第6章 11 指名手配されたオスカー

 父の執務室へたどり着くと、扉の前には2人の騎士が立っていた。


「アイリス様・・・お1人でこちら迄いらしたのですか?」


右側に立っていた騎士が神妙な面持ちで尋ねてきた。


「え?ええ・・・そうですけど・・・?」


すると別の騎士も声を掛けてきた。


「アイリス様・・・いくら屋敷の中とは言え・・・今後はお1人であまり歩き回らないで頂けますか?」


「は、はい・・。」


一体彼らはどうしたと言うのだろう?


「あの・・・お父様に会いたいのですが・・中にいるんですよね?」


「はい、おられます。」


右側の騎士は答え、ドアをノックした。


コンコン


するとドアがカチャリと開かれ、屈強そうな騎士がドアを開け、私の姿を見ると頭を下げてきた。


「アイリス様、ご機嫌麗しゅうございます。」


「お父様にお話があるのだけど、中へ入っても良いかしら?」


「はい、どうぞお入りくださいませ。」


騎士に促され、私は部屋の中へ入るとそこには大きな書斎机の前で険しい顔で書面に目を通す父の姿があった。


「お父様・・・少し宜しいでしょうか?」


「ああ・・・アイリスか。恐らく来ると思っていた。まずはそこに座りなさい。」


父は書斎机の前にあるソファを指さした。


「はい・・・。」


父に言われた通りソファに座ると父は立ち上がり、私の向かい側のソファに座った。


「アイリス・・・。今朝、オスカー王子が尋ねてきただろう?」


「は、はい・・。」


「大怪我を負っていたそうだな?」


「ええ、そうです。私の身を案じて・・・ここまでお1人で来られたのです。」


するとそれを聞いた父は右手で額を押さえると、深いため息をついた。


「はあ・・・・。全く、厄介な・・・。」


「お父様?」


どうしたのだろう?父の様子が何だかおかしい。


「怪我の治療は済んだのか?」


「はい、今はベッドで休まれています。」


「そうか・・なら目が覚めたならすぐに出て行ってもらう。」


「お父様っ?!」


あまりの発言に私は耳を疑った。


「どういうことなのですか?オスカー様は酷い火傷に深い傷を負っているのですよ?それを・・・追い出せなどと・・・っ!」


思わず声を震わせて父を見た。


「アイリス・・良く聞け・・。オスカー王子は反逆罪の罪でウィンザード家から指名手配された。彼をかくまうものは・・・・逆賊として捕らえられる。たった今ウィンザード家から文書が届けられたのだ。」


「そ、そんな・・・・っ!」


どうしてこんな事になってしまったのだろう?前回の私が歩んできた人生とは全く違う展開になってきてしまった。だって以前私が生きていた世界では反逆を犯したのはイリヤ家だったのに・・・!


「アイリス・・・お前とオスカー王子の婚約はウィンザード家の国王から白紙に戻してほしいと連絡が届いた。もうお前はオスカー王子との婚約は取り消されたのだ。」


「え・・・・?」


私は耳を疑った。フリードリッヒ3世は・・・それでは私の事は諦めてくれたの・・?なら・・・私はオスカーから離れても・・・。

一瞬、私は自分で恐ろしい事を考えてしまった。私からは、オスカーから離れないと誓ったばかりなのに。もうこんな事を思ってしまうなんて・・・!


しかし、次の瞬間・・・父の口からは驚くべき話が告げられた。


「アイリス・・フリードリッヒ3世は・・・恐ろしい提案をしてきたのだ。オスカー王子との婚約を取り消す代わりに今度はお前を第2王子アンソニー様との婚約を申し入れてきたのだ・・・。」


父は身体を震わせながら言った―。

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