第48話 進路の行方ですが何か?
ついにランドマークの街の城壁が完成した。
新興の男爵家にしてはかなり立派な城壁だろう。
これで、魔物の襲撃に怯える必要も無くなり、守りやすくなる。
領民も城壁の完成に喜び、リューが歩いてると労を労ったり、感謝の言葉を伝えてくれた。
これには少しながら手伝ったリーンもドヤ顔で、
「うちのリューは凄いでしょ!」
と自慢するのであった。
この城壁完成の時期に合わせる様にスゴエラ侯爵領から職人達の移住者が集団でやってきた。
スゴエラ侯爵との会談でお礼を話し合った結果、人手不足のランドマーク領への職人や農業従事者の移住を大々的に募集したのだ。
その結果、第一陣の職人を中心とした約百人がやってきた。
住居はリューが街の城壁を作る際に、区画整理の一環でリューが土魔法で作った長屋なる煉瓦造り風の効率的な住居も沢山建てている。
この長屋のしっかりした作りには、移住者だけでなく、街の者もそちらに引っ越す程の人気だった。
区画整理に伴い、職人の住む通りを作ったりもしている。
これはファーザや職人達と話し合った結果だ。
今まで急に忙しくなった事から空いた土地に製造拠点を飛び飛びで建てていたので、一か所にまとめて効率化を図ったのだ。
人気商品である手押し車やスコップなどの製造もこれで、もっと効率が良くなるはずだ。
移住者達はもっと田舎を想像してた者も多かったが、ちゃんとした住居、そして当面の仕事も確保できそうなので安心してくれたようだ。
また、第二陣が来るのでそれまでに村の方の家も増やさないといけないだろう。
なのでやる事はいっぱいある。
領民もリューの仕事も当分は絶えないどころか忙しいだろう。
ランドマーク領の好景気は本格的に波に乗ろうとしていた。
年末が近づく中、コヒン豆の収穫時期が訪れた。
前年に比べて収穫量は数倍で取引商人は大喜びだった。
貴族からの催促に苦慮していたのだ。
ランドマーク家のコヒン豆を加工した『コーヒー』は、もう、貴族の間で貴重な嗜好品として広まっていた。
うちの黒い粉で貴族はシャブ(コーヒー)漬けに…、ぐへへへ。
と、また不謹慎な冗談を妄想するリューであったが、
「リュー、悪い顔してるよ。その顔は私嫌い」
という勘が鋭いリーンに指摘されて止める事にした。
「香りは良いけど、この苦い飲み物の、どこがいいんだろう?」
と、リーンは一口飲むと正直な感想を漏らした。
なので、リューはそこにマジック収納から取り出した水飴を入れて甘めにしてまた飲ませた。
「!?美味しい♪もう、リュー、最初からその甘いの入れてよね」
リーンは一気にご機嫌になった。
ふふふ、リーンもまたシャブ(甘味)漬けに…
あ、しつこいネタは嫌われる……、リューは読者を意識してもう、このネタは使わないと思うのだった。
ファーザの執務室。
執事のセバスチャン、領兵隊長スーゴに、学校から一時帰宅したタウロ、次男のジーロ、そしてリューとリーンがいた。
祖父カミーザは隠居の身だから財務の話はみんなでしてくれと参加しなかった。
「今回のコヒン豆の収穫、そして『コーヒー』への加工と販売で例年の数倍の大金が入った。手押し車やスコップの製造でも大分利益が出ている。諸経費を差し引いてもかなりプラスだ。それで、使い道だが……」
「王都に来年から通うジーロの学費もかかるよねお父さん」
タウロが大事な事だと最初に指摘した。
「……その事なんだけど、ぼくはお兄ちゃんと同じ学校に行く事にしたから」
ジーロの決断に父ファーザも驚いたが、息子の決断を快く歓迎した。
「そうか、わかった。じゃあ、リューとリーンが王都の学校に行く時まで貯めておかないとな」
「……ごめんねお父さん。陛下や宰相閣下から推薦して貰える予定だったのに」
ジーロが申し訳なさそうにしていたが、
「大丈夫だよ、ジーロお兄ちゃん。僕が王都の学校に行くからランドマーク男爵家代表として頑張るよ!」
リューはジーロの罪悪感を拭ってやった。
「それにリーンもついてくるから、学費も倍かかるしね」
もちろんジーロを笑わせる為の冗談だが、
「そうだね、3人も王都に行ってたら学費だけでランドマーク家は大変だよね。ははは!」
ジーロもそれをわかって笑ってくれた。
「おいおい、父さんは3人くらい王都学校に行かせられない甲斐性無しじゃないぞ。わははは!」
父ファーザもそれを汲んで話に入ってきてくれたのだった。
話は脱線したが今年の予算は領内の開発に投資する割合を大幅に増やす事でまとまったのだった。
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