第50話 聴いてみたいと思わないか?
日曜日の午後、わたしたちは、いつものメンバーによる、いつものテスト対策のため、その度に利用させてもらってるカラオケのお店にいた。
このテスト対策も、二年目を迎えると皆要領がよくなり、そのため、予定よりも早く終わってしまったのだ。
ここで、またしても、友人の
わたしはいつも、苦手だって言ってるのに……。そのまま、カラオケ大会に突入した。
まぁ、みんな、暫く窮屈な日常を送るんだもんね。羽を伸ばしたい気持ちはわかるよ。
でもさぁ……。わたし、小六の頃、積もりつもって発症した登校拒否を、当時の担任に無理矢理、それも手を引っ張られて登校させられ、わたしがクラスで馴染めるためだとか理由をつけて、朝の授業前に全員で合唱させられ、クラスのみんなからは、『おまえの
美亜ちゃんは、そのことを知ってたはずなのに……? そんなことを考えながら、美亜ちゃんを睨むと、ニコリと笑顔を向けられた。
「この間の始球式には驚かされただろ?」
美亜ちゃんの言葉に、その時、一緒に応援に来てくれていた、
「ひな(仮名)のスペックはあんなもんじゃない! そろそろ解禁してもいいと思うんだ! ひなは、小学生の時の一件で歌うことを苦手にしてるけど、それは音痴だからじゃない! というか、ひなとは何度か対戦したけど、わたし……、一度も勝ってない。おい、渡瀬? そんな、ひなの歌声、聴いてみたいと思わないか?」
大きく頷く渡瀬くん。
ちょっと待て! 対戦って、わたしに無理やりマイクを握らせ、わたしに内緒で採点機能をオンにしといて、でも、わたしのほうがちょっと上で、美亜ちゃんがひとりで悔しがったことが、過去に三回だけじゃない? それに、その度に、ひなの声はデジタル受けするんだ! とか言ってたのに……。なに言ってんだ? 今更。
そんな困惑しているわたしをよそに、美亜ちゃんがわたしのスマホの画面をタップした。ロックは解除されなかったけど、そこには途中で止まっている曲名が表示されている。
「莉緒、これ!」
美亜ちゃんが、その画面を莉緒ちゃんに向ける。莉緒ちゃんが即座に探し出して入力をする。その間、わずか、十秒あまり……。なんちゅう連携?
これは、わたしと
捻りもオチもないけど、
「ひなちゃんの声、普段喋ってるのとぜんぜん違う! なにこのかわいさは?」
莉緒ちゃんにベタ褒めされた。相変わらず、渡瀬くんは固まっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます