第165話 相談したいことがあるんだけど……

 我らが妹からの、救援依頼のメッセージが届いたのが、先週の日曜日の夜。


 胡座をかいた彼の、その足の上にわたしが潜り込み(小さいからできるんだ!)、ふたりでテレビを見てる時だった。


「ちょっと相談したいことがあるんだけど……」


 そんなメッセージが、わたしのスマホに届いた。



 この日は、午後まで、一緒にいたのだ。その時には、相談事がある素振りはまったくなかったのだけど……?

 水曜日に、地元に帰った時でいいらしいから、それほどの急用というわけでもなく……?

 わたしにとっては疑問だらけである。


 そして、水曜日。

 高校まで来て! とのメッセージを、美琴みことちゃん(仮名)から受け取り、いそいそと母校まで向かうわたし。前回同様、守衛所から教員室まで、熱烈な歓迎を受けた。嬉しいけど、ちょっと恥ずかしい。


 美琴ちゃんが、教員室まで迎えに来てくれる(前回の騒動は勘弁して!)と言うので、教員室の応接スペースで待たせてもらう。この時間、授業のない先生が、入れ替わり立ち替わりやってきては、いろいろと話をしてくれた。

 まぁ、殆どが、のその後のことだったけど……。


 あ、彼とは、同じ大学に通い、現在、都内某所で一緒に暮らしている、渡瀬わたらせつかさくん(仮名)のこと。

 つきあい始めて1年半。同棲を始めてそろそろ8ヶ月が経過した。親友たちも、『もう、おなかいっぱい』って呆れるくらい、今でもらぶらぶ(いやん♡)なのである。


「渡瀬は、⬜︎大の授業、ついていけてんのか?」

「勉強難しくて、熱だしてないか?」

「友だち、できたか?」


 等々、どこかで聞いたことのある曲の歌詞みたいな質問ばかりだけど、それだけ、彼のことを心配してくれてるのだろう。帰ったら教えてあげよう。


 そうこうしてるうちに、美琴ちゃんお迎えが現れた。

 教員室を後にして、向かった先は、『物理室』。物理部員が、今回の要救助者のよう……。


「ひなちゃん(仮名)なら、原因がわかるかな? って思ったんだよ。ひなちゃんの部屋にあった無線機、レストアしたって言ってたじゃない?」


 う〜ん、言ったけど。

 美琴ちゃんの言葉に、わたしの後輩にあたる物理部員5人が、『無線機なんてなおせんの?』とか、『誰が?』とか、『先輩って、そんなことまでできんの?』とか、小声でどよめく。

 そんなどよめきに、美琴ちゃんが胸を張る。だから、何故?


 呼ばれた理由は、ここ数週間、物理部所有の無線機(社団登録してあったことに驚いたよ!)の調子が悪いのだそうだ。送受信共に、雑音ノイズが急激に増えて、交信がままならなくなった……らしい。

 顧問の先生は免許持ちじゃないし、免許持ちのふたり(有資格者がいたことにも驚いた!)は、作る(わたしみたいな)より交信したい派らしく、高校の無線設備に関してはわからないことだらけ……だったとか? まぁ、自分の設備以外はわからないよな?



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 美琴ちゃんを筆頭に、物理部員たちが目を輝かせて、わたしを見つめてる。そんな、妙なプレッシャーの中で、無線機の診断をするわたし……。


 でも、特に問題はないんだよなぁ……。擬似空中線(アンテナもどき)を繋いでみても問題ないし……。

 結果は、校舎屋上に建つアンテナだった。今年の夏の強風で、支障が出てるみたい。

 まぁ、なおせる……かな? ということで、日曜日に再訪することになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る