第11話 初めての夜会は逆境でした
今夜の夜会は、『病床に
快気祝いという言葉がこの世界にあるのかは知らないけど。
なんか、テレビで見た皇室の晩餐会みたい。って、本当の王室の晩餐会か……。
前には本日の主役。クリスと王様、王妃様、王太子のクラレンスが座っている。
お祝いされるクリスの挨拶があって、王様が挨拶して晩餐会が始まった。
これって、パートナーの意味無いんじゃない? って、思っていたら舞踏会会場に移る時に、クラレンスから手を差し出された。
その手を取り、私は会場入りをした。
遠くにリリー・ブライアントが見える。会場で落ち合う予定だったのかな。
それにしても、夜会ってこんな感じなのかな。なんだか、すごく居心地が悪い。
ざわざわしている中に、キャロル……っていうか、私? の悪口が聞こえる。
さっきから冷たい目でジロジロ見られてる。
顔が上げらんない。
婚約者を寝取られたって何だろう……? もう、意味わかんない。
「おい。しゃんと顔を上げろ」
下を向いて涙が瞳に溜まった頃に、横から声を掛けられた。
思わずクラレンスの方を見る。
「社交界で潰されるつもりか?」
クラレンスはあきれ顔になっていた。ため息吐いてるし……。
「今のキャロルに反撃しろとは言わんが、せめて顔を上げて笑っていろよ。くだらん連中に潰されたくないだろ?」
笑えない。こんな、いじめっ子たちが大勢いるようなところで、笑っているなんて、出来ない。
泣かないでいるのが精一杯なのに。
「曲が始まったな」
クラレンスが私の手をきゅっと握ってきた。そして、手の甲に口付けをしてにこやかに言う。
「キャロル嬢。私と踊って頂けますか?」
そう言って礼を執り、ダンスの申し込みをしている。小声で「笑え」って言われた。
「喜んで、お受けいたします」
私も令嬢としての挨拶をした。
ダンスをしながらクラレンスが諭すように言ってくる。
「いいか。社交界で笑顔は武器だ。どんな、状態でも顔を上げてしゃんとして、笑ってろ」
笑っていろと言われても……。
「王太子殿下の所為なのに……」
「いつも通り、クラレンスと呼んでくれないか。いらぬ憶測を招く。私の所為だと反省しているからアドバイスしてるんだ。隙を見せたらあっという間に潰されるぞ」
クラレンスは軽い口調で、私にアドバイスをくれる。それにダンスの間は悪口が聞こえない。
なるほど、怖いだけの人じゃ無いんだわ。
「ただでさえ、王太子の婚約者というのは、嫌みや当てこすりを言われたり、あわよくばその地位から引きずり降ろそうとする連中に狙われたりするんだ。気を付けろよ」
「……そんな」
前言撤回。脅してくるなんてひどい。
「まぁ、以前は上手くかわしてたと思うけどな。時々、反撃もしていたし……」
本当、どうしちゃったんだよ。って感じで言ってる。
「そうなんですか?」
キャロルって、空っぽの器って聞いてたけど、すごかったんだ。
「そうなんですよっと。で、どうする? 婚約者同士だから、もう一曲続けて踊れるけど」
気を遣うようにクラレンスが訊いてくる。
確かに踊っている間は噂話も聞こえないし、冷たい視線も気にならないけど。
「ありがとうございます。だけど、大丈夫……になります」
私はがんばって笑顔を作った。上手に笑えてるかな。
「まぁ、上出来だな」
褒めてもらえた。
そして私たちは、ダンスの終わりの挨拶をする。
クラレンスは、私から離れさっと向こうの方に行ってしまった。
リリーの所に行くのかな?
私も移動しなきゃ、次の曲の邪魔になる。そう思って移動しようと思ったら声がかかった。
「キャロル。クラレンスと仲良くなったんだ」
声の方を振り向くと、クリスがニコニコした顔をして立っていた。
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