第8章 8 オスカーの救出劇

 たどりついた先は左右にズラリと並んだ石の牢屋だった。さび付いた鉄格子がはめられ。出入口には大きな錠前の鍵が掛けられている。壁に灯され松明で照らされた牢屋は・・・何とも言えず不気味なものだった。


「やはり・・ここは地下牢だったのですね・・・。」


ユリアナが辺りを見渡しながら私の後をついてきた。


「誰だ・・・?誰か・・そこにいる・・のか・・?」


突然奥の牢屋から声が聞こえてきた。間違いない、あの声は・・・!私は再び声の聞こえた方向へと走り・・・ついに牢屋に捕らえらえたオスカーを発見した。

オスカーは両足に鉄の足かせをはめられていた。足かせには長いチェーンがついており、壁に固定されている。オスカーは粗末な木のベッドうずくまるように下を向いて座っていた。


「オスカー様っ!」


鉄格子に縋りつき、私はオスカーの名を呼んだ。


「え・・?」


オスカーは顔を上げ・・私を見ると目を見開いた。


「ア・・・アイリス・・アイリスなのか?」


オスカーは信じられないと言わんばかりに目を見開いて私を見ている。


「はい、そうです。アイリスです・・・オスカー様を・・助けに参りました。」


だけど・・・どうやって助け出せばいいのだろう?扉には錠前がかかっているし、オスカー自身、壁に固定されてしまっている。


「オスカー様!私です、ユリアナですっ!」


そこへ後から追い着いてきたユリアナもオスカーに大きな声で呼びかけた。


「ユリアナ・・お前もここに来ていたのか?!は・・・・早く・・アイリスを連れて・・逃げろ・・っ!」


よく見るとオスカーは体中痣だらけで、身体の所々に血が滲んでいる。ひょっとすると・・暴力を振るわれていたのかもしれない。


「オスカー様、ここまで来て逃げる事は出来ませんっ!私達レジスタンスの目的を果たすためには・・オスカー様が必要なのです・・っ!」


「ユリアナ、でも・・鍵がかかっているのよ?どうやって開ければいいか・・!」


その瞬間、私は目を疑った。一体どこに隠し持っていたのかユリアナは金槌を取り出すと、錠前目掛けて振り下ろし始めた。


カーンッ!

カーンッ!


響き渡る金属同士がぶつかり合う音に飛び散る火花・・・でもこんなやり方では誰かに音を聞きつけられて・・!

オスカーもそのことに気付いたのか声を荒げてユリアナに訴えた。


「よせっ!やめろっ!そんなやり方で鍵は壊せない!それどころか騒ぎを聞きつけられて・・!」


その時・・大勢の足音が階段を駆け下りてくる。そ、そんなまさか・・ついに見つかってしまった・・?!


しかし・・・。


「オスカー様っ!」


駆けつけてきたのはシモン達だった。


「シモンッ!!」


オスカーがシモンの名を呼ぶ。


「お待ちください!今この者がカギを壊しますっ!」


現れたのは先ほど使用人として先に城に忍び込んでいた男性だった。彼は何事か口の中で唱え、右手を広げると青い炎の玉が出現した。そして彼はその炎を錠前に近付けると、見る見るうちに錠前が熱で溶けていく。


「よし!開いたぞっ!」


アルマンゾが真っ先に牢屋の中へ飛び込むと、持っていた剣でオスカーの足かせに取り付けられた鎖を断ち切る。


ジャラジャラジャラ・・・!


鎖はオスカーの足元でバラバラに砕け散って落ちていく。そんな彼らの様子を私は牢屋の外でじっと見つめていた。


「大丈夫ですか?オスカー様・・歩けますか?」


アルマンゾとシモンが声を掛けてオスカーの肩を支える。


「あ、ああ・・すまない・・。」


オスカーは2人に支えられながら牢屋から出てくると、私の前で足を止めた。


「アイリス・・・。」


するとアルマンゾとシモンがそっとオスカーから離れる。


「オスカー様・・。ご無事で何より・・・!」


次の瞬間・・・私はオスカーに強く抱きしめられていた―。

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