第2話ゴブリンの集落
朝日を感じ、目を開けた。
周囲から グキャッ、グキャッ という汚い鳴き声が聞こえてくる。
本当に汚い声だ。発泡スチロールを擦り合わせたような嫌ーなやつ。
生まれたばかりだからか、はたまたこの体の目が悪いからか視界が悪い。
ただ、声だけでわかることがある。周りの奴ら人間じゃない。
ふぅ、どうやら、転生しちゃったらしい。
「グギャー、ギャキャー!」
(ふざけんなー!)
いや、ね?そもそも、転生に同意すらしてないのに、魔物、それもドラゴンとか、フェニックスとかでもなくゴブリンとか。
いやテンプレですけどね?
それでも流石に、やられる側としてはクソ雑魚ゴブリンは無いわー、えぇ〜。
普通に考えて、ゴブリンが主人公の物語より、ゴブリンが殺されまくる小説の方が多い。ゴブスレさんなんてゴブリン殺しが生きがいなのだ。
他人の信条をとやかく言う気はないが、僕はきっと泣いてもいい。
まあ、なぜ僕がゴブリンになったと知っているか、疑問に思った人のために説明しよう!
ほら、思ってないとか言わずに。
まぁ簡単に言うとこの世界のなんとなくの知識が邪神から与えられた訳ですよ。
ともかく、それによると、どうやら僕は、ゴブリンに転生したらしい。
段々見えてくるようになった目で自分を見てみる。
うん分かってた。
周りのゴブリンらしき魔物と同じく、緑の肌に汚らしい手、数多のゲームで雑魚キャラとして描かれた小鬼である。
その知識によると、どうやら、この世界では、ラノベ界では割と頻繁にあるように、神と邪神が争っているらしい。
一世紀ほど前まではその戦争も膠着状態にあった。
しかし、秩序の勢力が勇者だのなんだのを召喚したせいで混沌側はかなり押されているようだ。
そのせいで、邪神の力の源泉であり、負の感情や、魔に属するものから放たれる瘴気が減ってしまい邪神は追い詰められた。
起死回生の一手として僕が召喚されたようだ。起死回生の一手がゴブリンとはこれいかに。
余談ではあるが、僕は、今前世の自分に関する具体的な 名前などの固有名詞の 記憶がない。
いずれゴブリンに慣れてきたら、記憶は戻るらしいが。
何にせよ、今の僕の気持ちはただ一つ。
ふざけんなーである。
大事なのでもう一度言おう。
ふざけんなーである。
なんの関係もない僕を巻き込むな!というのが、隠されざる本音だ。もっとぶっちゃけるなら、世界の半分をくれるとかならやってもよかった。が、報酬の話はなかった。僕の偏見かもしれないが最初に報酬の話をしない依頼人は出来るだけ安く済ませようとする。
転生が報酬?確かに、異世界転生物を読んで憧れた、なんて事はなくもない。
しかし、僕が憧れたのは、異世界の人間や、エルフへの転生である。
100歩譲ってドラゴンなど、ロマンのある人外は許そう。
だが、だかである。
「ギャキャ、グギャーギャキキッ、グギャー」
(クソ雑魚種族に転生したいなんて、一言も言ってねーんだよ!)
想像して欲しい。
日本人1000人をゴブリンに転生させたとする。
進化、驚く事にこの世界には、魔物の進化なんて物もあるらしい。
ダーウィンも真っ青な超理論だけどそれは置いておこう。
断言しよう。
1000人のうち、3年以内に900人は死ぬ。
残りの100人の内99人は、人間や、他の魔物に殺されるなど、諸々のゴブリンには抗い難い死に方をし、天寿を全うできるのは、1000人の内一人くらいだろう。
それでも奇跡と言えるかも知れない。
千分の一だ、0.1%だ。
無理だろ!
確かに、この辺りには強力な魔物はいないが、それでもゴブリンが生き残るのは難しい。
ゴブスレさんなんかがいたら幼児のうちに死ぬこと受け合い。
此処で君たち 誰だかわからないが の気持ちを代弁しよう。
チートは?だろう?
無論、ある。
今罵声を上げたやつ、落ち着け。もしまともなチートなら、ここまで取り乱さないと思わないか?
ずばり、僕のチートは…此処で説明するより見てもらった方がいいだろう。
「グギャーギャキ」
(ステータス)
種族:リトルゴブリン
状態:通常
Lv :1/5
HP :5/5
MP :1/1
攻撃力:1
防御力:3
魔法力:1
素早さ:10
魔素量:G
特性スキル:
〖成長率向上〗
〖邪神の加護:Lv1〗
耐性スキル:
通常スキル:
称号スキル:
〖邪神の教徒〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ハハハ、ステータスってずっと言ってみたかった。言えてないが…
それはさておき、今の事で、チートが今の段階では、いかにしょぼいか分かっただろう。
確かに、成長率向上は有用なスキルであるだろう。
しかし
「グギャーギャキキッギーーグキャッ」
(成長するほど生きられないだろ!)
では、邪神の加護はどうか。字面だけ見れば中々強力そうである。
しかし、力を失った邪神の加護なんて、その効果は推して知るべしというやつだ。
それにこれはどう見ても人間勢力から良く思われないだろう。
というか討伐対象である。
この世界でも人間の力は、無視できる大きさではないし、生き残るためには、なんらかの対策を取らなければまずい。
というか、楽に死ねる。
それに、ゴブリンとはいえ折角異世界に転生させてもらったんだ。強くなったり、色んなところ見に行ってみたりと、色々楽しい想像は尽きない。
何より、僕は多分自分が踏み台になるのは、許せないタチだ。
イケメン勇者に初期の経験値として狩られるくらいなら、強敵として恐れられる方がずっといい。
だけど…眠いっ もう無理っ、
どうやらゴブリンも子供は眠いらしい。
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