第7話 わたくしに寄り付く貴族令嬢達は一人もいない

 その魔術学園の道中は、普段見慣れている筈であるにも関わらず馬車から見える景色はまるで別世界の景色であるかのように見えた。


 世界はくすみ、まるで色が抜け落ちたかの様な世界はまさに今のわたくしの事を表しているかのようである。


 そして通学の道中、まるで心に穴がぽっかり開いたような、そんな感覚が胸を締め付け、頭の中はまるで靄がかかったかのような状態であり何も考える事ができず気が付けば馬車は魔術学園へ到着していた。


「ではお嬢様、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ありがとうございます、セバス。わたくしは大丈夫ですからそんなに心配そうな顔をされてはわたくしの方が逆にセバスの事を心配してしまいそうですわ」


 馬車が魔術学園へ到着し、セバスがいつもの様に扉を開け、いつもの様に手を差し伸べてくれて支えてくれる。


 いつもと違うのは心配そうな表情のセバスと、周りの学生達がわたくしの方をあからさまに盗み見て来る事であろうか。


 その光景から昨日の今日でわたくしの婚約破棄の事は既にここの魔術学園に通う貴族達には知れ渡っているという事であろう。


 あれ程の事を多くの方々達に見られてしまったのだ。


 もはやこうなる事は必然と言えよう。


「それでは、行ってまいります」

「何かあればかまわず帰宅して頂いて構わないと旦那様と奥方様が言っておりましたので何かあれば我慢せずにお帰り下さい」

「かしこまりましたわ」


 そしてわたくしはセバスから何かあれば帰って良いと父上と母上が仰っているので気にせず帰宅して良いと言うのだが、心配しているであろう父上と母上、そして兄上やセバス等の使用人達には悪いのだが何があろうと帰るつもり等毛頭ない。


 この身体が動かない様な事が無い限りは絶対にこの魔術学園を通い続けてみせると、心配してくれている家族の為にも強く思う。


 もうこれ以上わたくしの事で家族には迷惑をかけられない為『学園を中退したあの令嬢がいる家』『嫌な事から逃げ去った令嬢がいる家』等という風に新たに陰で言われるであろう間接的な家族の悪口の種を植える訳にはいかない。


 そう思いながら一人魔術学園の校舎へと歩いて行く。


 普段であればこの段階で朝の挨拶をしに来てくれる貴族令嬢達が集まり、一つの集団を作って登校するのであるが、今のわたくしに寄り付く貴族令嬢達は一人もいない。


 恐らくわたくしと仲良くしている所をカイザル殿下にみられて火の粉が飛んでくるのを恐れているのか、もしくは初めから嫌われておりこれ幸いと離れて行ったのか、この二つのどちらかであろう。

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