第52話【指南書】「木の姿勢・静座法」

 『の姿勢』は呼吸法じゃ。

 静座法せいざほうと言って、座禅やマインドフルネスとよく似ている。


 どこが違うかというと座禅は座ってやるが、静座法は、座ってやる他にも横になってやったり、立ってやったりもするんじゃ。

 寝る時に横になってやり、そのまま寝るのが楽だな。

 夜中にオシッコで起きて、また寝る時にも静座法をすると眠れて便利なものだ。


 幕末の侍や勤王きんのうの志士達もはらを練るために座禅をよくやったそうじゃ。斬り合いをするような極限の緊張をほぐしリラックスするためにも必要だったんじゃろうな。


 仙術では静座法を座ってやり、へその下の丹田で気を練り体の中を回すという技もあるらしいが、三日月流では、そこまではやらない。ただ自分の呼吸を聞いて心を落ち着かせるとこまでじゃ。


 おなかはらともいい、戦前では「肚を作る」とか「肚で考えろ」などと言われていたが、これは、あながち間違いではなく、腸にある神経細胞は脳の神経と同じもので、腸は脳に頼らずに自分で考えて消化、吸収をしていると学者は言うんじゃ。


 病気になると温厚だった人が怒りっぽくなったりすることがあるが、腸は性格や感情も左右していると言う学者もいて、薬などで腸が弱ることで性格が変わるのかもしれない……


 悪い性格にならないためにも静座法は必要なのかもしれんな、はっはっはっはっ。


 仙術では、腹脳ふくのうと言うものを大切にするが、腹脳を開発するのも静座法が有効だと言われている。

 腹脳が開発されると第六感が働くらしいが、わしにはピンとこない。

 しかし、腹や肚というのは昔から、いろいろ言われているので、まだ分かっていないことがあるのだと思う。


「祖父、仁蔵は、このように言っていました。あずきちゃんは、よく寝ているけど静座法も使っているの?」


「ん〜〜っ、にゃん」


「えっ、普通に寝てるの……」


 それでは、静座法をやってみましょう。

 解説は三日月冬子が行ないます。



【静座法】


 まず、自分の呼吸を聞くことで心を落ち着かせます。

 呼吸は、鼻から吸って鼻か口からだします。

 口から吸うのは逆呼吸で、病気になると言われています。


 基本は座禅のように足を組んで座わり、腹式呼吸をします。

 腹式呼吸は、鼻から吸って腹に入れ、鼻か口からゆっくりと出します。呼吸は肺に入るので実際には腹に入る事はないのですが、腹を包む横隔膜を動かす事で、まるで腹に入るように感じます。横隔膜は筋肉なので使わないと衰えてしまいます。心臓や内臓と関わりのある筋肉なので呼吸法を使い鍛えましょう。

 肺の呼吸も筋肉の力で呼吸しているので筋肉を衰えさせないように呼吸法は大切です。


 足の柔らかい人は座禅でいいですが、足を組むのが難しい人は瞑想をします。瞑想の姿勢はイスに座っていても、布団の上に寝ていてもいいです。眠れない時にやって、そのまま寝るのがいいですね。


 ゆっくり吸って腹で止め、ゆっくり鼻か口から出します。口から息を出す時は熱い物を冷ますように「ふ~っ」と吐きます。


 立ったまま呼吸法をする『立禅りつぜん』というものもあります。これは、体力のある人向きです。


 息を吸った時に肛門を閉めたり、自分の呼吸を数えたり、いろいろな色をイメージするなどいろいろありますが、やりすぎると良くないと思います。ほどほどを習慣的にするのが良いと思います。


 眠れない時は、自分の吐く息を数える『数息観すうそくかん』というのもあります。

 数息観は、わたしもよく使っています。




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