第6話 表裏俺の三人の旅
「それで三人で『裏側』に行くのがいいんじゃないかとなったわけだが」
「俺くん誰に向かって説明してるの」
「え、世界」
「はー」
「行くぞ、主」
「わかってるわかってる」
くるり。
◆
闇。
「ここが『裏側』か……」
「そうだよーウェルカムトゥー『裏側』」
見渡すと空から木が生えてたり、地面に空が落ちていたりする。
「混沌だな」
「『裏側』だからねー」
「そもそも『裏側』って何なんだ?」
「えー、それ聞いちゃう?」
「いやだってよくわからないし」
「君だってさもわかってますみたいな風にしてたくせに今さらかー」
「そんなこと言ってお前もわかってないんじゃないのか」
「『裏側』についてはわかってないことが多いんだよ」
「へえ? 虚無みたいだな」
「虚無は虚無だからねー。『裏側』はもっとこう、個人的な空間だと思うよ僕は」
「そうだな」
「わっ急に話に入らないでよ裏側くん」
「相槌を打っただけだ」
「はー。で『裏側』の話に戻るけど、僕、表側くんも実は元々『裏側』属性なんだよねー。表側を司るとか言ってはいるけどその属性は強制的に付与されたものにすぎないってわけ」
「え、じゃあ、裏側も表側も実は両方『裏側』ってことか」
「そうだよ」
「じゃあ表側のことを俺は何て呼べばいいんだ」
「表側でいいよ。だって僕は表側だし」
「なんだかややこしいことになってきたぞ……これだから固有の名前がない奴は困る」
「君だってそうだろ」
「俺はちゃんと固有の名前があるからな」
「言えない名前はないのと一緒って言ったのに」
「表側」
「わかってるよ裏側、建前ねはいはい」
適当に流す表側。その適当さが今はありがたい。
何が?
何がありがたいんだ?
「俺くん」
「な、何だ」
「来たのはいいけど何する? 全く決めてないよね」
「そういえばノープランだったな……食料とかどうするんだ、これ」
「『裏側』に来た瞬間に『裏側』属性になるからさー、食べなくてもよくなるわけ」
「それって俺も人間じゃなくなってるってことか」
「まあそうだね」
「えっ……」
困る。
いや別に何も困らないが。
俺が人間だろうが人間じゃなかろうが喜ぶ奴も困る奴も誰一人いないわけだし。
「また暗いこと考えてる」
「読むのやめろって言ったのに」
「わかっちゃうんだよー」
「むむ……」
何をするか、というのは目標だ。目標を立てなければ前には進めない……いや、目標がなくても前に進める人間というのもこの世にはいる、たぶん、いや、でももう俺は人間じゃないんだった。
「困るな……」
「何が?」
「わかってるんだろ表側は」
「わかることもあるしわからないこともあるって、真理でしょ」
「表側まで煙に巻くのはやめてくれ」
「あは、ごめんごめん」
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