第6章 1 朝の会話
翌朝―
「アイリス様。朝でございます。」
メイドのリリーに起こされて私は目を覚ました。
「ああ・・・リリー。おはよう。起こしてくれてありがとう。自分で起きるつもりだったのに・・・。」
目を擦りながらリリーに朝の挨拶をする。
「そんな事おっしゃらないでください。私はアイリス様付きのメイドなのですから。ではすぐにお仕度なさいますか?」
「ええ、そうね。」
私は笑顔でリリーに答えた。
約30分後―
制服に着替え、リリーに髪をセットして貰った私は朝食の為にダイニングルームへと向かった。ダイニングルームへ行くと、すでに父と母が椅子に座っていた。
「おはようございます、お父様、お母様。」
頭を下げると父と母が交互に声を掛けて来る。
「ああ、おはよう。アイリス。」
「よく眠れたかしら?昨日も倒れたと聞いて驚いたわ。」
「はい、もう大丈夫です。ご心配おかけしました。」
私はテーブルに着くと言った。
「それでは皆揃った事だし、食事にしようか?」
父の言葉に私と母は頷いた―。
3人でたわいもない会話をしている時、フットマンの1人が現れた。
「お食事中、失礼致します。アイリス様にご伝言がございます。」
「え・・?私に・・?」
スープを口に運んでいた私はスプーンを置くとフットマンを見た。
「はい、実は先程レイフ様のご使者の方がいらっしゃいまして、もうアイリス様の送迎は出来なくなったとの事です。」
「まあ・・何でしょう。その話は・・・。」
母は眉をひそめた。
「ふむ・・・妙な話だな・・・。あのレイフがそんな事を言うなんて・・・。」
父も顔をしかめている。だけど私は・・・昨日レイフがタバサに忠誠を誓う姿を中庭で目撃している。その上、私はあの時レイフから逃げる為にオスカーの元へ行ってしまった。あんな事があってはいくらタバサに忠誠を誓わずとも、レイフは私を迎えに来る事はないだろう。
「教えてくれてどうも有難う。」
礼を言うと、フットマンは頭を下げて去って行った。
「それで・・アイリス。今朝はどうする?・・・オスカー王子を待つのか?」
父は神妙な面持ちで尋ねてきた。
「そうですね・・。」
(ここは女神像に守られた『リオス』だから『エルトリアの呪い』に侵されたいオスカーはあらわれないはず・・・。)
そこで私は父に言った。
「一応、オスカー様を待ちたいと思います。ですが・・・念の為に馬車を用意しておいて貰います。」
「そうね・・・。この間みたいな事があっても困るし・・・。」
母が私の言葉に頷く。
「ああ、それが良いな。・・しかし、アイリス。お前は本当にオスカー王子との婚約の件・・・どうするのだ?いくらウィンザード家と言えど、お前がこの婚約は無効にしたいと言えば、いつでも破棄する事が出来るのだぞ?」
「お父様・・・。」
確かに父の言う事は最もだ。だが・・・父も母も知らない。フリードリッヒ3世は今は悪魔に取りつかれ、その気になれば自身の姿をオスカーに変える事も出来るのだ。
そして仮にフリードリッヒ3世が死に、オスカーが王位を継げば・・次に悪魔に取りつかれるのはオスカーなのだ。その事を思うと、婚約を破棄したところで相手は人間ではない。とても逃げられるとは思えなかった。
私はギュッと手を握りしめると言った。
「お父様・・・私はもう暫くの間、婚約関係を続けたいと思います。下手に歯向かって・・王族の恨みをかいたくはありませんから・・・。」
「「アイリス・・・。」」
父と母は心配そうな表情で私を見つめる。私は心に決めた。もし・・・本日私の前に現れるオスカーが呪いに侵されていないオスカーならば・・・何とか『エルトリアの呪い』の解除と、悪魔との契約を無効にする方法を一緒に探す提案をしてみよう。
オスカー。
どうか今日私の前に現れる貴方は呪いに侵されていませんように・・。
私は女神に祈るのだった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます