第163話 ズルいーっ!

「お姉ちゃんたちだけ、ズルいーっ!」


 わたしのうちに辿りついた我らが妹、美琴みことちゃん(仮名)が、開口一番叫んだのが、この言葉だった。

 出迎えたわたしは、その叫びの意味がわからず、首を傾げる。



 時は、土曜日の夜(日没後の時間だったから、夜!)、美琴ちゃん来訪時のできごとである。


 通ってる高校の授業が終わると、わたしの授業を受けるためにやってくるのが、土曜日の日課(授業後はお泊まり)なのだが、この日、すでに先着していたのは、わたしの親友の女子姉たち3人。

 3人が揃って、我が家のリビングから顔を覗かせたのが、そもそも、絶叫の原因だった。


 なにせ、この3人、祝日だった金曜日から、わたしの部屋にお泊まりしてるのだ。土曜日なんて、わたしのところから通学する有様ありさまである。大学生って自由すぎる。

 しかし、高校生の美琴ちゃんを、都内から通学させるわけにもいかないからという、自分の両親の考えに、不公平だと不満タラタラなのである。


 そんな美琴ちゃんを宥める役が、わたしに回ってきた。姉の言い分としては、これから一緒に勉強をするのだから、ついでになんとかお願い! くらいのモノだろうか? 姉の威厳が落ちていくぞ! でも、まぁ、仕方ないか?


 2時間の勉強を終え、美琴ちゃんを連れだした。もちろん、家にいるみんなに断って。

 特に、ハーレム状態の彼には、『浮気しちゃヤだよ!』と、あらかじめ釘を刺しておくまでがお約束である。


 美琴ちゃんを連れて向かったのは、家の前の坂道を上った先にあるファミレス。夕飯前だったけど、ふたりで、背徳のに手を出した。食べながら、暫く、美琴ちゃんの愚痴につきあった結果、どうやら溜飲は下がったようだ。

 ファミレスの階下にあるコンビニで、留守番組への背徳のブツを仕入れて帰った。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 日曜日、お姉ちゃんの通う大学で催されてた『第70回 理工展』を見に行った。

 専攻も違うっていうのに、手伝いに駆り出された姉を、瞳をキラキラさせて追いかける美琴ちゃんがいた。

 理由を話してあげてれば、苦労しなかったのにね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る