第106話 初めての教室ですが何か?
ランス・ボジーンもなぜか王女クラスになっていた。
男爵家と言うから、自分とそう変わらない立場だと思っていたのだがそうではないらしい。
「あちゃー。王女様のクラスに入れられちまったか!って、リューもそっちのリーンちゃんも王女様クラスなのか?いや、本当に二人とも一体何者だよ?あ、成績優秀者だからかな?」
「いや、ランス、君も何者なんだよ。君も男爵家じゃないの?」
リューはランスの反応に呆れた。
「俺の家は昔、国王から直接男爵位と王都近くの直轄領を領地として貰った経緯があってさ。実は古い家なんだわ。代々昇爵も断って男爵位を守り続けてる変わり者の貴族ってだけさ」
ランスは笑ってさらっと凄い事を言った。
男爵は男爵でも格が全く違う名家らしい事をリューは知らされるのであった。
「これは、口の利き方を気を付けないと駄目だね」
リューが、そう言うとランスは、
「いいって。男爵は男爵だからさ。まあ、親父は国王付きの侍従長だけど、これも伝統だから。気を遣わずこれまで通りで頼むよ」
と、あっけらかんと答えるのであった。
「……ありがとう。じゃあ、そうするよ」
リューは笑顔で答えた。
「それより、この特別クラス二つは怖いな」
ランスが指摘した。
「……そうだね。僕達はふたつの大きな組の抗争に巻き込まれる小さい組の図だよね。良い事はなさそう……」
リューが前世の組同士の争いを思い出した様につぶやいた。
「クミ?コウソウ?」
ランスが、リューのゴクドー例えにキョトンとする。
「リュー、また、ゴクドー用語が出てるわよ」
リーンが指摘してリューは我に返った。
「あ、いや、男爵レベルは巻き込まれたくない争いが起きそうで怖いなっていう話」
「そういう事か。確かに、地方貴族にしたら巻き込まれたら少しも得が無いよな。自分の派閥と一切関係ない派閥争いには関わりたくないのが普通だな。俺は残念ながら王家一筋の家だから仕方ないんだけどさ。でも、本当になんで二人は王女様のクラスなんだろうな?」
自分もそれが聞きたい。
だが、多分、王家の推薦状が悪い意味で効果を発揮した結果だろうとの予想はついてたので何も言わず苦笑いするリューであった。
「リュー、そろそろ教室に行かないと」
周囲の生徒は各自の教室に散って人がまばらになっていた。
「本当だ!早く教室に行こう!遅れて目立つと良い事ないだろうし」
リューとリーン、ランスの三人は慌てて教室に向かうのだった。
幸い教室はまだ、秩序無くざわついていて少し遅れて入ってきたリューとランスに興味を持つ者はいなかった。
だが、リーンはその美しい容姿と、成績、父親が英雄である事などからひと際目を引く事になった。
ジロジロとリーンが見られているので、目立たない様にとリューとランスは教室の隅っこの席に移動して座る。
リーンもそれに従い席についた。
一時、こちらを見てひそひそ話が始まったが、主役の登場でそれも収まった。
エリザベス第三王女殿下が教室に入ってきたのだ。
護衛の騎士は廊下で待機し、従者の女性が一人エリザベス王女殿下の側に付いて周囲に目を配る。
すると、有力貴族の子弟達は我先にと王女殿下に挨拶をする。
ランスもそれに続いて挨拶をしたので、リューとリーンもその雰囲気に倣って挨拶をして席に付いた。
よし、これで目立たなかったはずだ。
王女殿下はみんなの挨拶を受けると一言、
「これから同級生としてよろしくお願いしますね」
と答えて中央の席についた。
ここまでは偉ぶった様子も無く、クラスのトップとしての威厳も感じられた。
これなら落ち着いて学業に専念できるかもしれない。
リューは少し安心するのだった。
場が落ち着いた所で、教室に担任の教師が入ってきた。
丸眼鏡に真ん中で髪をわけている白髪混じりの痩せ型。
年齢は四十過ぎだろうか。
教室の構造が扇型の机が高低差を付けて広がっているので、中央の王女殿下の席を確認後、その隅々も見て教壇に立った。
「これから卒業までの間、君達の担任を務める教員のビョード・スルンジャーです。これからの四年間、しっかり勉強しこの国に貢献できる人材に育って下さい」
担任の自己紹介の後は、生徒の自己紹介が行われた。
教師から見て右側前列から順番に自己紹介は始まり、順調に行くと最後は一番左端の奥の席に座っているリュー達が最後だった。
リーンが、自己紹介をすると、教室はざわついた。
王国を救った英雄達の一人の娘だ。
それに、美少女だから、教室の男子は浮きたった。
担任のスルンジャーが静かにする様に注意するが、すぐには収まらず、そんな中、次に自己紹介したリューはほぼみんなからスルーされる形の終わり方をしたのだった。
これはこれで悲しい……。
リューは、学園デビューが、あんまり芳しくない形だった事にちょっと落胆するのであった。
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