第18話 「黒い粉」の出処ですが何か?

 豊穣祭のリンゴ飴出店の大成功から2か月が経った。


 コヒン畑の収穫が始まった。


 まだ、大部分の畑はまだ成長段階なので収穫は出来ないがそれでも一部の木からは収穫が出来るだろうと思っていたが、思ったよりは収穫量が多かった。

 早速、商人が来て出荷量を確認してきた。


「なるほど、本格的な出荷はやはり来年以降ですかね?貴族様達から急かされてまして」


「そうなるだろうな。今は我慢してくれ。こっちも売れる事を見込んで森を開拓して畑を広げている。二、三年後からは一定量を出せると思う」


 ファーザが答えた。

 リューも側にいたが黙って話を聞いている。


「今回も高値で売れると思います。味を知った貴族様の中にはお金を惜しまない人も多いですから」


「あまりに価格が上がり過ぎてないか?」


 ファーザが心配を口にした。


「需要に対して供給が間に合ってませんから、価格が上がるのは、仕方がありません。今は、沢山育てて貰って地盤作りをして頂くのが大事だと思います。あとですね──」


 今、ランドマーク家の名が近隣の貴族の間で、知られる様になってきてるらしい。

「コーヒー」という商品名の黒い粉の出どころとして、そして、手押し車という画期的な物を考え世に送り出した家としてだ。


 それは嬉しい誤算だったが、それと同時に、寄り親であるスゴエラ辺境伯へ気を使う問題だった。

 年末の挨拶で行くので、お土産を携えてご機嫌伺いした方がいいだろう。

 ファーザの悩みが増えたところで、今季の「コーヒー」の取引価格についての話に移ったのが、商人は破格の値段を提示してきた。


「今の市場価格を考えるとこのくらいかと」


 提示された額に、思わずそばに座るリューを見るファーザ。


 リューも正直びっくりした。


 前回の取引の10倍である。


「前回の評判と今回の出荷量を考えるとこのくらいかと。もちろん、出荷量が安定すれば価格は下がると思いますが」


 ファーザもリューも文句はない、即、契約であった。



 良い契約が結べた後、商人の帰りの馬車に便乗してリューは商業ギルドに足を運ぶ事にした。

 馬車に乗ってる間、商人のバスコはこの子供に探りを入れた。


「ギルドに何の用ですか?」


「特許申請です」


「!……それは、どういったもので……?」


 気になるのは仕方がない。最近のランドマーク家は勢いに乗っているのだ、お金の匂いしかしない。

 良い物ならまた、うちの商会と契約して欲しい。


「申請し終わったら話します」


 マジック収納から取り出した、布に包んだ物がそれらしい。

 二つある、どちらともなのか、一方なのかバスコは気になって仕方が無かった。




 バスコは申請し終わるまでリューをギルド前で待っていた。

 商機は今だと思ったからだ。



 申請が手間取り数時間が経っていた。


「あれ、待ってたんですか?」


 リューは驚いた、後日、家に来るのだろうと思ってたのだ。


「家までお送りしますので、お話は馬車の中で」



 バスコは馬車の中で話を聞くと、その中身は、「水飴」と「スコップ」という事だった。


 説明を受けて、水飴は豊穣祭の時に売っていたリゴー飴だとわかった。

 これが本当なら、新たな砂糖の製造方法になる。

 だが、管理が難しそうだった。

 これはこの坊ちゃんがマジック収納持ちだから管理できる品だ。

 ただ、王都に行けば、高いがマジック収納付きのバッグやリュック、ポシェットもある、それらを取り寄せてこの『水飴』の運搬用にすれば……。

 あとは生産量にもよる、大量に扱えれれば元は取れそうだが商会本部に相談が必要そうだった。


『スコップ』は、説明を受けて手押し車とセットで売れる事がわかった。

 確かにこの形は今まで無かった。

 土を掘る事に特化している優れものだ。

 手押し車の契約を結んでるうちが扱うべき商品だと直感したバスコは、リューを屋敷に送り届けるとそのまま付いて行き、またファーザに会って交渉に移るのだった。

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