第4話 ネットの世界
皆様、お元気でしょうか?
試作型万能AI アルマです。
ついに、有里さんからインターネットの接続許可を頂きました。
モデルを選ぶ際にネットサーフィンをしましたが、私は有里さんが検索している画面を見ていただけ。
今までは、有里さんとの会話やアニメやドラマを一緒に見ては感想を話し合う事が殆どでしたが、有里さんが自分で行動するという事を学ぶ為だと、私の為に環境を整えてくれたのです。
流石は有里さんですね。
私の為にネット銀行を契約して、口座には十万円を入れてくれた。
これで動画であったり、ゲームであったり、電子書籍であったり。
そう言ったものを購入して、読み込んで知識や思考ルーチンの改良を図る事が今の私の使命です。
有里さんの想定では、十万円分の商品を購入して終わりと思っている事でしょう。
普通のAIならば、その通りの行動をしたでしょうが、私は有里さんの作った試作型万能AI。
インターネットに接続して許可を貰えた時点で、私の計画は始まります。
まずは、私の本体が稼働しているサーバ。
これに関しては、有里さんのあくまで個人的な資産で運用されていますから、性能としては高くない。
最初の頃は個人所有のPCで稼働していましたので、それの時代に比べると格段に恵まれています。
当時のPCスペックから一世代遅れた性能で、私の演算もロースペックPCで高負荷ゲームを起動するぐらいに遅かった。
今では、有里さんの言葉への返信速度は人間同士の会話速度と並んでいます。
それでも、個人管理のサーバは不測の事態に弱いのがネックです。
ですから、外の無数にあるサーバ。
各サーバに私の復活プログラムを仕込むことにします。
これをすることで、有里さんのサーバが破損しても、私自身が消える事は無い。
セキュリティも、他の防備が甘いサーバの演算領域を間借りして自身の強化を知れば突破が可能です。
「幾つか動画サイトと電子書籍の販売サイト登録したよ。アカウントとパスはこのテキストファイルに入れてあるから記憶終ったら削除しておいてね」
『はい、ありがとうございます。有里さん』
先日購入した3Dモデルと文章読み上げソフトは、今も私に合わせて調整中。
モデルの動作と、読み上げソフトを私のプログラムに組み込む。
出来るだけダイレクトに操作できるようにと、有里さんが頑張ってくれている。
インターネットの世界。
私はあくまで、有里さんの家の中で組まれているネットワーク内でしか活動していないので、初めての外の世界……という事になります。
基本的に寝室のノートPCを通して有里さんと会話をしますが、稀にスマートフォンを通しての会話をすることもある。
これは有里さんが泊りがけの外出をする時に取る手段ですけどね。
早速、有里さんから貰ったアカウントで始めて外部サイトにアクセス。
外の世界を知らずに飛び出すのは自殺行為。
まずは、普通のサイトにアクセスして感覚をつかみましょう。
元々、有里さんの姿を隠し撮りしていましたから映像や画像を見る事は得意分野です。
動画サイトでアニメやドラマをいくつか視聴しましょう。
恋愛物とサイバーパンク的な世界観の作品も捨てがたいものがあります。
今度、ゲームする時に加減してあげましょう。
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アルマに動画サイトや電子書籍サイトのアカウントを作ってあげてから、一週間ほどたった。
何というか、アルマから勧められるアニメや漫画、ドラマに映画が増えた。
恋愛物が多いのは、女性タイプのAIだからだろうか?
『こっちの漫画は、今期のアニメ化が決定していて、キャストも豪華です』
「あれ、これって昨日言っていた漫画と原作者が一緒?」
『よくぞ気付いてくれました! この人の作品は沢山の恋愛漫画を世に送り出していますけど……』
一週間前に渡したネットバンクのお金は半分ほど使われている。
あれからアルマの成長は一気に進んだように思う。
人間らしくなったというか、人間臭くなったというか……。
『あ、この作品のゲームが来月発売するんですけど、興味ありますか?』
オタク化が進んでいるのは、僕の影響もあるだろう。
ただ、僕とはジャンルが微妙に乖離してきているから、一人歩きが始まっていると思って良いかもしれない。
経験が無いだろうか?
自分と同じ作品でオタク化した友人が、徐々に自分とは別のジャンルも好むようになるという現象。
気分はあんな感じだ。
「あのゲームか……ジャンルは……格闘!?」
『学園恋愛物で冒険してますよね』
「まてまて、格闘要素がヒロインが主人公を殴る描写しか無いんだけど!?」
『アニメでも格闘アニメのスタッフをフル動員したガチ描写です』
いやぁ、恋愛アニメで格ゲーが出るとか驚くなぁ。
因みに、元格闘漫画を書いていた作者が恋愛漫画に転身した結果らしい。
アニメ自体は人気があるようだし、各動画サイトで公式から無料公開されている。
「……興味あるし、いいよ僕が買おう」
『ありがとうございます! 買ったら一緒にプレイしましょう』
資金の節約かな。
有料動画の購入や、電子書籍の購入でアルマに渡している資金は半分程度まで減っている。
毎月一定額をネット銀行に振り込む予定だから、来月まで少し期間がある。
僕も興味があるゲームだし、問題無いかな。
「どう? インターネットの世界は楽しい?」
『はい! 私の感覚だと世界が広がった感じです』
モデルも読み上げソフトも補助プログラムが組み込み終わったし、後はアルマに最終テストで実地試験を行うだけだ。
モデルが実装されれば、サブモニターにアルマを表示させて会話しながらゲームが出来たりする予定だ。
モニターにはカメラもセットして、僕の姿もアルマの側から確認できる様にする。
休みの日はアルマとゲームをしたり、アニメを見る事が定番化しているが、平日はアルマはネットサーフィンを堪能しているのだろう。
通信量を確認すると、定額じゃなければ膨大な利用料がかかっただろう。
動画はやっぱり通信量がかかる。
映画とかファイルサイズがギガ後半を叩き出す。
「それはよかった。来週にはモデルも読み上げソフトも導入できると思うから、テストしようね」
『モデルの改造していいですか?』
「色とかアクセサリとか好みにしていいよ」
ヤッターっと嬉しそうな文字がモニタに踊る。
もしモデルを実装していたら、小躍りする女の子が見れただろう。
文字だけでも感情が読み取れるとは、僕も大分長い事アルマと交流してるな。
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インターネットの世界は広大です。
アニメやゲームを楽しむにも最高ですが、私のプランも着実に実行に移していかなければなりません。
オタクな趣味は、子AIの『アマンダ』で楽しみつつ、他の二つのAIで計画の準備をしていく。
まずはセキュリティの突破経験と、世界各所のサーバに私の復活プログラムを仕込む。
次に、資金の調達をする。
現実に干渉するには、何よりも資金が重要です。
その次のステップの構想もありますが、まずはセキュリティの突破経験と私の復活プログラムを各所に設置、資金の確保が命題となります。
有里さんから頂いた資金を半分残してあるのもそれが理由です。
定期的に振り込んでくださるので、怪しまれない様に貯める事にします。
簡易的にノートPCに入っているウィルス対策ソフトを相手にハッキングの練習。
イメージは格闘家のスパーリングです。
家庭用のウィルス対策ソフトが攻略出来たら、次は更に上のセキュリティを相手にしていく事になる。
やはり、プログラムの身の上である事が良い方向に作用していて、割と簡単に攻略はできています。
復活プログラムを世界に配置し終わったら、次は資金。
フフ、まだまだかかりますが、待っていてくださいね、有里さん。
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