第219話 名を騙っていますが何か?
貴族御用達の高級店が建ち並ぶ通りから一つ入った裏通り、こちらも少し静かではあるが、貴族に評判のお店が多いのだが、その一角でリュー達はチンピラに絡まれていた。
「わかったんなら、そこの震えているガキ。お前からとっとと金を出しな」
5
チンピラはそう言うと、リューの髪を掴もうとした。
すると、リューの髪を掴ませまいと、チンピラの腕をリーンが掴む。
「何だこのエルフ。離さないと痛い目に──」
4
チンピラ一人が、今度はリーンに掴み掛かろうとする。
ナジンは危険を察知して止めに入った。
「リーン、その手を離すんだ!いくら僕達でも、裏社会の人間と揉めるのはマズい!」
3
ナジンが、チンピラとリーンの間に割って入るのをリューが肩を掴んで止めた。
「ナジン君、ちょっと下がってて……。ここは僕とリーンで話しつけるから」
2
「話し合いじゃなく、とっとと金を出しな!」
1
チンピラは、そう言うとリューに殴りかかった。
0
次の瞬間、その場からリューが消えたと思ったら、殴りかかったチンピラの背後にいたチンピラが、鈍い音を立ててリューによって殴り飛ばされていた。
そのチンピラは、リューの観察した中で、このチンピラ達のリーダーと思われる者であった。
リーダーと思われるチンピラはリューの腹部への一撃で、脇にあるゴミ捨て場まで吹き飛んでいる。
「コーザさん!?」
チンピラ達は、リーダーと思われるコーザというチンピラが一撃でやられた事に唖然とした。
「リュー!それはマズいって!」
ランスも、手を出してはいけない相手と判断して声を掛ける。
「喧嘩において、複数人数を相手にする時は、最初にてっぺんを狙うのが常套手段だよ?」
リューは、何がマズいのかわからず、自分の判断についてみんなに講義してみせた。
「このガキ、やりやがった!コーザさんは竜星組の構成員の先輩に声を掛けられている人だぞ!終わったなガキ!」
チンピラ達は慌てふためくと、リューに対して宣告をする。
「え?……それって、竜星組関係ないよね?」
リューは、他のチンピラも殴ろうかと拳を握ったが、チンピラの発言に動きが止まった。
リーンもリューが手を出したのでやる気満々であったが、手に掛けた剣を離す。
「馬鹿野郎!竜星組から声がかかってる人だぞ!?それだけでヤバいに決まってるだろ!素直に従ってりゃいいものを。おい、近くの竜星組事務所に誰かひとっ走りしてこい!コーザさんがやられたと知ったら、誰か来てくれるはずだ!」
チンピラの一人がそう言うと、その言葉に頷いた一人が走って行く。
「ヤバいぞリュー。この場を一刻も早く離れた方が良い!」
ナジンが、シズの手を握って問題が大きくなる前に逃げる様、提案する。
「バーカ!竜星組の人が、来るまで逃がすかよ!」
チンピラは全員が剣やナイフを抜くと、通せんぼした。
「いや、ナジン君、こっちとしては、都合が良いからちょっと待っていよう」
先程まで、震えるほど怒りを感じていたリューは、冷静になるとナジンに落ち着く様に促した。
「だがしかし、シズに何かあったらどうするんだ!?」
「大丈夫よ、ナジン。シズには何も起きないわよ」
リューが落ち着いた事で、リーン自身も冷静になっていた。
ランスは、チンピラとにらみ合いを続け、何が起きても大丈夫な様に身構えている。
そうこうしてる間に、三人の強面の男を引き連れてチンピラが戻って来た。
「へへ。竜星組の構成員の方々が来たぞ。お前ら終わったぜ?」
チンピラは勝ち誇って、リューを嘲笑う。
「コーザの奴はどいつにやられたんだ?」
強面でいかにも強そうな男がそう言うと、リュー達を睨みつけた。
どうやら近くの事務所に、気を失っているチンピラ・コーザを世話している竜星組の構成員が丁度いた様だ。
構成員はコーザを殴り飛ばしたらしい子供達に視線をやると、一番目立つエルフのリーンに、目が止まり、「え?」という顔をして、そして、その横のリューに視線が移る。
「わ、若に、姐さん!?」
どうやら、竜星組組長であるリューの顔を知っているという事は、本部に出入りしている構成員のようだ。
「このチンピラさん達が、この場所で竜星組を名乗って僕達にお金を要求したので、お話をしていました。これは、そっちの事務所で普通にやっている事なのかな?」
ゴゴゴゴゴ……
リューから静かな怒りと共に、とんでもない事実を聞かされて、強面の構成員はチンピラ達を睨みつける。
「どういうことだ、てめぇら!?この方々に竜星組を騙って恐喝したのか!?事務所に連れてけ、気を失っているコーザもだ!」
強面の構成員は、連れていた二人の部下にそう告げるとチンピラ達を連れて行かせる。
「……す、すみません、若!コーザの野郎、どうしようもない奴なんで、うちの縄張り内で悪さしない様に普段から声を掛けていたんですが、どうやらそれが逆に勘違いさせたようです……。自分の失態です。──詫びて指を詰めます!」
強面の構成員は、そう言うとその場でナイフを抜いて指を詰めようとする。
「それは止めて!ただ、竜星組の名を騙った事は見過ごせないから、きっちり落とし前はつけさせておいてね。それが、君の仕事だよ」
リューは、構成員を止めると、そう言い渡す。
構成員は、「本当にご迷惑をおかけして、すみませんでした!」と、リュー達にお詫びするとチンピラを連れて事務所に戻って行くのであった。
「「「……えっと。これって、どういう事?」」」
ランスと、ナジン、シズは状況がよく分からず、事情を知っていると思われるリュー、リーン、イバルに答えを促すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます