第140話 遅いから迎えにきた

 先日の近況ノートでは、ご心配をおかけしました。

 腹痛の状態を、上手うまく説明できないのに、普段どおり動けて食べれているのに……、皆さまにも心配していただいたので、大学の最後の授業を欠席して、いちおう受診してきました。



 なんのことを言っているのか? と言うと……。水曜日の朝から……、おなかが痛い。

 鈍い痛みが、時々、襲ってくる(我慢できない痛みではない、あ、なんか痛いかな? くらい)のです。

 わたしの、その、ちょっとした異変に、さおになってるのが、現在、一緒に住んでいる、彼、つかさくん(仮名)。

 わたしの顔を見ては、『横になってたほうがいいんじゃない?』とか、『なんか、食べられそうなモノある?』とか、聞いてくれるのだが、普通に動けるし、普通に食べられる。食べたら、痛い……わけでもないのだ。

 でも、心配してくれるのはありがたい……。わたしは、いつから、こんなに病弱になったんだろう?


 その、時々襲う、ちょっとした痛みは、木曜日になっても、良くはならないけど、悪くもなっていなくて……。わたし自身が原因に辿りつけない。気づけば、お腹を摩っていた。

 彼も、そのことを気づいていたようで……。


 ……で、金曜日。『病院に行こう!』と、彼。ついてくる、と言う彼を、『午後行ってくるし、終わったらメッセージ送るから』と説得して、午前中は、ふたりで大学に行った。


 わたし、これまでに、原因が特定できない(現在はなんともない)、出血性結膜炎とか、膀胱炎とかに罹っていたことがあるのだ。だからだろうか……? 意外(みんなが言う)なほどに自分の体のことには敏感になっているし、気をつけてもいるつもりだった。



 受診した結果、この日のうちに原因は特定できなかった。

 でも、医師せんせいからの予想外の言葉、初めて関わる医科の名称に、たぶん、動揺しちゃったのかも? だって、この時のわたしは、腸炎くらいしか予想してなかった。でも、こう言われると、いくつか、別の候補が上がってくる。


「少し、様子を見ようか? 痛みが続くようなら、の範疇も含めて精密検査!」


 会計も済ませて、うちに帰ろうと思ったけど、すぐには動けなかった。看護師さんが心配して、声をかけてくれたけど、その言葉すらも、右から左に抜けていく感じがした。

 看護師さんに、(たぶん)笑顔で、『だいじょうぶです』と告げて、立ちあがろうとした時。


「ひな(仮名)、遅いから迎えにきた。だいじょうぶか?」


 今、一番聞きたい声がした。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 体の具合よりも、こころの具合が悪くなってしまった、わたし……。彼にも、余計な心配はかけたくなかったんだけどなぁ……。


 その所為せいもあって、不安に苛まれたわたしは、この日、彼に、いっぱい甘やかしてもらった。

 『ご飯、作れない(そんなことはなかったけど)だろ?』と言われて、家までの途中にあるファミレスに寄った時も、彼の隣にべったり。『自分で食べられるか?(食べられるけど)』と言われた時も、彼を上目使いに見つめて、口を開けてた。『あ〜ん』って言うわたしの口に、『ほら!』と、顔をにして、『恥ずかしいな、これ』って言いながらもスプーンを運ぶ彼。


 家に着いたら、彼が、わたしのベッドまで抱きあげて、連れていってくれた。『なんかあったら、すぐ呼べよ!』と言って、部屋を出ようとする彼を捕まえて、暫く、横にいてもらった。


 あぁ、バカップル全開!

 そんなわたしにつきあってくれた彼のこと……、やっぱり、大好きなんだなぁ……。

 早く、元気になんないとなぁ……。

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