
「日向?」
私は、周りに聞こえないくらいの大きさの声で訊く。
「うん、じゃあ、貴方がさくちゃんだね」
やっぱり、私の幼馴染みの
「私は、ルナって名前だよ」
「また? いつも同じ名前だよね。私はソルだよ」
「そっちもじゃん!」
日向のプレイヤーネームはソルと言うらしい。いつも、ゲームでは同じ名前なので、わかりやすい。
「じゃあ、あっちに行こう。あそこにベンチがあるから」
「うん。色々教えてね、先輩」
「たった一日差でしょ。私だって、知っていることの方が少ないんだから」
「そうだね。ところで、その可愛い服はどうしたの!? ルナちゃんの髪の色も相まって、とても可愛くなってる!」
そう言って、ソルが抱きついてくる。いつもの事だから慣れてるけど、人がいるところでは、やっぱり恥ずかしい。
「ちょっと、ソル、離れて。恥ずかしいよ」
「恥ずかしがるルナちゃんも可愛い!!」
ソルは、さらに私を抱きしめる力を込めていく。余計なことを言ってしまったかもしれない。
(本当に、ソルの可愛い好きには、困ったものだった。いつも所構わず抱きつくんだから)
ようやく、落ち着いたソルとベンチに座って、スキルの確認とチュートリアルの確認をする。
「私のスキルは……」
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ソル[冒険者]:『刀術LV1』『抜刀術Lv1』『集中Lv1』
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「……だね。前の二つは、ユニークスキルだ」
ソルも、最初からユニークスキルを手に入れていた。
「へぇ~、私と一緒だ。私もユニークスキル二つと集中だったよ」
「どういう基準なんだろう?」
「さぁ? 完全にランダムって聞いているけど」
「そうなんだ」
ソルは、チュートリアルを読んだ後、身体を伸ばしていた。
「う~ん、最初は、何をすればいいかな?」
「じゃあ、こっち来て」
私は、ソルを連れて歩き出す。取りあえず、すぐに取れるであろうスキルの場所に。
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